【完結】幼馴染に告白されたけれど、実は俺の方がずっと前から好きだったんです 〜初恋のあわい~

上杉

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4章 はじめての夏 side.理久

3 お泊り

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 約束の日、俺は西脇家に向かった。
 手には母に持たされたいろいろな手土産の入った袋を握り、胸はもうどきどきだった。
 ふう、とひと呼吸してインターホンを押そうとした――そのとき。

「あ、りっくんだ!えーどうしたの久しぶり!」

 扉が開いて中から出てきたのは、新汰の妹の茜ちゃんだった。その後ろに母、瑤子さんの姿が見える。

「あ、理久くんいらっしゃい。理久くんね、新汰の留守番に付き合ってくれるのよ」

「えー何それ、ならあたしも残ったのに!」

「あなたはおばあちゃんち行きたいってうるさかったじゃない」

「だってー……映えスポット近いし、由美子たちにお土産買ってくるって言っちゃったんだもん」

 そんなふたりのやり取りを聞いていると、新汰とは正反対に思えた。ただ、これだけパワフルで賑やかだからこそ、逆にバランスが取れてるのかもしれない。

「りっくんまたね!」

「茜ちゃん、また今度。……瑤子さん、すみません。お世話になります」

「ふふふ。こちらこそ新汰をよろしくお願いします」

 ふたりはそう言うとちょうど今から外出するらしい。旦那さんの運転する車に乗り込み手を振って出ていった。
 俺がお辞儀をして見送っていたところだった。がちゃりと玄関の扉が開いて、驚く新汰が見えた。

「……なんだ。賑やかだと思ったら来てたのか」

「ちょうど、みんなが出ていくところにばったり会ったんだ」

「そうか」

 新汰は納得した顔をすると、早くと手招きした。俺は言われるがまま玄関の中に入る。

「……お邪魔します」

 西脇家に入るのは何だか久しぶりだった。
 高校に入学し新汰の部活が忙しくなったこともあって、昔みたいに入り浸ることがなくなったからだろうか。
 リビングは茜ちゃんと瑤子さんの趣味なのだろう。
 大きな窓から差し込む光はレースのカーテンでぼんやりと照らされ、窓辺に吊るされたガラスのガーランドがきらきらと輝く。
 昔と変わらないのは布張りのソファと、部屋の中央に置かれた白木のダイニングセットだ。そんな柔らかなインテリアは、どこか新汰の雰囲気にも合っているから面白い。

「……そうだ。これ母さんからいろいろ持たされたんだよね。世話になるからって」
 
 持っていた紙袋を渡すと、新汰は中を覗いて何かに気づいたように嬉しそうな顔をした。

「俺…………理久んちの玉子焼き、めっちゃ好き」

「……え!そんなの入ってんの?……まじかー、確かに母さん張り切ってたけど」

 どうやら今日の昼食にと、母がいろいろ準備してくれたらしい。紙袋の中のタッパーには、玉子焼きのほかに焼き目のついたウインナーやおにぎりなど、清宮家定番のお弁当の中身が並んでいる。

「理久のお母さん……昔よく世話になってたときのこと覚えててくれてたんだな」

 そういえばと俺は思い出す。確かに新汰の言う通り、小さい頃は新汰がうちに預けられることも多かった。
 今は元気な妹の茜ちゃんだが、小さい頃身体が弱く瑤子さんたちが付きっきりだったこともあった。
 そういうとき、新汰はよく俺の家に来てご飯を食べていた。きっと、平日俺が新汰の家に入り浸っていたのを、俺の母は申し訳なく思ったのだろう。

「そういえば、新汰はみんなと行かなくてよかったのか?」

 思わず聞くと、新汰は苦い顔をした。

「おばあちゃんの家は好きだけど、絶対親戚たちと顔を合わせるだろ」

「あー……確かにな」

「結構疲れるし……それに大会明けだから今回は家にいることにしたんだ」

 大会明け――その言葉に俺はすぐに思い出す。

「…………あっ!」

「?」

「母さんから聞いたんだけど、新汰今回の大会ベスト四まで行ったんだろ?おめでとう!」
 
 すると新汰は嬉しそうに微笑んで。

「……ああ、ありがとう。今回はみんな気合入ってたし、うちの高校の団体戦の新記録になったから、一応目標は達成したことになる」

「そっか。なら……俺の昼寝のおかげもある?」

 思わず言ってしまい、俺はすぐに後悔した。
 なぜなら新汰の反応があまりにも想像通りだったから。

「…………多分」

 顔を赤くしてそう小さな声で言う姿に、俺の頭の中はすべて吹っ飛んでしまう。
 やばい。可愛い。ああ、間が持たない。
 これから一日中一緒なのに。
 そんな俺の空気を察したのだろうか。
 しばらく沈黙が流れたあとで、新汰がおそるおそる口を開いた。

「……り、理久はもう宿題終わったのか?」

「あ、ああ。俺、夏休みはいつも暇してるから、意外と進んでるんだよな。新汰は?」

「まだ全然」

「そっか。なら……今日は課題進めるか!」

 それならなんとか一日を無事に終えることができるかもしれない。しかし新汰は渋い顔をしはじめた。

「いや、それは申し訳ないだろ。その代わり、映画選んで欲しいんだけど」

 映画と言われ俺は驚く。しかし新汰の言う映画が、感想文課題であることに気付いた。
 夏休みの課題と言えば読書感想文が定番だが、今年から映画や観劇の感想文でもいいことになったのだ。

「……ああ、感想文課題のこと?俺でいいなら別にいいけど」

 ――まさか一緒に映画を観ようってことじゃないだろうな?

