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アトリエ・フィオナと始祖の祝福 ~幻の食材と、笑顔を巡る冒険~
第42話 星空のレシピと、美食家の最後の晩餐
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古代都市の最深部に続く、巨大な円盤錠の扉。そこに描かれた太陽と月、そして無数の星々の紋様を前に、フィオナは息をのんだ。マルセルの星図と照らし合わせても、その法則性はあまりに複雑で、解読の糸口さえ見つからない。
「くそっ、何なんだ、このごちゃごちゃした絵は!もう、こうなったらヤケクソで回してみるか!?」
ルーカスが、痺れを切らして円盤錠に手をかけようとした、その時だった。
「待って、ルーカス!」
フィオナの声が、静かな回廊に響いた。彼女は、老人から託された古いレシピ帳を開き、最後のページにあった、これまで気づかなかった小さな染みのような模様を指さしていた。
「この染み…ただの染みじゃないわ。これは…パン生地が発酵していく時の、酵母の広がり方とそっくりなのよ…!」
フィオナの瞳が、確信の光に輝く。
「これは、星図なんかじゃない。この扉そのものが、一つの巨大なパンのレシピなのよ!」
フィオナは、円盤錠の星々をパンの材料に見立て、彼女がこれまで培ってきた全ての知識と経験、そしてパンへの愛情を込めて、その謎解きに挑んだ。
「まず、月の紋様(朝露酵母)と、流れる水の紋様(地下水脈)を合わせる。これが、パン作りの最初の工程、酵母おこし…」
彼女が二つの紋様を正しい位置に合わせると、円盤錠がカチリ、と小さな音を立てた。
「次に、小麦の紋様(大地)を加え、力強く捏ね上げるように、この大きな星の軌道を回していく…!ルーカス、手伝って!」
「お、おう!任せとけ!」
フィオナの指示通りに、ルーカスがその怪力で巨大な円盤を回す。ゴゴゴ…と、重々しい音が響き渡る。
「そして、最後に…味を調えるための小さな星々(塩)を、正しい位置へ…ここだわ!」
フィオナが、最後の星のパーツを、レシピ帳の染みが示す一点にはめ込んだ瞬間。円盤錠全体がまばゆい光を放ち、数百年もの間閉ざされていた石の扉が、地響きと共にゆっくりと開いていった。
扉の先に広がっていたのは、言葉を失うほど幻想的な光景だった。
それは、巨大な地下洞窟。天井や壁一面が、淡い青白い光を放つ無数の岩塩の結晶で覆われ、まるで地底の星空のようだ。洞窟の中央には、ひときわ大きく、清らかな光を放つ巨大な岩塩の結晶が鎮座している。あれこそが、最後の幻の食材、「光る岩塩 “大地の涙”」に違いない。
「すっごーい!キラキラですー!」
エリィが、子供のようにはしゃいで駆け出そうとする。
だが、その時。洞窟の闇の奥から、冷たく、そして嘲るような声が響いた。
「そこまでだ、路地裏のパン屋の娘。その至高の食材は、我々『グラットンズ』がいただくにふさわしい」
ゆらり、と姿を現したのは、美食家同盟のリーダー、オーギュスト公爵だった。その背後には、屈強な護衛たちがずらりと並んでいる。
「お前のような平民が作る、分け合うためのパンなど、食への冒涜でしかない。食とは力!選ばれた者だけが味わうべき至高の芸術なのだ!」
オーギュストの歪んだ美食哲学に、フィオナは毅然として言い返した。
「いいえ、違いますわ!食は、パンは、誰かと分け合うことで、もっと美味しく、もっと温かくなるものです!それが、人を、世界を幸せにする力になるんです!」
「…くだらんな」
オーギュストが合図すると、護衛たちが一斉に襲い掛かってきた。
「悪の親玉のくだらない演説は、もう聞き飽きたぜ!」
ルーカスが剣を抜き、護衛たちの前に立ちはだかる。激しい剣戟の音が洞窟に響き渡る。
「マルセル様、あちら!」
「心得ております、エリィ殿!」
マルセルは、オーギュストの他の部下たちが回り込もうとするのを予測し、足元に小さな袋を投げつける。中から飛び出したのは、ヴォルカンの街で手に入れていた滑りやすい鉱物の粉末。敵は次々と足を滑らせ、エリィが持ち前の素早さで彼らの武器を取り上げていく。見事な連携プレーだ。
フィオナは、「大地の涙」の前でオーギュストと対峙する。
「小娘が…!その至高の食材を、力ずくで奪ってくれる!」
オーギュストが、「大地の涙」に手をかけた、その瞬間だった。
ゴゴゴゴゴゴッ!
