10 / 41
今日は遠足ではありません
しおりを挟む
サナスの丘への下見の日は気持ちが良いほどの青空。
皆、遠足気分なのかどこかほんわかしているが若干1名渋い顔をしているものがいた。
「で、どうして俺まで」
白い髪 金色の瞳の魔法使いのガウラが不機嫌な顔をしてアリッサを見ている。
ガウラは魔法学の教師の1人で、回復魔法のスペシャリストだ。
「何かあった時、回復魔法は必須ですから」
「そんなもん、俺じゃなくてファルシオン1人でどうにでもなるだろ」
魔法使いの塔に所属していないガウラは何故か魔法使いの塔の人間に敵愾心を持っていた様で、態度は最悪だが腕は確かだ。
「師匠1人でどうにかなる、って本気で思ってます?あの師匠ですよ」
アリッサの言葉に、苛立っていたガウラも黙ってしまう。
少し前までガウラは魔法使いの塔に所属している魔法使い達は皆、金魚鉢の中の金魚だと思っていた。
苦労もせず安全な場所で魔法だけを極めればいい、と思っていると思っていた。
ところがファルシオンとアリッサと知り合った事で自分の考えが甘かった事を思い知らされた。
ファルシオンは大魔法使いとして、魔法使いの塔の魔法使い達にかなり厳しい事を要求していた。
自分の魔力を高めることは当然だが、国にも貢献しろ、と魔獣討伐だけでなく地方の土壌改良や治水工事にさえ魔法使い達を派遣していた。
しかも学力の向上まで当然だと言う。
官僚よりハードな生活の中走り回っている魔法使い達を見てガウラは呆然とした記憶を思い出した。
「甘くないですよ、師匠は。でも、魔法使いも鍛えれば騎士にも官僚にもなれる、と分かってから皆さん努力家になりました」
ニコニコ笑うアリッサにガウラは軽く頭を下げた。
「悪かった。しかしあれは、凄かった」
「あはは。ちょっと前までは皆さんの考え、温かったですからね」
アリッサ達が話をしている頃、エリンジウムとモルセラがドラゴンの絵を描くミモザに話しかけていた。
「ノースマルド公爵令嬢、何故それ程ドラゴンに固執するんだ?」
エリンジウムが話しかけてきたことに驚き、ミモザはポカンとしていたが、不意に悲しげな顔をした。
「子供の頃、ドラゴンを見たと言うのは正確では無いのです。わたくし、子供の頃両親と共に魔獣に襲われ、死を覚悟した時ドラゴンに命を救われたのです」
ミモザから衝撃的な事を聞かされ、エリンジウム達は言葉を失った。
ミモザは10歳くらいの時、領地から戻る途中魔獣達の襲撃を受けたのだ。
護衛騎士達の多くが傷付き、両親はせめてミモザだけでも助けようと彼女を抱きしめて震えていた時、その巨体とは裏腹に音も無く舞い降りたドラゴンが魔獣達をあっという間に駆逐した。
その時、ミモザは母親の腕の中から見たドラゴンの優しい目に心を動かされたが、礼を言う間もなくドラゴンは飛び去ってしまったのだ。
「誰に言っても信じてはもらえませんでした。ですが、わたくしはあの日のドラゴンを思い出すたび助けてもらったお礼を如何しても伝えたかった」
だからドラゴンの事を知るサンキライからアリッサの話を聞き、無理を承知で願った。
悲しげな顔をして項垂れていたが、顔を上げたミモザはほんのり頬を染め恥じらいながら
「エリンジウム殿下にお聞かせする様なことでは無いのに、申し訳ありません」
と、謝罪をする。
あれ程気丈な事を言っていた彼女の恥じらう姿はエリンジウムの心にすんなりと馴染む。
「いや、我儘では無く、魔獣にさえ礼を尽くそうとする貴女の姿は、好ましいですよ」
あまり話した事がないミモザとエリンジウムだが、柔らかなミモザの笑顔に癒されたのか、話が弾み訓練下見のはずなのに和やかな雰囲気になっていた。
だが、危険度が低くても魔獣達が跋扈するダンジョンが近い場所である。
和やかに話をしていたミモザが悲鳴を上げた。
