星になりたい

雑虫

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絵描きの少年

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小さな町全体がよく見渡せる小山の上にポツンと佇む洋館がありました。

その洋館には描いた絵が本物になる少年がいると言う噂が町ではちらほら広がっていました。

お母さんと2人で住んでるらしいその少年はとても大事に育てられてきました。

毎日美味しいものを食べさせてくれたし、洋館の中は好き放題使っていいし、少年にたっぷりの愛情を注いでくれました。

しかし1人で下の町に遊びに行くことは絶対に許して貰えませんでした。

なんでも描いたものを本物にできる少年は、遊び道具には満足していましたが、お友達が居ないことに寂しさを感じていました。

少年は人間の外側は描けても、内側の心までは描くことが出来ませんでした。

そんな少年に同情したのか、お母さんはたまに町に買い物に行く時の帰りに、お友達を連れてきてくれました。

ある日は少年と同じ年頃の男の子。彼は少年の特技にとても感動して自分の欲しかったおもちゃを描いて欲しいとお願いしました。

少年は相手の望みどうりのおもちゃを描くと、男の子は喜んでくれました。

少年は初めてのお友達に、自分の好きな絵で喜んでもらえることが何より嬉しく、自分の特技が好きになりました。

ある日は少年より少し幼い女の子。少し暗くずっと俯いてる彼女は前日に愛犬を亡くしてしまったらしい。

悲しげに話す女の子に同情した少年は、彼女の愛犬の特徴を聞き、彼女の愛犬を瓜二つに描きました。

愛犬が生き返ったと彼女は驚いて遊んでいましたが、しばらくすると彼女は泣き出して愛犬を置いて帰ってしまいました。

完璧に愛犬そっくりに描いた少年は女の子がなぜ泣いて帰ってしまったのか分かりませんでした。せっかく自分が描いた犬なので、彼女の代わりに自分が飼うことにしました。

ある日は髭を生やした大人の男の人。服装が今まで見た人の中で1番みすぼらしく、目に光がありませんでした。

男の人はポケットから真ん中に人の顔が描かれた紙を少年に見せて、これを沢山描いて欲しいと頭を地面に着けて、一生懸命お願いしました。

少年はお願いどうり何枚か紙を描きましたが、あまりにも描いてて面白くないので途中で飽きてしまいました。

男の人は泣きながら少年に抱きつくようにお願いしました。少年は酷く困り果ててお母さんに助けを求めると、お母さんが下の町まで返してくれました。

ある日はスーツ姿の大人の人が数人。スーツの人は、少年の特技をとても褒めてくれました。

スーツの人は少年の知らない事をなんでも知っていて教えてくれました。少年は物知りでかっこよくてよく遊んでくれるスーツの人をとても好きになりました。

しばらく話すと、スーツの人が知ってる中で、1番かっこいいものをぜひ少年に描いて欲しいとスーツの人は言いました。

スーツの人は少年に飛行機のような乗り物の写真や映像を見してくれました。

映像の中で、飛行機のようなカッコイイ乗り物は自由に空を飛びまわり、大きな岩をも砕くミサイルを発射しました。

少年はとてもその乗り物を気に入って喜んで何機か描くと、スーツの人はとても喜んで褒めてくれました。

スーツの人はお母さんと少し話すと、少年の描いた乗り物に乗って、町とは反対方向に飛んでいきました。

このようなお友達があと数人やってきて、少年は日々がとても充実していました。

またある日、スーツの人が見せてくれた乗り物の中に乗っていた人とよく似た服装の大人が大人数でやって来ました。

スーツの人のお友達だと思った少年は喜んで、すぐさま近づきました。

少年に気づいた1人の大人は何か大声で叫ぶと、いっせいに少年をかこんで、頭を思い切りぶちました。

少年は地面に倒れて、ほかの大人達が洋館の中に入っていくのを見ながら意識を失いました。

次に少年が目覚めたのは暗い灰色の部屋でした。布団と汚いトイレ。それ以外何も無い部屋でした。

しかしそんな状況よりも少年が絶望したことがあります。少年は違和感の先に目線を伸ばすと、自分の両腕が無くなっていることに気づきました。

少年は現在の状態や、環境を理解できないまま泣き叫びました。声が枯れ果て何も喋れなくなるまで形にならない感情をぶつけると数人の男の人が開かない扉の前に立つのが分かりました。

彼らは少年に近づかないまま状況を説明しましたが、少年は混乱していて到底すべてを理解できませんでした。

彼らの発する単語の中でお母さんの名前は認識することが出来ました。どうやら少年とは違う遠いところに追いやられたみたいです。

状況を説明しきったらしい彼らは少年を置き去りにしてどこかへ消えました。

少年の頭の中には今まで感じたことの無い感情に支配されました。

その感情が導き出した答えに従うように、少年は行動を始めました。

少年は頭と足を近づけると、自分の足の爪を噛みちぎりました。もう既に痛みなど怖くありませんでした。

声にならない唸りをあげながら、血の垂れた足で、地面に腕を描きました。

少年が描いたとは思えないほど大きさも形も歪な赤黒い両腕が少年に付きました。

残った血と両腕を使って、以前スーツの人が見せてくれた爆弾というものを描きました。それを数個鉄格子の隙間から投げると外とドアが一気に弾け飛びました。

少年自身も吹っ飛びそうになりましたが、人の声が聞こえてきたので怯まず立て続けに投げました。

部屋の外には大きな空洞が広がり、何人かの人が沢山の血を垂らしながら横たわっていました。

少年もボロボロでしたが、両腕は少年とは別物のように元気に動きました。

倒れた人の血を使って、スーツの人が見せてくれた乗り物を描きました。

少年は機体に乗り込むと、壁や天井を打てる限りのミサイルで破壊し尽くし、外に出ました。

ただ必死に運転し、町や山を何個も何個も走り抜けると深い森に辿り付きました。

森の中に木の生えていない空間を見つけるとそこに着陸しました。

その土地に、落ちている木の枝を使って、住んでいた洋館を描きました。

洋館の中には少年が住んでいた通りの姿がありました。

少年はもう腕を失わないように何本も何本も腕を描き、自分にくっ付けました。

そして大好きなお母さんを描き、死ぬまで幸せに暮らしました。
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