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アトリエ・フィオナと始祖の祝福 ~幻の食材と、笑顔を巡る冒険~
第41話 砂漠の古代都市と、星屑の謎解きパン
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灼熱火山で手に入れた「太陽草」は、まるで生きているかのように、フィオナの持つ特別な保存袋の中で、かすかな光と温もりを放ち続けていた。しかし、その力も永遠ではない。マルセルの分析によれば、月の満ち欠けが二周りする前に、他の二つの食材と合わせなければ、ただの枯れ草になってしまうという。一行の旅は、時間との戦いでもあった。
火山地帯を抜け、彼らが足を踏み入れたのは、地平線の果てまで砂丘が続く、広大な砂漠地帯だった。昼は灼けつくような太陽が照りつけ、夜は手が届きそうなほどの満天の星が空を埋め尽くす。
「うわああ…!きれい…!」
エリィは、夜空に広がる星の川を見上げて、感嘆の声を上げる。
フィオナは、そんな星空の下で、焚き火の残り火を使って素朴な平焼きパンを焼いた。水も小麦粉も貴重な砂漠では、無駄のない調理が求められる。それでも、仲間たちと分け合って食べるパンは、どんな豪華な料理よりも美味しく感じられた。
「…こういう所で食うパンも、悪くねえもんだな」
ルーカスは、ぶっきらぼうに言いながらも、その表情は穏やかだった。
旅の途中、砂漠の真ん中にぽつんと存在するオアシスの町で、一行はつかの間の休息を取った。そこで、町の長老から、彼らが目指す古代都市についての不吉な噂を耳にする。
「あの『砂の神殿』に足を踏み入れ、生きて帰ってきた者は、ここ数百年、一人もおらん。宝を守る砂の精霊に、魂を食われてしまうのじゃ…」
しかし、同時に、こんな古い言い伝えも教えてくれた。
「…だが、いにしえの賢者は、星の運行を読み解き、精霊の怒りに触れることなく神殿の最深部に至ったという。『太陽の子と月の雫、手を取りて、大地の涙は初めてその姿を現さん』…そんな詩が、この地に伝わっておる」
数日後、ついに一行の目の前に、その「砂の神殿」――砂漠に沈んだ古代都市の遺跡――が姿を現した。風化し、砂に埋もれながらも、かつての栄華を偲ばせる巨大な石柱や神殿。その荘厳で、しかしどこか物悲しい風景に、フィオナたちは息をのんだ。
神殿の内部は、まるで巨大な蟻の巣のように複雑な迷宮となっていた。そして、最初の扉には、やはり古代文字で、オアシスの長老が口にしたのと同じ詩が刻まれている。
「太陽の子と月の雫…これは、間違いなく私たちが手に入れた『太陽草』と『朝露酵母』のことですわね」
フィオナが言うと、マルセルが頷いた。
「ええ。そして『大地の涙』こそが、我々が求める最後の食材、『光る岩塩』の別名でしょう。問題は、『手を取りて』という部分をどう解釈するか…ですな」
扉には、太陽と月の意匠が彫られた二つのレバーがある。ルーカスが力任せにそれを動かそうとするが、びくともしない。
「くそっ、硬えな!もういい、この扉ごとぶち壊す!」
「ルーカス様、お待ちください!」
マルセルが、珍しく慌てたような声で制する。
「この遺跡の構造力学的に、その扉に過度な衝撃を与えた場合、天井が崩落し、我々全員が生き埋めになる確率が98.7%です!」
「きゅ、きゅうじゅうはち…!?」
ルーカスは、そっと扉から手を離した。
フィオナは、じっと扉の仕掛けを見つめていた。そして、何かに気づいたように呟く。
