【完結】ダンスパーティーで騎士様と。〜インテリ俺様騎士団長α×ポンコツ元ヤン転生Ω〜

亜沙美多郎

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本編

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 リアム様の周りは常に人で溢れかえっている。

 あれだと、シャンパンを飲む暇だってないんじゃないか。

 あの集団には近付かないように気をつけようと、細心の注意を払う。

 もしも粗相をしてしまえば、きっと生きては帰れないだろう。

 俺がこの任務で一番頑張ること、それは失敗しないことなのだ。

 このパーティー会場という名の戦場でも、リアム様の周辺は特に過酷な争いが繰り広げられている。

 あそこはベテランの従業員に任せ、俺はひたすら雑用に専念した。

 まるでリアム様には気付いてもいません。という素振りを怠らない。
 
 面と向かって呼ばれる以外は誰とも話さないでいたし、客とはなるべく目が合わないようにしていた。

 『自分は料理を運ぶ係です』オーラを醸し出し、客の間をすり抜け裏へ回ると、使用後の皿を台車に並べる。

 それもちゃんと皿ごとに分けて重ねておく。

 洗ってる時、これをやってくれているのといないのでは、作業効率が格段に変わってくるのだ。

 大体の従業員が乱雑に乗せられるだけ乗せて運んでくる。

 そんなことをされた時は最悪だ。俺たちは皿を割らないようにゆっくり皿の山を崩していかなければいけない。

「こうやって同じ皿を重ねた方が運びやすいし、たくさん乗るのにな」

 ブツブツと文句を言いながら、手早く作業を進めた。

 会場からは優雅な音楽が流れ始めた。騎士団員が女性を誘っては踊り込んでいる。

 客が踊っている間にも、使用済みの皿を片付けようと会場へ戻ると、ジェイクが客の女と踊っていた。

 ここの人は多分、どんな職種の人でも踊れるのだろう。

 ジェイクも従業員の中でもかなり目立つし、誘われても無理はない。

 その上、きっとジェイクのことだ。気を効かせて相性の良さそうな騎士団員を見繕って宿泊まで漕ぎ着けるに違いない。

 俺もジェイクのような仕事のできる人間に生まれたかった。

 そもそも、どうせ転生するならあんな高身長イケメンに転生したかった。

 何をしても様になるジェイクに少し見惚れていたせいで、リアム様ご一行が近づいているのに気付けなかった。

「キャッ!」

 誰かとぶつかった衝撃で危うくトレイを落としそうになる。女性客が軽い悲鳴の後、ワザとらしく倒れ込んだ。

「ごめんなさい!! 大丈夫なのですかい?」

「なによ! 私を馬鹿にしてるのっ!!?」

「いや、そうではなくて……。あの、ごめん敬語が苦手で……。起き上がれる?」

 女性の容態を優先したつもりだったが、さらに逆上させてしまったらしい。

 顔を真っ赤にしたその客は、会場を流れる生演奏よりも大きな声で怒鳴り始めた。

「敬語も喋れない馬鹿が、どうして此処にいるの? ここは一流ホテルでしょう? こんな馬鹿を雇ったのはどこのどいつよ!!」

 女が金切り声で叫んだから、周りの人まで注目し始めた。

(これは、やばい!!)

 とにかく、この会場から出るのが先決だ。

「だからごめんって! それよりもあなたの怪我が心配だから、肩、掴まって……」

 倒れた女の隣に跪くと

「ドレスを踏まないで!!」

 と甲高い声で一層怒らせてしまった。

「これは今日、リアム様のために誂えたドレスなのよ!!」

 女の怒りは増す一方だ。こうなってしまえば、俺もどうすればいいのか分からない。

 会場中がざわつき始めてしまった。

 絶対に迷惑をかけないと、頑張ってきたのに……。

 女の前で立ち尽くすと、これ以上は声も出ず両手を固く握った。

 
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