はじまりの朝

さくら乃

文字の大きさ
28 / 185
第六章

 3

しおりを挟む
 溜息が出そうになって慌てて止める。


(なんか、最近溜息ばかりだなぁ)


 ふと、視線を感じた。
 僕の横顔を大地が見詰めている。
「なに? 顔に何かついてる? ご飯とか?」
「えっ」
 自分の行動にはっとした。そんな表情をしている。
「あっ、やっ、なんでも……」
 また顔が朱くなった。
「さっきから顔朱いけど、熱でもあるのかなー」
 手を伸ばして大地の額に当てようと手首を掴まれた。そのまま「大丈夫、大丈夫」と手を振る。
「それよりさ」
「う、うん?」
 かなり前のめり気味になってくる。
「前から気になったんだけど、前髪長くない? もうちょっと切ったらいいのに。せっかく、可愛い……じゃなくてっ。これから暑くなるしな!」
 前髪に手が伸びてきて──。

「った!」
「わっ!」

 同時に叫んだ。
 僕がけようとしたのと、大地が前のめりになり過ぎたのとで、後ろに倒れてしまう。
 テラスはコンクリートではなく人工芝で、怪我はしないだろうが、それなりに後頭部に衝撃はあった。
 一緒に倒れ込んできた大地の重みを、ぎゅっと目を瞑って耐えた。
「ごめんっ」
 慌てて上体を起こしたのを感じて、僕も目をひらいた。
 片手は繋がれたままで、上から見下ろされている。
 ──見詰め合ってしまった。
 

(んん?
 なんだろう。
 この展開。
 少女漫画みたいな。
 でも、僕が相手じゃあねー)

 
「ごめんっ大丈夫?」
 心なしか声が上擦っている。
 顔も真っ赤だ。


(まぁ。男同士でも、これはちょっと照れるよね)


「うん。大丈夫だよ」 
 そう答えたけど。
 大地はそのまま固まっていた。
 視線が……。

「あ……」

 彼の視線は額にあった。
 今のばたばたで、前髪が乱れたらしい。
 気まずい空気が流れた。

「やだーなにやってんの~~」

 素っ頓狂な声がその空気を破ってくれた。
「メイさん」
 上から顔を除かせる。
 オレンジ色の髪を、今日はゴムで下側に結わいていた。
「げっ」と変な声を上げて、大地が僕の上から飛び退いた。それから、明と僕の間に座る。肩で僕を押すので、徐々に明から遠ざかる。

「なになに。ひょっとして、お邪魔だったかな~。キミたちそういうかんけーなの?」
 と訳のわからないことを言う。
「そんなんじゃねぇですっ」
 大地には意味がわかったらしい。
「冗談だよぉ。そんなおっかない顔しないで」
 くすくす笑いながら、さりげなく間を詰める。
「でも、いっつも一緒にいるよね。仲良しさんだー」
「そういう、金森先輩も、城河といつも一緒じゃないっすかー。今日はいないんですか?」
「あ、樹は。今ね。二年の女子にもってかれたー」
「あ、告白タイムか。城河もてもてだな」


(もてもて……)


 どきんと胸が跳ね上がった。
 
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

ショコラとレモネード

鈴川真白
BL
幼なじみの拗らせラブ クールな幼なじみ × 不器用な鈍感男子

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

嫌いなあいつが気になって

水ノ瀬 あおい
BL
今しかない青春だから思いっきり楽しみたいだろ!? なのに、あいつはいつも勉強ばかりして教室でもどこでも常に教科書を開いている。 目に入るだけでムカつくあいつ。 そんなあいつが勉強ばかりをする理由は……。 同じクラスの優等生にイラつきを止められない貞操観念緩々に見えるチャラ男×真面目で人とも群れずいつも一人で勉強ばかりする優等生。 正反対な二人の初めての恋愛。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

キミがいる

hosimure
BL
ボクは学校でイジメを受けていた。 何が原因でイジメられていたかなんて分からない。 けれどずっと続いているイジメ。 だけどボクには親友の彼がいた。 明るく、優しい彼がいたからこそ、ボクは学校へ行けた。 彼のことを心から信じていたけれど…。

あなたのいちばんすきなひと

名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。 ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。 有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。 俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。 実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。 そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。 また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。 自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は―― 隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

逃げるが勝ち

うりぼう
BL
美形強面×眼鏡地味 ひょんなことがきっかけで知り合った二人。 全力で追いかける強面春日と全力で逃げる地味眼鏡秋吉の攻防。

処理中です...