【完結】ダンスパーティーで騎士様と。〜インテリ俺様騎士団長α×ポンコツ元ヤン転生Ω〜

亜沙美多郎

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本編

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 馬車は自然豊かなパークの前に停まった。

「こんなところがあったんだ……」

 街には行くようになったものの、まだまだ知らない場所ばかりだ。

 遊歩道に木陰を落とすように、両脇から木の葉が茂っている。

 広い敷地には友人同士、家族、一人で気ままに……と、それぞれが思い思いの時間を過ごしている。

 なので特に誰かがリアム様に気付くこともなかった。

 おかげで俺たちは、二人でのんびりと散歩を楽しむことができた。

「リアム様は、ここにはよくお越しませますか?」

「よく来るか、ということか? そうだな。たまにこうして息抜きに来ている。人々の活気のある空間も好きだが、それだけでは疲れてしまうからね。そういう時はこうして何も考えずに、自然と一体化するのが好きだ」

「俺は、ここに初めて来ました。すごく綺麗だっ……ですね」

 リアム様が、クスリと笑った。

 自然と繋いだ手が優しい。

 時間をかけて俺の緊張を解そうと、気を使ってくれているのが分かる。

 昨日の強引なリアム様とは、また違った一面を見てしまった。

「もう少し散歩すれば、親しく喋れるようになるかもしれないな」

「そ……そんなことは……」

「しかし、その変な喋り方もなかなか面白い。ずっとそうでもいい気もしてきた」

「そうなのですかい?」

 いつもの喧騒から離れ、穏やかな自然の中を歩いているだけで、気が緩んでしまう。

 でも、なんだかそれでもいいか……なんて思う自分もいた。

 午前中の殆どを散歩に費やした後、また馬車に乗り移動する。

 お昼ご飯に連れてきてくれたのだ。

 見た目だけでも高級だと分かる料理店だ。

「いつも、こんな凄いところで食べてるのですかな?」

「そうだな、ここはよく利用している。凄い所なんて言えば、マヒロが働いているホテルだって十分凄い所じゃないか。この国でも最上級のホテルだ」

「いや……でも、俺はただの皿洗いでございますので……」

「せっかくリラックスしてくれたのに、また緊張させてしまったようだね。場所を変えよう」

「いや! 大丈夫です! せっかく来ましたのに、ここで食べましょう」

 ……言ったはいいが、所謂コース料理だ。やっぱりやめて俺の働いているホテルに帰ればよかった。そのほうがいくらか緊張せずに食べられた気がする。

「美味しいかい?」って聞かれませんように……って祈っていた次の瞬間、そう聞かれてしまい、頷くしかできなかった。

 本当は緊張して気まずくて、味なんて全く感じなかった。

 逆にリアム様は、至って自然体で今日一日を楽しんで過ごしているように感じる。

 夜になり、またホテルの部屋に帰っても、特に態度は紳士的なまま。

 部屋では一切触れることもなく、一定の距離を持って過ごしていた。

 シャワーを浴びるよう言われて、豪華シャワールームまで堪能できた。石鹸までいい香りだ。

 こんな機会でもなきゃ味わえない贅沢だと気持ちを切り替え、宿泊を楽しもうと思ったのだった。


「マヒロ。そろそろ抑制剤の効き目が切れる頃だけど、大丈夫? 早めに先生を呼ぼうか?」

 言われて思い出したように、心臓がドクンと大きく伸縮した。

 リアム様は俺からは離れた向こうのソファーに座っている。

 それなのに、同じ部屋にいるだけで体が反応を示す。

「そんな……薬が切れた途端にこれ……?」

 しかも、抑えていた反動なのか症状が急速に加速する。

 早くも、オメガの分泌液が腿を伝って溢れ出していた。

「くる……しい……」
 
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