皆、遠足気分なのかどこかほんわかしているが若干1名渋い顔をしているものがいた。
「で、どうして俺まで」
白い髪 金色の瞳の魔法使いのガウラが不機嫌な顔をしてアリッサを見ている。
ガウラは魔法学の教師の1人で、回復魔法のスペシャリストだ。
「何かあった時、回復魔法は必須ですから」
「そんなもん、俺じゃなくてファルシオン1人でどうにでもなるだろ」
魔法使いの塔に所属していないガウラは何故か魔法使いの塔の人間に敵愾心を持っていた様で、態度は最悪だが腕は確かだ。
「師匠1人でどうにかなる、って本気で思ってます?あの師匠ですよ」
アリッサの言葉に、苛立っていたガウラも黙ってしまう。
少し前までガウラは魔法使いの塔に所属している魔法使い達は皆、金魚鉢の中の金魚だと思っていた。
苦労もせず安全な場所で魔法だけを極めればいい、と思っていると思っていた。
ところがファルシオンとアリッサと知り合った事で自分の考えが甘かった事を思い知らされた。
ファルシオンは大魔法使いとして、魔法使いの塔の魔法使い達にかなり厳しい事を要求していた。
自分の魔力を高めることは当然だが、国にも貢献しろ、と魔獣討伐だけでなく地方の土壌改良や治水工事にさえ魔法使い達を派遣していた。
しかも学力の向上まで当然だと言う。
官僚よりハードな生活の中走り回っている魔法使い達を見てガウラは呆然とした記憶を思い出した。
「甘くないですよ、師匠は。でも、魔法使いも鍛えれば騎士にも官僚にもなれる、と分かってから皆さん努力家になりました」
ニコニコ笑うアリッサにガウラは軽く頭を下げた。
「悪かった。しかしあれは、凄かった」
「あはは。ちょっと前までは皆さんの考え、温かったですからね」
アリッサ達が話をしている頃、エリンジウムとモルセラがドラゴンの絵を描くミモザに話しかけていた。
「ノースマルド公爵令嬢、何故それ程ドラゴンに固執するんだ?」
エリンジウムが話しかけてきたことに驚き、ミモザはポカンとしていたが、不意に悲しげな顔をした。
「子供の頃、ドラゴンを見たと言うのは正確では無いのです。わたくし、子供の頃両親と共に魔獣に襲われ、死を覚悟した時ドラゴンに命を救われたのです」
ミモザから衝撃的な事を聞かされ、エリンジウム達は言葉を失った。
ミモザは10歳くらいの時、領地から戻る途中魔獣達の襲撃を受けたのだ。
護衛騎士達の多くが傷付き、両親はせめてミモザだけでも助けようと彼女を抱きしめて震えていた時、その巨体とは裏腹に音も無く舞い降りたドラゴンが魔獣達をあっという間に駆逐した。
その時、ミモザは母親の腕の中から見たドラゴンの優しい目に心を動かされたが、礼を言う間もなくドラゴンは飛び去ってしまったのだ。
「誰に言っても信じてはもらえませんでした。ですが、わたくしはあの日のドラゴンを思い出すたび助けてもらったお礼を如何しても伝えたかった」
だからドラゴンの事を知るサンキライからアリッサの話を聞き、無理を承知で願った。
悲しげな顔をして項垂れていたが、顔を上げたミモザはほんのり頬を染め恥じらいながら
「エリンジウム殿下にお聞かせする様なことでは無いのに、申し訳ありません」
と、謝罪をする。
あれ程気丈な事を言っていた彼女の恥じらう姿はエリンジウムの心にすんなりと馴染む。
「いや、我儘では無く、魔獣にさえ礼を尽くそうとする貴女の姿は、好ましいですよ」
あまり話した事がないミモザとエリンジウムだが、柔らかなミモザの笑顔に癒されたのか、話が弾み訓練下見のはずなのに和やかな雰囲気になっていた。
だが、危険度が低くても魔獣達が跋扈するダンジョンが近い場所である。
和やかに話をしていたミモザが悲鳴を上げた。
319
あなたにおすすめの小説
ガリ勉令嬢ですが、嘘告されたので誓約書にサインをお願いします!