洞窟全体が激しく揺れ、天井から岩が崩れ始める。オーギュストの邪悪な欲望に、古代の遺跡が怒ったかのようだった。
「な、何だこれは!?」
オーギュストが狼狽する中、フィオナは、危険を顧みず、崩れ落ちてくる岩塩の結晶にそっと手を触れた。そして、優しく語りかける。
「お願い、力を貸してちょうだい…。たくさんの人を、救うために…!」
すると、まるでフィオナの心に応えるかのように、「大地の涙」はひときわ強い光を放ち、その巨大な結晶の中から、必要な分だけの、最も清らかで美しい部分が、そっとフィオナの手の中に収まった。
「お嬢様、こちらへ!」
マルセルの的確なナビゲートで、一行は崩落する遺跡から間一髪で脱出する。オーギュストたちは、自らの欲望が招いた崩落の中、「ボクの…ボクの至高の食材がぁぁっ!」という無様な悲鳴を残して、闇の奥へと消えていった。
砂漠の地表へと戻ったフィオナたちの頭上には、美しい夜明けの太陽が昇り始めていた。
「朝露酵母」「太陽草」、そして「大地の涙」。三つの幻の食材が、今、フィオナの手の中にある。
「さあ、帰りましょう。みんなが待つ、私たちの王都へ!」
フィオナは、仲間たちと顔を見合わせ、力強く頷いた。
最後の希望を胸に、彼らは愛する故郷への帰路を急ぐ。その手の中にある小さな光が、王国中に温かい奇跡をもたらすことを信じて。
「くそっ、何なんだ、このごちゃごちゃした絵は!もう、こうなったらヤケクソで回してみるか!?」
ルーカスが、痺れを切らして円盤錠に手をかけようとした、その時だった。
「待って、ルーカス!」
フィオナの声が、静かな回廊に響いた。彼女は、老人から託された古いレシピ帳を開き、最後のページにあった、これまで気づかなかった小さな染みのような模様を指さしていた。
「この染み…ただの染みじゃないわ。これは…パン生地が発酵していく時の、酵母の広がり方とそっくりなのよ…!」
フィオナの瞳が、確信の光に輝く。
「これは、星図なんかじゃない。この扉そのものが、一つの巨大なパンのレシピなのよ!」
フィオナは、円盤錠の星々をパンの材料に見立て、彼女がこれまで培ってきた全ての知識と経験、そしてパンへの愛情を込めて、その謎解きに挑んだ。
「まず、月の紋様(朝露酵母)と、流れる水の紋様(地下水脈)を合わせる。これが、パン作りの最初の工程、酵母おこし…」
彼女が二つの紋様を正しい位置に合わせると、円盤錠がカチリ、と小さな音を立てた。
「次に、小麦の紋様(大地)を加え、力強く捏ね上げるように、この大きな星の軌道を回していく…!ルーカス、手伝って!」
「お、おう!任せとけ!」
フィオナの指示通りに、ルーカスがその怪力で巨大な円盤を回す。ゴゴゴ…と、重々しい音が響き渡る。
「そして、最後に…味を調えるための小さな星々(塩)を、正しい位置へ…ここだわ!」
フィオナが、最後の星のパーツを、レシピ帳の染みが示す一点にはめ込んだ瞬間。円盤錠全体がまばゆい光を放ち、数百年もの間閉ざされていた石の扉が、地響きと共にゆっくりと開いていった。
扉の先に広がっていたのは、言葉を失うほど幻想的な光景だった。
それは、巨大な地下洞窟。天井や壁一面が、淡い青白い光を放つ無数の岩塩の結晶で覆われ、まるで地底の星空のようだ。洞窟の中央には、ひときわ大きく、清らかな光を放つ巨大な岩塩の結晶が鎮座している。あれこそが、最後の幻の食材、「光る岩塩 “大地の涙”」に違いない。
