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本編
7
ジェイクがダンスをしながら、さりげなく俺のほうを見たのが分かった。
自然にターンをしながらこちらへと進行方向を定め、ステップを踏みながら近づいてくる。
丁度いい場所にいた騎士団員に目配せをすると、その女性を騎士団員へと手渡す。騎士団員は上機嫌でダンスの輪に入った。
その後はするりと身を交わしながらこっちへと足を早めた。
(早く来てくれ、ジェイク)
祈るしかできない俺は本当に情けない。こんな広い会場の離れた場所から、女性客と踊っているのにも関わらず、ジェイクは俺に気づいてくれた。
それだけ会場全体に気を配っている証拠だ。
俺なんて、客を怒らせてばかりなのに……。
自己嫌悪で言葉を失ったまま立ち尽くしていると、倒れた女はリアム様を呼び始めた。
「リアム様! リアム様ぁあ!! 助けてくださらない? この馬鹿な従業員に押し倒されて、足が痛くて動けないんですぅ」
「押し倒す?」
「ああっ! 痛い。後で治療費を請求するから、覚えてらっしゃい!!」
言い返そうとした俺を制圧した。
(……女って怖い)
ジェイクが直ぐそこまできている。『マヒロ!』と、名前を呼ぼうと口を開けた時、ジェイクの前にその男が現れた。
「リアム様ぁぁ!!」
女がワザとらしく両手を伸ばして助けを求める。
リアム様は、手を伸ばし……。持っていたハンカチで俺のスーツにかかったシャンパンを拭いてくれた。
女はこの状況にポカンと口を開けて固まっている。
そして俺も、何が起こったのか理解できず、女と同じ顔をして固まってしまった。
「大丈夫? 予備の着替えはあるのかな?」
リアム様はしっかりと俺を見て、優しい口調で話しかけた。
その声は落ち着いていて、心地よく耳に響く。
突然話しかけられ、少しの間呆然としてしまった。
「えっ、はい……。分かりはしないです」
また変な敬語を喋ってしまった。きっとリアム様にも笑われるだろう。
今日だけ助っ人に入っただけの俺の制服が、他にも用意されているかなんて分かるハズもない。
心臓がドクンっと波打った。
リアム様がジッと俺を見ているからだ。これ以上目立ちたくないから、そこの女を連れて早く去ってほしい。
「君、顔が赤いが熱でもあるのか?」
再びリアム様の手が伸びてくる。今度は額に手を当てられた。
ドクン。また心臓が大きく波打つ。
「あっ、あっ、あの……俺……はぁ……はぁ……」
緊張しすぎて言葉が出てこない……。
赤面した顔はさらに熱を帯びる。まともに呼吸ができない。
リアム様の圧倒的なオーラに飲まれそうになる。
心臓の音が五月蝿い。
(いや、これは緊張じゃない……)
久しぶりの感覚を思い出した。
「失礼致します。スタッフが大変ご迷惑をおかけしました。裏で着替えさせてきます。さあ、ダンスの曲が変わりますよ」
「ジェイク!!」
タイミングよくアップテンポなメロディーに変わる。
ジェイクが俺の肩を抱き寄せて、会場から出るまで早足で進む。
ジェイクは察しがいいから多分オメガって気づいただろう。それでも助けに来ていくれた安心感ったらない。
自分だけでは歩くのもままならない。ジェイクに保たれたまま、逃げるようにこの場を離れた。
「あっ、君!! ちょっと待って!!」
後ろからリアム様に呼ばれたが、振り返らずに歩く。
「マヒロ、嘘はダメじゃないか」
小声でジェイクが言う。至って自然に、スマートに俺を会場の外に連れ出しながら。
「だって、もう何年も発情したことなかったから……」
「やっぱり、ヒートか……」
幸い他の人にはバレずに外へ出られた。しかし、呼吸がさらに荒くなっているのも確かだ。
ジェイクもそれに気付いている。
「マヒロ……急いでこっちへ!!」
今度は手を引いて従業員専用のドアへと向かった。そのドアを潜ると、直ぐ近くの倉庫に入った。
