はじまりの朝

さくら乃

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第六章

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 そうなのだ。
 樹はモテる。
 この『告白タイム』の話を聞くのも何度目かだし、女子と歩いているのに遭遇したこともある。
 樹の『仲間』のようなタイプの女子は勿論、大人しい感じの女子も密かに憧れている、そんな噂も耳に入ってくる。
 小学校時代もけっこうモテていた。
 今の樹がモテない筈はない。

 あの頃と違うのは──何故だか、そのことに凄くもやもやしてしまう自分だった。


「城河今彼女いないのかなー。中学の時は取っ替え引っ替えだったじゃないすか」


(取っ替え引っ替え?!)


 大地の言葉にびくっとする。
 聞きたくないような、でも、すごく気になってしまう。

「あれ? キミ同じ中学?」
「そうですよ。残念ながら」
「どういう意味かな~。そういや、最初から『先輩』とか言ってたもんね」

 和やかに話しているようで、何処かぴりっとした空気を感じる。特に大地のほうに。
 
「あ、ななちゃんも気になる? 樹のこと」
 急にこっちに話が飛ぶ。樹の話が気になっていたことがばれてたらしい。でも僕は慌てて首を横に振った。
「ななちゃんて、やっぱ、樹と知り合いなの?」
「え……あ……」
 大地もじっとこっちを見ている。
「……家が近所で……小学校が一緒だっただけ」


(なんで言えないんだろう……。
 すごく、すごく。
 仲良かったんだって……)
 

「そう?」
 明はたいして気にしてもいないみたいだが、大地のほうは何処か納得しきれていない顔をしている。僕は彼の視線を避けた。
「や~あれはさー」
 明の調子外れな声が微妙な空気を散らす。
「そういうんでもないんだよ~。告白されたからつき合う。でも、いつも好きにはならないから大事にしない、そんで、結局告白して来たほうからフラれてんの。勿体ないよね~」


 (そう……なんだ……)


 なんとなく、ほっとしていまう。
 それも何故なのかわからない。


「へぇー、良く知ってますね。そういえば、学年違うのに何故かツルんでましたよね、金森先輩」
 大地も元の調子に戻った。
「やだなー、メイとかカナって呼んでいいんだよ? それに同級生なんだし、敬語とかなしでいーよ」
 僕もだけど、元々同じ中学の先輩後輩だった大地は、口調はつんつんしているものの、とりあえず敬語を使っていた。
「誰が呼ぶかっ」
 それが崩れる。
「キミさ、『だいくん』だっけ? ボクにやけに突っかかってくるよね? なんかあんの?」
「べつに! それから! あんたに『だいくん』なんて呼ばれたくないからっ」
「つめたっ。ボク傷ついちゃうよ~」
 そう言いながら、全く傷ついてもいないようで、はははと笑う。

 なんとなく落ち込んだ気分で人工芝を見詰めていた。
 その視界に指の長い綺麗な手が。
 顔を上げると、大地の隣にいた明の顔が目の前にあった。 

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