はじまりの朝

さくら乃

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第二十ニ章

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 僕は大地と別れ、ゆっくりと歩いた。
 敷地内の木々は少しずつ色づいている。この葉が散り、また蕾をつけ花開く前には、もう僕らは卒業するんだ。


(その前にまた、いっくんと……。
 叶うだろうか)


 門を出て、BITTER SWEETへと向かう。
 コンビニの前にさし掛かると、なんとなく駐車場が騷ついているのを感じる。前に絡まれたこと、それが切っ掛けで今の状態になったことが思い出される。
 そちらのほうは見ずに通り過ぎようとした。

「いつきの奴──」


(え、いっくん)


 単に同じ名前の違う人のことかも知れない。
 しかし、反応して見てしまった。
 見てから後悔した。
 数台の大型バイク。この間の時と似た雰囲気の男たちが、やっぱり駐車場で座り込んでいた。


(うわぁ。
 ここのコンビニの店員さん、可哀想だなぁ)


 なんて、人の心配などしている場合ではなかった。
 その中の一人と目が合ってしまった。
 さっと目を反らし、足早に去ろうとしたが、時既に遅し。
 目の合った男が他の男たちに何か耳打ちをしているのが、目の端に映った。
 そして、皆立ち上がってこちらに向かってくる姿が。


(ええ~。
 まさか、でしょ。 
 僕、何もしてませんよ~)


「待てよ」
 肩を掴まれ引き留められ、あっという間に囲まれた。
 見たことない顔の筈。それともにいた人もいるのだろうか。
「あの……なんでひょうか……」
 怯えて戦慄いた唇から変な言葉が飛び出す。
「なんでひょうか、だって」
 彼らはいっせいにげらげら笑いだす。
「僕……急いでるんで……」
 そう言って、通してくれる筈もない。
「あ、やっぱりそうか──あの店で樹と一緒にいた奴だ」


(やっぱり、いっくんのことだったのか)


「ふぅん、だいぶ樹とはタイプが違うな」
「なぁ、お前。樹の友だち?」


(そうです!)


 胸を張って言いたいけど今はそういう場合ではないし、そうだと言ってたら樹に迷惑が掛かりそうだ。
「知りません」
「嘘だな」
 即座にそう言われた。
「お前さ、俺らと遊ぼうぜ」
「遊びません──知らない人についてっちゃダメだって、お母さんが」


(僕、何言ってるだろー)


 コミュ障の僕が怖い人たちに受け答えしてる! すごい! というわけではなく、怖すぎて頭が回らず、逆に変な言葉が飛び出してしまってるだけだ。
「お母さんって、あはは、子どもかー」
 またげらげら嗤う。
「いいから、こっち来いよ」
 両腕を掴まれ、背中を押され、駐車場内に連れて行かれる。


(誰か助けてっ!!)


 肝心な言葉は出てこない。
 周りに目をやっても、見て見ぬ振りをして通り過ぎる通行人ばかり。
 それは、そうだろう。
 僕もきっとそうする。
 
 僕は駐車場内に停めてあった車に押し込められた。


(今日は車もあったかー)


「あとで樹も呼んでやるから」
 車にはドライバー、僕の両側に一人ずつ。残りはバイクに股がった。


(いいっっ。呼ばなくていいからっっ)


 僕は半泣き状態になった。
 
 
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