荒瀬ヤヒロ
恋愛
成績優秀な男爵令嬢のハリィメルは、ある日、同じクラスの公爵令息とその友人達の会話を聞いてしまう。
どうやら彼らはハリィメルに嘘告をするつもりらしい。
「俺とつきあってくれ!」
嘘告されたハリィメルが口にした返事は――
「では、こちらにサインをお願いします」
果たして嘘告の顛末は?
虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。
ラディ
恋愛
一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。
家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。
劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。
一人の男が現れる。
彼女の人生は彼の登場により一変する。
この機を逃さぬよう、彼女は。
幸せになることに、決めた。
■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です!
■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました!
■感想や御要望などお気軽にどうぞ!
■エールやいいねも励みになります!
■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。
※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。
【完結】姉を追い出して当主になった悪女ですが、何か?
堀多 ボルダ
恋愛
「お姉様、このマクレディ伯爵家は私が後を継ぎます。お姉様は邪魔なので今すぐこの家から出ていってください」
両親の急逝後、伯爵家を切り盛りしていた姉を強引に追い出して妹ダリアは当主となった。しかし、それが原因で社交界からは稀代の悪女として嫌われるようになった。
そんな彼女の元を訪ねたのは、婿に来てほしい男ナンバーワンと噂される、社交界で人気の高い幼馴染だった……。
◆架空の世界にある架空の国が舞台の架空のお話です。
◆カクヨムにも掲載しています。
【完結】異世界から来た聖女ではありません!
五色ひわ
恋愛
ミシュリーヌは、第四王子オーギュストの妃としてフルーナ王国の王宮で暮らしている。しかし、夫であるオーギュストがミシュリーヌの寝室に訪れることはない。ミシュリーヌは聖女の力を持っていたため、妻に望まれただけなのだ。それでも、ミシュリーヌはオーギュストとの関係を改善したいと考えている。
どうすれば良いのかしら?
ミシュリーヌは焦っていた。七年間かけて国中の水晶を浄化したことにより、フルーナ王国は平穏を取り戻しつつある。それは同時に聖女の力がこの国に必要なくなったことを意味していた。
このまま、オーギュストの優しさに縋ってお飾りの妻を続けるしかないのだろうか。思い悩むミシュリーヌの前に現れたのは、オーギュストの恋人を名乗る女性だった。
・本編141話
・おまけの短編 ①9話②1話③5話
婚約破棄したその場から、ざまぁは始まっていました
ふわふわ
恋愛
王国随一の名門、アルファルド公爵家の令嬢シャウラは、
ある日、第一王子アセルスから一方的に婚約を破棄される。
理由はただ一つ――
「平民出身の聖女と婚約するため」。
だが、その“婚約破棄したその場”で、ざまぁはすでに始まっていた。
シャウラは泣かず、怒らず、抗議もしない。
ただ静かに席を立っただけ。
それだけで――
王国最大派閥アルファルド派は王子への支持を撤回し、
王国最大の商会は資金提供を打ち切り、
王太子候補だったアセルスは、政治と経済の両方を失っていく。
一方シャウラは、何もしていない。
復讐もしない。断罪もしない。
平穏な日常を送りながら、無自覚のまま派閥の結束を保ち続ける。
そして王国は、
“王太子を立てない”という前代未聞の選択をし、
聡明な第一王女マリーが女王として即位する――。
誰かを裁くことなく、
誰かを蹴落とすことなく、
ただ「席を立った」者だけが、最後まで穏やかでいられた。
これは、
婚約破棄から始まる――
静かで、上品で、取り返しのつかないざまぁの物語。
「私は何もしていませんわ」
それが、最強の勝利だった。
私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します
凛 伊緒
恋愛
伯爵令嬢へレア・セルティラス、15歳の彼女には1つ下の妹が出来た。その妹は義妹であり、伯爵家現当主たる父が養子にした元平民だったのだ。
自分は『ヒロイン』だと言い出し、王族や有力者などに近付く義妹。さらにはへレアが尊敬している公爵令嬢メリーア・シェルラートを『悪役令嬢』と呼ぶ始末。
このままではメリーアが義妹に陥れられると知ったへレアは、計画の全てを阻止していく──
─義妹が異なる世界からの転生者だと知った、元から『乙女ゲーム』の世界にいる人物側の物語─
姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚
mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。
王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。
数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ!
自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる