二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ

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第二部 獣人武闘祭

第307話

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 大歓声で、グランディアスタジアムが揺れていた。観客の発する興奮の熱で、ただでさえ暑い夏の空気が、さらに何度か温度を上げているように感じる。

 私も、熱狂する他の観客に混ざって、歓声を上げた。

 今日、このスタジアムに集まった、名も知らぬ他人同士。それが、たったひとつの試合を通して感情を揺さぶられ、皆、リングに向かって、思い思いの賛辞の声を贈っている。

 得も言われぬ一体感と高揚感。
 頭の芯が、ぼおっと熱くなるようであった。

 ……不思議な試合だった。
 そして、熱い試合だった。

 格闘技っていうのは、基本的に、『相手のやりたいことをさせずに、相手の嫌がることをする』ものだ。フェイント、コンビネーション、パーリング……様々な技術は、全部そのためにある。

 だが、私が今見た試合は、『相手の嫌がることはするが、相手のやりたいこともやらせてやる』ような戦いだった。

 まるで、互いが互いの見せ場を引き出すような……
 そして、どちらが客を沸かせられるかを競っているような……

 プロレスラーのアニーがそれをするのは、わかる。プロレスラーとは、鍛え抜いた格闘技者でありながら、いかに客を楽しませるかを考えている、エンターテイナーでもあるからだ。

 チケットさえ売りさばければ、10秒で試合を終わらせてもいいと思っているような選手は、プロレスラーに向いていない。もちろん、ただ長々と試合を見せればいいというものでもないが。

 もう一度言う。

 プロレスラーのアニーが、今見たような、エンターテイメント性の強い試合をするのは、わかる。……わからないのは、フォルスの考えだ。殺し屋である彼女が、何故、アニーにつきあって、このような試合をしたのだろう?

 フォルス・リターナー――
 酒場で会った時も思ったが、凄味の中に、奇妙な魅力のある女だった。
 いつか、機会があればまた、話してみたいものだわ。

 私は、輝くような笑顔で観客の歓声に応えているアニーを見る。
 その明るいエネルギーに満ちた姿は、太陽の女神のようだ。

 ずっと、気がかりだった。
 連絡先も告げずにパーティーを抜けたアニーが、何をしているのか。

 アニー、あなたは……
 自分の新しい人生を、新しい生きがいを、『そこ』に見つけたのね……

 おめでとう。

 私は再び、観客と一体になって、大きな歓声を上げた。
 本当におめでとう、アニー。
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