俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ

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幼少期編

3.礼儀知らずのお客様とプリン

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玄関へ向かうとすでにお母様が来ていた。

「まぁ、イズ!すごく素敵よ」

「お母様!お母様こそすごく素敵です!世界一です!」

「まぁ、ありがとう」

そう言ってふわりと笑う姿は儚くて素敵だ。

「お父様は?」

「お客様と一緒にいらっしゃるわ。」

それと同時に外で馬車の止まる音が聞こえた。

例のお客様が着いたのだろう

それと同時に玄関のドアが開いた。

その瞬間、一瞬使用人たちが息を呑んだのがわかった。

その時の俺には何故皆んなが息を呑んだのかが分からなかったのでスルーした。

だって、それよりも懐かしいと思っていたからだ。そこにたたずむ黒髪の少年を。

いや、その少年が誰なのかは分からないけど、黒髪だぞ!?

この世界に生まれてから一度も黒髪の人を見たことがない、前世ではあんなにありふれていた色なのに今世では全く居ないので黒髪は珍しいのかと思っていたところだ。

「イズ、こちらの方はとある貴族のご子息で、メイル様という。暫く療養も兼ねてうちの領地で預かることになったのだ、歳も同じだし仲良くしてくれ。」

ふむ、成る程成る程?

特に病弱そうには見えないのだが、おそらく何らかの事情により身分を明かせず隠れ住むしかないというところだろうか。

「分かりましたお父様。メイル様も暫くの間よろしくお願いいたします。あ、申し遅れました、アリム・バードナー公爵家が息子のイズリル・バードナーと申します。どうぞ気軽にイズとお呼びください。」

そう言ってニコリと笑うとメイル様はふんと鼻で笑うだけだった。

カッチーン

何だこのクソガキ、こっちは黒髪のお前に親近感湧いてたのに!

礼儀知らずはこっちからも願い下げだ!

貼り付けた笑みは崩さずに俺は腹を立てていた。

「さ、挨拶も済んだところですしメイル様もお疲れでしょう、今日の所は用意した部屋でごゆっくりとお過ごしください。セバス!」

「はい、旦那様。メイル様、部屋までご案内いたします。」

「ああ。」

...セバスには返事するんかい!!

つくづく可愛げのないガキだな!

そう思いながらメイルが去っていくのを見ていると

「おや、イズ、珍しくご機嫌斜めだな。」

「鼻で笑われたのだから当然です!礼儀知らずにも程があります!」

「ははっ、他には何か思ったのか?」

「いえ?特には何も。ああ、でも彼の黒髪は凄く好きです!」

そう言うとお父様とお母様がびっくりした表情で俺を見てきた。

「?どうかしましたか?」

「...いや、イズはそのままで良い、そのままで居てくれ。」

「そうよ、イズ。何も気にすることはないわ」

そんな二人を不思議に思いながらも俺はじゃあいいかと楽観的に考えた。





メイルは夕飯になっても部屋から出てこなかった。

まさか本当に病弱なのか?

お見舞いにでも行った方がいいのだろうか?

俺はしょうがないので料理長に頼んで厨房を借りて作ったプリン片手にメイルの部屋を訪ねた。

コンコンッ

ドアをノックすると中から返事が返ってきた

「誰だ。」

「イズリルです。入ってもよろしいでしょうか?」

シーン

返事が返ってこなくなった。

このガキが。

ガチャッ

「失礼しまーす」

そう言って無断で入るとメイルがベッドの上でシーツを被ってこちらを睨みつけていた。

「勝手に入ってくるな、俺は返事を返していないぞ。」

「おやおや?それは失礼を、無言なのでてっきり肯定の意味かと思いましてー」

って、そんな事より!

「ご飯全然食べてないじゃないですか!勿体無い!うちの料理長のご飯は世界一なんですよ!?」

「知るか、毒が入っているかもしれないだろ。」

「はぁ?毒なんて入ってるわけ無いじゃないですか!」

「そんなの分からないだろ!」

人様の家にきておいて何だこの態度は!

頭に来た!プリンだけは何が何でも食べさせてやる!

「はいこれどうぞ」

「...何だこれは」

「プリンです、俺が作りましただからとっとと食え」

「そんな得体の知れないもの食べるわけないだろ!」

「得体の知れないものだと!?いいから食え!」

「だいたい何なんだお前さっきからその口の聞き方は!俺を誰だと思っているんだ!」

「知りませんよ!どっかの貴族の子息様でしょ!!」

「何だその馬鹿にした態度はっ!もがっ!」

フッ、勝った。

メイルが口を開いた瞬間にプリンを口に突っ込んでやったぜ。

「.....おいし、あっ!」

しまったと言わんばかりのその表情

ププー、クスクス

ニヤニヤと笑っているとメイルの表情が段々と真っ赤になっていく。

「いいからでてけ!!」

グイグイと押されて扉まで追いやられる

「はいはい、そんなに押さなくても今日はもう出ていきますよ」

「き、今日はだと!?明日も来るな!」

「だってお父様とお母様が仲良くねって言ってるんだぞ?じゃあ仲良くしないとだろ、これから一緒にしばらく暮らすんだから。」

「俺はお前となんて仲良くする気はないからな!」

「それはどーも、じゃあ俺は勝手に仲良くしようとするんで。ではおやすみなさーい」

そう言うと俺は何か言われる前に扉を閉めた。




次の日セバスの話によればプリンは全部完食していたらしい。

何だよ、可愛いところあるじゃん。
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