【完結】幼馴染に告白されたけれど、実は俺の方がずっと前から好きだったんです 〜初恋のあわい~

上杉

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5章 文化祭は波乱万丈 side.新汰

2 コンテストのジンクス

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 文化祭のイケメンコンテストに出ることになってしまった俺は、渋々理久にその事実を伝えた。
 すると想像どおりの反応が返ってきた。

「新汰……またなんでそんなことになってんの……」

 呆れる理久に俺は必死になって言う、

「言い訳になるけと、正直俺も訳がわからない。ただ、女装コンに出るくらいならこっちの方がいいと思って。理久、本当にごめん。俺――」

「……なんでそんなに謝るの」

「だって――」

 すると理久はため息をついたあとで微笑みを浮かべた。
 その顔は呆れているように見えたものの、視線はなぜか優しい。
 だから俺は気付いてしまった。今、理久が呆れているのは俺ではない。きっと理久自身なのだ。

「……俺さ、新汰のこと縛りたいわけじゃないんだよね。本当、それだけは理解してほしいんだ」

 そしてふうっと息をひとつ吐いて理久は続ける。

「うんと小さい頃さ、俺、新汰を傷つけただろ。夏休みに道場通うって聞いたときのこと」

 途端、俺の中でふっとあの夏の光景が蘇る。
 理久から見放されたと感じ絶望した、ひとりぼっちの小学生の夏休み。
 なぜそれを今、理久は話題にあげるのだろう。
 そんな俺の心の声がどうやら伝わったらしい。理久は突然頭を下げて言った。

「まじで今さらだけど、あのときのこと本当にごめん。今だから言うけど……あれは新汰が俺のこと嫌いになったって、勝手に拗ねてただけなんだ」

 嫌いになる?俺が理久を?

「……理久のこと嫌いになるわけないだろ」

 気付いたときには俺はそう言葉にしていた。
 理久はそれを聞いたあとで恥ずかしそうに笑う。

「……分かってる。本当にあの頃の俺の心の狭さは酷かったっていうか……でも正直、あんまり成長してないかもしれなくて」

「……理久」

「俺さ、新汰が何かをはじめることが嫌なわけじゃないんだよね。ただ、新汰が俺のいないところではじめて見せる顔をすると思うと嫌なんだ。……まじで心の狭いやつでごめん」

 そう微笑む理久は、これまで見たどんな理久よりも弱々しく見えた。
 ただ俺にとっては特別に思えた。
 まさか、理久からあのときのことを言ってくれるなんて。ずっと胸の奥につっかえていた小さなわだかまりがするりと取れたような気がして、熱いものが胸にこみ上げる。
 咄嗟に、俺の中で花火の夜のことが思い浮かぶ。

 ――拒むように震えてしまったことについて、今すぐ説明しないと。
 
 理久は今、あんなにも昔のことを謝ってくれたのだから。俺もすぐに謝らなければならないだろう。
 全然嫌じゃなかった。むしろ理久がそうしてくれるのを待っていた。俺は理久が好きだって、今言うんだ――。

「理久、俺――」

 そう言いかけたところだったのに、理久は突然厳しい目付きで俺を見た。

「……でも、今回のはまじでやっかいだぞ」

 その思いもよらぬ圧の強さに、思わず聞いてしまう。

「え……それはどういう」

 すると理久は今度は俺に対してため息をこぼした。

「新汰、お前去年のコンテスト見てないだろ。去年、なんとミスコンに選ばれた女子がミスターコンに選ばれた男子に告白して、それでみんなの前で公開キスしたんだよ」

「そんなことが……本当にあるのか?」

「あったから問題なんだ」

 少しも信じられない俺は、理久を問い詰めてしまう。

「で……その人たちは?」

「付き合った」

「で、今は?」

「三年の教室にいて、ラブラブ」

「まじか……なんなんだよそれ」

 そう吐き捨てた俺にとどめを刺すように理久は続ける。

「だから、ある種のジンクスみたいになってるらしいんだ。あそこで告白してみんなの前でキスしたら、幸せになれるって」

「……あり得ないだろ」

 どう考えてもおかしいだろう。
 コンテストに出たとか優勝したとかはきっと少しも関係ないのだ。それ以前から周りの知らないところできっとふたりの距離は縮まっていたはずなのに。なぜ周りはそれに気付かないふりをして、表面のきらきらしたものだけを捉えて目指してしまうのだろう。

「だからもしかするとお前……はめられてるかもしれないぞ」

 理久の放った言葉に背筋がぞっとする。

「は、俺?なんで俺が?」

「ミスコンに出る自信満々の女子なんて、せいぜい三、四人くらいだろ。その中に実はお前のこと狙ってる女子がいて、寄ってたかってくっつけようとしてるのかもしれない。周囲の目のあるコンテストのステージの上なら、絶対断れないって思ってさ」

「まじか……そんな人いないと思うけど、もしいたとしたら恐ろしいな」

 相手がどう思っているかなんて考えない。そんなひとりよがりな人が、みんなの前でステージの上で告白してきたら一体どうしたらいいのだろう。
 俺がそう青い顔をし始めたときだった。
 理久は何かに気づいたように明るい声を上げた。

「……いいこと考えた。新汰、俺に任せとけ」

 その少年のような眩しい笑顔に、俺は林の言葉を思い出す。

 ――まさか……理久もイケメンコンテストに出場してくれるのか?

 理久が出てくれれば、俺の存在は理久の眩しさに霞んですっかり忘れ去られるだろう。
 変なことを考えている奴がいたとしても、みんなきっと理久に夢中でジンクスなんて何処かへ行ってしまうに違いない。

「理久、ありがとう」

「……当たり前だろ。ぽっと出の女に取られてたまるか」

 その最後の小さな呟きは、俺の耳には届かなかった。

 
 結局、理久がどんな作戦を練っているかわからない状況で、文化祭の準備は目まぐるしく進んでいった。
 俺たちの三組は縁日をやることになり、衣装やサービス、大道具などの準備を役割分担をして進めていった。
 聞いたところによると、理久の所属する隣りの二組は謎解き迷路をやるらしい。部屋二部屋を使い、少し探検的な要素も含まれているそうで、準備の大変さから気付けばあまり理久と話す時間が取れなくなっていた。

 当日のコンテスト参加者が発表されたのは、そんなときだった。
 理久の言っていたジンクスがあまり信じられなかった俺は、真っ先に内容を確認しに行った。
 女子の名前一覧には、剣道部の同期の名前があるだけでほかに知っている名前は見当たらなかった。
 そうして同時にイケメンコンテストのリストを見たときだった。

 ――え、理久の名前……ない。

 参加者五名の中に俺の名前はある。けれど清宮理久の名前はなかった。
 一体どういうことだろう。
 理久は当日、一体何をしようとしているのだろう。
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