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第二十三章
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しおりを挟む車に乗せられてからの所要時間はそれ程長くもなく、車の窓から海が見えたところから学校近くの海岸線を走ったのだと思われた。
使われなくなって何年も経っているという風情の建物。
両腕を掴まれて歩かされている時に見た感じは、二階建てだった。
ここに入って来てから両手両足を縛られ、冷たい床の上に転がされた。
いろいろ拘束グッズがあるところを見ると、普段からそういったことが行われているのかも知れない。
人はきっと、恐怖が過ぎると案外冷静になる生き物ではないかと思う。
今正に僕はその状態だ。
(お腹空いたなぁ~)
カーテンのない磨りガラスから見えるのは夜の色。
雨戸もないところから、会社か何かの建物なのかも知れない。
本当だったらBITTER SWEETで昼食を食べながら、中間テストのお疲れ様会。時々明も交ざって来たりして。
今頃は家に帰って母が夕飯を作っているのを自室で待っている頃だろうか。腕時計もスマホも見れず正確な時間がわからないが、もしかしたらもう食べてるかも。
(今日の夕飯なんだろう……)
少し離れたところで、床に座り込んで飲食している男たちを眺めながら思う。
ここに来て新たな人間が加わっては、また出ていくを繰り返している。
(お母さん心配してるだろうな……大くんやメイさんはどうしてるだろう。約束していたのに現れない僕をどう思ってるだろうか……それから……いっくんは……)
『あとで樹を呼んでやる』と言っていたが、樹はいっこうに現れない。たぶん樹が見つからないのだろう。
もし見つかってれば、例え今僕との関係が結ばれてなくても、飛んで来るに違いない。
樹はそういう人間だ。
「樹のヤツ何処にいやがるだ!」
「他にラインとか繋がったヤツいねぇのか」
それを裏づけるように何度か似たような会話がなされている。
(なんていうか……連絡先もわからず、見つける方法もないとか。雑過ぎやしませんか~?)
「樹連れて来れなかったらどうするよ? アイツ」
そこにいた全員の凶悪な視線が注がれる。
「そーだなー。どうするかー」
「いつまで置いといても意味ないしなぁー」
「アイツ、ボコって明日の朝学校か、あの店の前に捨てておくってのはどうです?」
コンビニではいなかったが、途中で加わった同高の三年だ。
「そりゃあ、いいや」
この中では立場が上らしい男が言うと、一斉にげらげらと笑いだす。
(全然、面白くないしっ! なんだったら明日の朝とか言わず、今ボコって早く解放してほしいっ。なるべく穏便にお願いしますよ~)
彼らにそう念を送ってみた。
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