「…パン作りと同じかもしれないわ。酵母(月)の力だけでは、パンは膨らまない。オーブンの熱(太陽)だけでも、ただ焦げてしまうだけ。二つの力が、絶妙なバランスで合わさって、初めて美味しいパンが焼ける…」
「フィオナ様、それって…!」
エリィが目を輝かせる。
フィオナとルーカスが、それぞれのレバーの前に立つ。そして、フィオナの合図で、ゆっくりと、同じ力加減で、二つのレバーを同時に押し込んだ。ゴゴゴゴ…と、地響きのような音を立てて、数百年閉ざされていた石の扉が、ついにその口を開いた。
その後も、遺跡の奥へ進むにつれて、数々の謎や仕掛けが一行の行く手を阻んだ。
壁画に描かれた星の並びの謎は、エリィが「あっ!これ、私が子供の頃に遊んだ『お星様つなぎ』の絵にそっくりです!」と、その純粋な視点で解き明かし、重い石盤を動かす仕掛けは、ルーカスがその怪力でこじ開け、古代の天文学の知識が必要なパズルは、マルセルが「…ふむ、我が家の書庫にあった古文書によれば、この時代の黄道十二宮の配置は…」と、その博識で難なくクリアしていく。
フィオナは、そんな仲間たちの姿を、誇らしい気持ちで見つめていた。
(私一人では、決してここまで来られなかった…)
しかし、彼らの背後からは、時折、不気味な破壊音が響いてくる。美食家同盟「グラットンズ」もまた、フィオナたちとは別のルートで、力ずくで壁を破壊しながら、着実に奥へと迫っていたのだ。
そして、ついに一行は、遺跡の最深部へと続く、巨大な円形の扉の前にたどり着いた。
扉の中央には、太陽と月、そして無数の星々が描かれた、これまでで最も複雑な円盤錠が埋め込まれている。これが、最後の謎だ。
「…どうやら、この星々を、正しい位置に合わせる必要があるようですな」
マルセルが星図を広げる。
フィオナは、老人から託されたレシピ帳を再び開いた。その最後のページに、これまで気づかなかった、小さな染みのような模様があることに気づく。
「…まさか、これって…!」
フィオナは、その染みの模様を、扉の星図に重ね合わせた。
扉の向こうには、幻の「大地の涙」が、そして、おそらくは最大の敵が待ち構えている。
フィオナは、ゴクリと唾を飲み込み、仲間たちと視線を交わすと、最後の謎解きに挑むべく、ゆっくりと円盤錠に手をかけた。
火山地帯を抜け、彼らが足を踏み入れたのは、地平線の果てまで砂丘が続く、広大な砂漠地帯だった。昼は灼けつくような太陽が照りつけ、夜は手が届きそうなほどの満天の星が空を埋め尽くす。
「うわああ…!きれい…!」
エリィは、夜空に広がる星の川を見上げて、感嘆の声を上げる。
フィオナは、そんな星空の下で、焚き火の残り火を使って素朴な平焼きパンを焼いた。水も小麦粉も貴重な砂漠では、無駄のない調理が求められる。それでも、仲間たちと分け合って食べるパンは、どんな豪華な料理よりも美味しく感じられた。
「…こういう所で食うパンも、悪くねえもんだな」
ルーカスは、ぶっきらぼうに言いながらも、その表情は穏やかだった。
旅の途中、砂漠の真ん中にぽつんと存在するオアシスの町で、一行はつかの間の休息を取った。そこで、町の長老から、彼らが目指す古代都市についての不吉な噂を耳にする。
「あの『砂の神殿』に足を踏み入れ、生きて帰ってきた者は、ここ数百年、一人もおらん。宝を守る砂の精霊に、魂を食われてしまうのじゃ…」
しかし、同時に、こんな古い言い伝えも教えてくれた。
「…だが、いにしえの賢者は、星の運行を読み解き、精霊の怒りに触れることなく神殿の最深部に至ったという。『太陽の子と月の雫、手を取りて、大地の涙は初めてその姿を現さん』…そんな詩が、この地に伝わっておる」