自然にターンをしながらこちらへと進行方向を定め、ステップを踏みながら近づいてくる。
丁度いい場所にいた騎士団員に目配せをすると、その女性を騎士団員へと手渡す。騎士団員は上機嫌でダンスの輪に入った。
その後はするりと身を交わしながらこっちへと足を早めた。
(早く来てくれ、ジェイク)
祈るしかできない俺は本当に情けない。こんな広い会場の離れた場所から、女性客と踊っているのにも関わらず、ジェイクは俺に気づいてくれた。
それだけ会場全体に気を配っている証拠だ。
俺なんて、客を怒らせてばかりなのに……。
自己嫌悪で言葉を失ったまま立ち尽くしていると、倒れた女はリアム様を呼び始めた。
「リアム様! リアム様ぁあ!! 助けてくださらない? この馬鹿な従業員に押し倒されて、足が痛くて動けないんですぅ」
「押し倒す?」
「ああっ! 痛い。後で治療費を請求するから、覚えてらっしゃい!!」
言い返そうとした俺を制圧した。
(……女って怖い)
ジェイクが直ぐそこまできている。『マヒロ!』と、名前を呼ぼうと口を開けた時、ジェイクの前にその男が現れた。
「リアム様ぁぁ!!」
女がワザとらしく両手を伸ばして助けを求める。
リアム様は、手を伸ばし……。持っていたハンカチで俺のスーツにかかったシャンパンを拭いてくれた。
女はこの状況にポカンと口を開けて固まっている。
そして俺も、何が起こったのか理解できず、女と同じ顔をして固まってしまった。
「大丈夫? 予備の着替えはあるのかな?」
リアム様はしっかりと俺を見て、優しい口調で話しかけた。
その声は落ち着いていて、心地よく耳に響く。
突然話しかけられ、少しの間呆然としてしまった。
「えっ、はい……。分かりはしないです」
また変な敬語を喋ってしまった。きっとリアム様にも笑われるだろう。
今日だけ助っ人に入っただけの俺の制服が、他にも用意されているかなんて分かるハズもない。
心臓がドクンっと波打った。
リアム様がジッと俺を見ているからだ。これ以上目立ちたくないから、そこの女を連れて早く去ってほしい。
「君、顔が赤いが熱でもあるのか?」
再びリアム様の手が伸びてくる。今度は額に手を当てられた。
ドクン。また心臓が大きく波打つ。
「あっ、あっ、あの……俺……はぁ……はぁ……」
緊張しすぎて言葉が出てこない……。
赤面した顔はさらに熱を帯びる。まともに呼吸ができない。
リアム様の圧倒的なオーラに飲まれそうになる。
心臓の音が五月蝿い。
(いや、これは緊張じゃない……)
久しぶりの感覚を思い出した。
「失礼致します。スタッフが大変ご迷惑をおかけしました。裏で着替えさせてきます。さあ、ダンスの曲が変わりますよ」
「ジェイク!!」
タイミングよくアップテンポなメロディーに変わる。
ジェイクが俺の肩を抱き寄せて、会場から出るまで早足で進む。
ジェイクは察しがいいから多分オメガって気づいただろう。それでも助けに来ていくれた安心感ったらない。
自分だけでは歩くのもままならない。ジェイクに保たれたまま、逃げるようにこの場を離れた。
「あっ、君!! ちょっと待って!!」
後ろからリアム様に呼ばれたが、振り返らずに歩く。
「マヒロ、嘘はダメじゃないか」
小声でジェイクが言う。至って自然に、スマートに俺を会場の外に連れ出しながら。
「だって、もう何年も発情したことなかったから……」
「やっぱり、ヒートか……」
幸い他の人にはバレずに外へ出られた。しかし、呼吸がさらに荒くなっているのも確かだ。
ジェイクもそれに気付いている。
「マヒロ……急いでこっちへ!!」
今度は手を引いて従業員専用のドアへと向かった。そのドアを潜ると、直ぐ近くの倉庫に入った。
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