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第二話
しおりを挟むこうして兄である王子と共にやって来たフィロメナに対して、リゼットスティアの国王であるオリヴェルは少し話しただけでかなりうんざりとした気持ちを抱いていた。熱のこもった視線で自分を見つめ、隙あらば二人きりで会うことを望んでいるのだとほのめかす。
オリヴェルは自分の見た目を正しく理解し、国の女性たちが憧れの視線を自分に向けていることを自覚していたが、自惚れることもなければ女性たちへの一定の距離感を忘れることもなかった。
しかしその一方で、オリヴェルの引いた一線を無視して越えようとしてくる女性たちがいることも知っていた。特に身分が高い女性や自分の容姿に自信がある女性ほど執拗にオリヴェルに迫ってくる。今、目の前にいるフィロメナのように。
「あちらの棚にあるのはベカジーグの詩集ではありませんか?」
オリヴェルと兄の王子の話が途切れると、またすかさずフィロメナが話題を振ってきた。兄の王子は妹のふるまいに対してだいぶ表情が強ばり出している。一方、オリヴェルはうんざりとした気持ちをおくびにも出さずにっこりと笑った。
「ええ」
「ベカジーグがお好きなのですか? わたくしもよく読むのです」
「そうですか。以前はあまり詩集など手に取らなかったのですが妻の愛読書なので読むようになったのです」
一緒に読書会を、とでもつづけたかったのだろう。フィロメナが言葉をつづけようと口を開いた瞬間にオリヴェルはすかさずそう言った。フィロメナの口はそのままぽかんと開かれ、信じられないものでも見るようにオリヴェルをまじまじと見つめた。
「仲睦まじい様子でうらやましい限りです」
妹を助けるように兄の王子が言った。
「殿下ももうすぐ子が生まれると聞きましたが」
「不仲とは言いませんが幼い頃から婚約をしていたのですっかり家族なのです。私と妃にはその関係があっているとは思うのですが」
「へ、陛下と王妃様は仲がよろしいのですか?」
我に返ったフィロメナが口を挟んだ。失礼な物言いだが、青ざめた王子に同情してオリヴェルはあえて気づかないフリをした。
フィロメナと彼女の兄である王子の両親は典型的な仮面夫婦だ。昔からお互いに愛人を持っても知らないフリをしているという。国王夫妻であるため公の場では当たり障りのない関係に見せかけているが交流のなかったリゼットスティアの王であるオリヴェルでさえそのことを知っているのだからフィロメナが知らないわけがなかった。
彼女にとって国王夫妻とは両親だ。リゼットスティアの美しい国王が独身ではないことを彼も知っていたがこの国のとある有力な貴族の令嬢で、かなり強引に婚姻に至ったのだと聞いたことがあった。そのためフィロメナはリゼットスティアの王と王妃は自身の両親のような関係なのだろうと信じていた。
「他国ではいろいろと噂をされているようですが」
オリヴェルはにっこりと笑ったまま言った。
「私と妻の関係を心配してくださるなら、その必要はありませんよ。私は妻に夢中ですし、妻ほど美しく、素晴らしい女性はいないと思っています。妻も私を愛してくれています。もちろん、出会いからそうだったわけではありませんが――
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