「すっごーい!キラキラですー!」
エリィが、子供のようにはしゃいで駆け出そうとする。
だが、その時。洞窟の闇の奥から、冷たく、そして嘲るような声が響いた。
「そこまでだ、路地裏のパン屋の娘。その至高の食材は、我々『グラットンズ』がいただくにふさわしい」
ゆらり、と姿を現したのは、美食家同盟のリーダー、オーギュスト公爵だった。その背後には、屈強な護衛たちがずらりと並んでいる。
「お前のような平民が作る、分け合うためのパンなど、食への冒涜でしかない。食とは力!選ばれた者だけが味わうべき至高の芸術なのだ!」
オーギュストの歪んだ美食哲学に、フィオナは毅然として言い返した。
「いいえ、違いますわ!食は、パンは、誰かと分け合うことで、もっと美味しく、もっと温かくなるものです!それが、人を、世界を幸せにする力になるんです!」
「…くだらんな」
オーギュストが合図すると、護衛たちが一斉に襲い掛かってきた。
「悪の親玉のくだらない演説は、もう聞き飽きたぜ!」
ルーカスが剣を抜き、護衛たちの前に立ちはだかる。激しい剣戟の音が洞窟に響き渡る。
「マルセル様、あちら!」
「心得ております、エリィ殿!」
マルセルは、オーギュストの他の部下たちが回り込もうとするのを予測し、足元に小さな袋を投げつける。中から飛び出したのは、ヴォルカンの街で手に入れていた滑りやすい鉱物の粉末。敵は次々と足を滑らせ、エリィが持ち前の素早さで彼らの武器を取り上げていく。見事な連携プレーだ。
フィオナは、「大地の涙」の前でオーギュストと対峙する。
「小娘が…!その至高の食材を、力ずくで奪ってくれる!」
オーギュストが、「大地の涙」に手をかけた、その瞬間だった。
ゴゴゴゴゴゴッ!
洞窟全体が激しく揺れ、天井から岩が崩れ始める。オーギュストの邪悪な欲望に、古代の遺跡が怒ったかのようだった。
「な、何だこれは!?」
オーギュストが狼狽する中、フィオナは、危険を顧みず、崩れ落ちてくる岩塩の結晶にそっと手を触れた。そして、優しく語りかける。
「お願い、力を貸してちょうだい…。たくさんの人を、救うために…!」
すると、まるでフィオナの心に応えるかのように、「大地の涙」はひときわ強い光を放ち、その巨大な結晶の中から、必要な分だけの、最も清らかで美しい部分が、そっとフィオナの手の中に収まった。
「お嬢様、こちらへ!」
マルセルの的確なナビゲートで、一行は崩落する遺跡から間一髪で脱出する。オーギュストたちは、自らの欲望が招いた崩落の中、「ボクの…ボクの至高の食材がぁぁっ!」という無様な悲鳴を残して、闇の奥へと消えていった。
砂漠の地表へと戻ったフィオナたちの頭上には、美しい夜明けの太陽が昇り始めていた。
「朝露酵母」「太陽草」、そして「大地の涙」。三つの幻の食材が、今、フィオナの手の中にある。
「さあ、帰りましょう。みんなが待つ、私たちの王都へ!」
フィオナは、仲間たちと顔を見合わせ、力強く頷いた。
最後の希望を胸に、彼らは愛する故郷への帰路を急ぐ。その手の中にある小さな光が、王国中に温かい奇跡をもたらすことを信じて。
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