数日後、ついに一行の目の前に、その「砂の神殿」――砂漠に沈んだ古代都市の遺跡――が姿を現した。風化し、砂に埋もれながらも、かつての栄華を偲ばせる巨大な石柱や神殿。その荘厳で、しかしどこか物悲しい風景に、フィオナたちは息をのんだ。
神殿の内部は、まるで巨大な蟻の巣のように複雑な迷宮となっていた。そして、最初の扉には、やはり古代文字で、オアシスの長老が口にしたのと同じ詩が刻まれている。
「太陽の子と月の雫…これは、間違いなく私たちが手に入れた『太陽草』と『朝露酵母』のことですわね」
フィオナが言うと、マルセルが頷いた。
「ええ。そして『大地の涙』こそが、我々が求める最後の食材、『光る岩塩』の別名でしょう。問題は、『手を取りて』という部分をどう解釈するか…ですな」
扉には、太陽と月の意匠が彫られた二つのレバーがある。ルーカスが力任せにそれを動かそうとするが、びくともしない。
「くそっ、硬えな!もういい、この扉ごとぶち壊す!」
「ルーカス様、お待ちください!」
マルセルが、珍しく慌てたような声で制する。
「この遺跡の構造力学的に、その扉に過度な衝撃を与えた場合、天井が崩落し、我々全員が生き埋めになる確率が98.7%です!」
「きゅ、きゅうじゅうはち…!?」
ルーカスは、そっと扉から手を離した。
フィオナは、じっと扉の仕掛けを見つめていた。そして、何かに気づいたように呟く。
「…パン作りと同じかもしれないわ。酵母(月)の力だけでは、パンは膨らまない。オーブンの熱(太陽)だけでも、ただ焦げてしまうだけ。二つの力が、絶妙なバランスで合わさって、初めて美味しいパンが焼ける…」
「フィオナ様、それって…!」
エリィが目を輝かせる。
フィオナとルーカスが、それぞれのレバーの前に立つ。そして、フィオナの合図で、ゆっくりと、同じ力加減で、二つのレバーを同時に押し込んだ。ゴゴゴゴ…と、地響きのような音を立てて、数百年閉ざされていた石の扉が、ついにその口を開いた。
その後も、遺跡の奥へ進むにつれて、数々の謎や仕掛けが一行の行く手を阻んだ。
壁画に描かれた星の並びの謎は、エリィが「あっ!これ、私が子供の頃に遊んだ『お星様つなぎ』の絵にそっくりです!」と、その純粋な視点で解き明かし、重い石盤を動かす仕掛けは、ルーカスがその怪力でこじ開け、古代の天文学の知識が必要なパズルは、マルセルが「…ふむ、我が家の書庫にあった古文書によれば、この時代の黄道十二宮の配置は…」と、その博識で難なくクリアしていく。
フィオナは、そんな仲間たちの姿を、誇らしい気持ちで見つめていた。
(私一人では、決してここまで来られなかった…)
しかし、彼らの背後からは、時折、不気味な破壊音が響いてくる。美食家同盟「グラットンズ」もまた、フィオナたちとは別のルートで、力ずくで壁を破壊しながら、着実に奥へと迫っていたのだ。
そして、ついに一行は、遺跡の最深部へと続く、巨大な円形の扉の前にたどり着いた。
扉の中央には、太陽と月、そして無数の星々が描かれた、これまでで最も複雑な円盤錠が埋め込まれている。これが、最後の謎だ。
「…どうやら、この星々を、正しい位置に合わせる必要があるようですな」
マルセルが星図を広げる。
フィオナは、老人から託されたレシピ帳を再び開いた。その最後のページに、これまで気づかなかった、小さな染みのような模様があることに気づく。
「…まさか、これって…!」
フィオナは、その染みの模様を、扉の星図に重ね合わせた。
扉の向こうには、幻の「大地の涙」が、そして、おそらくは最大の敵が待ち構えている。
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