 思わず固まる俺を前に新汰は準備すると言って、テレビのリモコンを取り電源を入れ始めた。
 動画配信サービスアプリが大画面に映り、あらわれた新作一覧をスクロールしながら新汰は言う。

「理久はどのタイトルがいいと思う?」

 そう聞かれたら誰だって答えてしまう。とくに部活も習い事もない暇人の俺は、映画やドラマをかなり観ているほうだから選ぶのは容易い。

「あ……これ面白いよ」

 そう指差した映画を新汰は躊躇なく選んだ。

「じゃあこれで」

「え、まじで俺の推薦でいいの?」

「ああ。理久の選んだ奴なら問題ないだろ」

 新汰はそう言って映画をスタートさせながら、キッチンで飲み物の準備をし始めた。
 今回の映画は、ちょっと変わった家族のホームコメディを装った社会派映画だ。 
 新汰はアクションやバイオレンスよりも日常系などのどちらかというと淡々と進むストーリーを好む。なので確かに新汰好みのものではあった。
 始まってから、新汰は怖い顔をして画面を見つめ内容に入り込んでいたように見えた。結局、新汰はそのまま映画が終わるまで一言も口を開かなかったので、俺はひと安心した。
 新汰はエンドロールが始まったあとでようやく俺に声をかけた。

「……理久は、あの最後の主人公の行動が、何を意味しているかわかったか?」

「主人公はすべてを理解していて、それでも隠すことを選んだってことだろ?」

「……さすが理久」

 驚いた声で言われてしまったので、俺は種明かしをする。

「いや全然。初めてみたときは意味分からなくて、評論記事探して読んだんだ」

「……まじか」

「だって、伏線細かすぎなんだよ……俺がそこまで集中して見てるわけないじゃん」

「さすが理久」

 その言葉はさっきとまるで違いどこか笑いを含んでいたので、つられて俺も笑う。

「新汰、褒めてないだろ。……俺だってこう見えて、繊細なところもあるんだからな」

「ははっ、どちらかというと大胆不敵だろ」

「なんだと、このっ」

「はははっ」

 気付けば俺の手は新汰に触れていて、バランスが崩れた結果、新汰をソファに押し倒すことになってしまった。

「ごめん……やりすぎた」

 咄嗟にそう謝るも、すでに俺の下にいる新汰の顔は真っ赤で無意識に煽られてしまう。
 落ち着け、俺、落ち着け。

 ――そうだ。新汰に謝らないといけないとだった。

 思い出した俺は新汰の身体を起こしてから、すぐに頭を下げる。

「あとさ、ごめん」

「……え、何のこと?」

 何だかよくわからないという顔の新汰に向かって俺は謝る。

「前、新汰がうちに来たとき、俺追い返すようなことしただろ?あんなに疲れてたのに。それに、女子たちに新汰が目をつけられたことは、完全に俺のせいだと思うから。あのとき助けてくれて、本当にありがとう」

 もやもやと胸の内でわだかまっていたものを、吐き出すように言葉にすることができた。
 言い終えてふうと安心していたときだった。
 何故か新汰は俺の腕を掴んだので、それに驚いて顔を上げると新汰の真剣な瞳がこちらに向けられていた。

「理久」

「えっ」

「デートの件……なくなったことになってないよな」

「…………ああ、当たり前だろ。俺そのために体育祭頑張ったんだから。ただ、新汰部活でずっと忙しそうだったから、何するかとか具体的に考えてなかったけど」

 そうもにょもにょと語尾を濁しながら言ったときだった。

「なら……今日俺と一緒に祭り行かないか?」

「え、祭りって隣町の?」

 新汰はこくりと頷いた。
 突然のことで驚きながらも俺は頭を整理する。
 隣り町で行われる祭りは、ここらへん一の規模の花火が上がると言われ、県外からも人の集まる有名なものだ。
 実は俺はこれまで行ったことはなく、その理由を考えると、新汰が人のたくさん集まる場所が嫌いだったからではなかったか。
 だから俺は思わず言ってしまう。

「でも、いいのか?新汰、人混み苦手だろ?」

「まあ、好きではない。でも……理久と一緒なら大丈夫だと思う」

「……本当に?」

 新汰は小さく頷いた。
 まるで決意するような真剣な表情は本気であることを示していた。
 俺は途端に嬉しくなって、思わず叫んでしまう。

「……よし!じゃあすぐ準備しよう。やった。新汰との花火デートだ」

 その言葉に、新汰は恥ずかしそうな顔をした。けれど俺と同じでどこか嬉しそうに見えた気がした。
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