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思ってた以上に弱いヒロインと傍観者達の叫び
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だが、ポン、と言う軽い音がして、セレナが投げつけた球が、アリアにぶつかる事なく弾けて消えた。
「な、な、なんでよ。なんで消えんの」
「お粗末な力ですね。魔法攻撃用の防御壁が無くても私に触れないなんて」
一応、アリアは防御壁を作ろう、と思ったが、予想以上に威力の無い魔法球しか出せないセレナへの対応は、軽い盾を使うだけで済んだ。
「馬鹿にすんな。アンタを殺すのに魔法なんかいらねーんだよ」
般若の様な顔でアリアに襲い掛かり、彼女の細い首を絞めた。
「死ね、死ねよ」
手摺に押し付け、渾身の力で首を絞めようとしたせいか、アリアにのし掛かる体勢で、つま先立ちになっていた。
「いい加減にしなさい」
アリアの叱責に驚く暇もなく、足を蹴り上げられ、気が付けば2人とも手摺を超えていた。
「ぎゃああー」
セレナは淑女とは思えない悲鳴を上げ、アリアを突き飛ばし、空中で足掻きながら落ちた。
「きゃああ、もうやめて、やめてよ」
ユキが悲鳴を上げ、手で顔を隠した。
ついさっき、ユリシリアから呼び出され、最後のイベントを見るつもりだったユキは、ハナであったアリアがセレナに首を絞められ、屋上から落とされそうになるシーンを見て悲鳴を上げ画面を叩いた。
画像がブレ、音も聞き取れないが、屋上から落ちる2人の姿に耐えきれなくて叫んでいた。
「どうして、どうしてハナが死ぬところをまた見なきゃいけないの。私はハナを守る為に生まれたのに……」
泣き叫びうずくまるユキを、ユリシリアがしっかりと抱き締めた。
「いらない。ハナを守れない私なんて、いらない」
嗚咽混じりの声が痛々しい。
「ユキ」
「私なんていらない……」
「いらないなら、私が貰う」
突然の言葉にユキが顔を上げ、ユリシリアを見詰めた。
「同じ痛みを知る、ユキなら私に寄り添ってくれるだろ」
ぎゅっと抱き締める手が熱い。
そう。ユリシリアも愛し子であるハナの死を見た。
守れなかった悔しさ、辛さは一緒だ。
「私が貰う。ユキの痛みも悲しみも全部。いいな」
強い、力の篭る声にユキが弱々しく頷くと、ユリシリアがユキの唇を塞いだ。
貪る様な口付けに意識が白濁していくが、ユキは抵抗しないで溺れる様にユリシリアにしがみ付いた。
全部忘れてしまいたかった。
雲の様な地面に押し倒され、口付けが更に濃厚さを増しても、ユキはユリシリアを拒絶しなかった。
この白い世界で感じられるのは、ユリシリアの肌の感触と燃える様な熱が与える快感だけ。
全部、悲しみも苦しみも全部、この快感で塗り潰して欲しかった。
「な、な、なんでよ。なんで消えんの」
「お粗末な力ですね。魔法攻撃用の防御壁が無くても私に触れないなんて」
一応、アリアは防御壁を作ろう、と思ったが、予想以上に威力の無い魔法球しか出せないセレナへの対応は、軽い盾を使うだけで済んだ。
「馬鹿にすんな。アンタを殺すのに魔法なんかいらねーんだよ」
般若の様な顔でアリアに襲い掛かり、彼女の細い首を絞めた。
「死ね、死ねよ」
手摺に押し付け、渾身の力で首を絞めようとしたせいか、アリアにのし掛かる体勢で、つま先立ちになっていた。
「いい加減にしなさい」
アリアの叱責に驚く暇もなく、足を蹴り上げられ、気が付けば2人とも手摺を超えていた。
「ぎゃああー」
セレナは淑女とは思えない悲鳴を上げ、アリアを突き飛ばし、空中で足掻きながら落ちた。
「きゃああ、もうやめて、やめてよ」
ユキが悲鳴を上げ、手で顔を隠した。
ついさっき、ユリシリアから呼び出され、最後のイベントを見るつもりだったユキは、ハナであったアリアがセレナに首を絞められ、屋上から落とされそうになるシーンを見て悲鳴を上げ画面を叩いた。
画像がブレ、音も聞き取れないが、屋上から落ちる2人の姿に耐えきれなくて叫んでいた。
「どうして、どうしてハナが死ぬところをまた見なきゃいけないの。私はハナを守る為に生まれたのに……」
泣き叫びうずくまるユキを、ユリシリアがしっかりと抱き締めた。
「いらない。ハナを守れない私なんて、いらない」
嗚咽混じりの声が痛々しい。
「ユキ」
「私なんていらない……」
「いらないなら、私が貰う」
突然の言葉にユキが顔を上げ、ユリシリアを見詰めた。
「同じ痛みを知る、ユキなら私に寄り添ってくれるだろ」
ぎゅっと抱き締める手が熱い。
そう。ユリシリアも愛し子であるハナの死を見た。
守れなかった悔しさ、辛さは一緒だ。
「私が貰う。ユキの痛みも悲しみも全部。いいな」
強い、力の篭る声にユキが弱々しく頷くと、ユリシリアがユキの唇を塞いだ。
貪る様な口付けに意識が白濁していくが、ユキは抵抗しないで溺れる様にユリシリアにしがみ付いた。
全部忘れてしまいたかった。
雲の様な地面に押し倒され、口付けが更に濃厚さを増しても、ユキはユリシリアを拒絶しなかった。
この白い世界で感じられるのは、ユリシリアの肌の感触と燃える様な熱が与える快感だけ。
全部、悲しみも苦しみも全部、この快感で塗り潰して欲しかった。
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