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本編
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リアム様が部屋に帰ってくるまで随分と待った。
きっとアンジュさんとの時間を楽しんでいるんだ。俺という番がいながら、自宅に帰った瞬間もう浮気か? あれ? もしかして俺が浮気相手のパターンだったりして……。
あの時のリアム様を信じたい。
でも目の当たりにしてしまったアンジュさんとの抱擁。
この国では挨拶でハグをするのか? それにしてもあんなにもしっかりと抱き合うなんてするものか。
あの二人を見た後で、俺はどんな顔してリアム様と過ごせば良いんだ。
本当は逃げ出したいくらいだが、今日はもうここを抜け出すなんてできないし。
……早くもホテルに帰りたくなってしまった。
運命の番ともなれば、悩みなんてなくなるのかと思ってたが、そんなことはない。
実際アンジュさんと話をして、美人の上に良い人だと知っている。
俺とアンジュさん。例えばどっちと結婚する? そりゃ誰だってアンジュさんを取るだろう。
もし俺がαでもアンジュさんと結婚したいって思う。
広い部屋のどこで何をして過ごせば良いかも分からず、少しでも居心地の良い場所を探した結果、窓際のカーテンに包まってしゃがみ込んだ。
部屋のライトの灯し方すら分からず、だんだんと外と同じように暗くなっていく。
今の俺の気持ちと同じだ。月でも見えれば少しは癒されたかもしれないが、まだそんな時間ではなかった。
薄暗い部屋で、明日なんと言ってここから出ようか。そればかり考えて過ごす。
突然ドアの開く音と同時に部屋の灯りが点いた。リアム様が帰って来たのだ。
少しの間、リアム様は部屋の奥まで入らなかった。
そして歩き始めると、迷いなく窓際に近寄り、俺が隠れていたカーテンを捲った。
「ただいま。マヒロは何故こんな所に隠れているんだ?」
「…………」
リアム様に顔を覗きこまれ、顔を逸らす。
また元の服に戻っている。公私混同しないタイプだな。これが『できる男』の手本だ。
俺なんて、厨房で働いてまた自室に帰ってくるまで一度だって着替えたりしない。
なんなら、今だってホールの助っ人で借りた時の黒スーツをそのまま着ている。
やはり生きる世界が違いすぎるんだ。
「何かあったか? もしかして、誰かがここに来たとか?」
俺は何も喋らず首を横に振った。
「何故喋らない? 聞かせてくれないと分からないじゃないか」
そんなの、言えるものなら言いたいさ。
でも『夕方に綺麗な女の人と抱き合っていましたね』なんて俺の口から言えというのか?
そしてそれを言われた時、リアム様はどんな反応をするんだ?
全てが恐怖でしかない。
「———今は、誰とも喋りたくない」
「マヒロ。私にも言えないような何かがあったんだろう?」
俺に向き合ってリアム様もしゃがみ込んだ。
しまった、ここは部屋の角だ。逃げようにも逃げられない。
「そんな悲しい顔をするなんて、余程のことだろう? 無理せず話てくれないか?」
いつもは俺様なリアム様がこんな優しい口調で喋るなんて、益々怪しい。
「やっぱり……来るんじゃなかった……」
「っ!? 何故そんな……いきなり一人にしてしまったのは悪かった。どうしてもやらなきゃいけない仕事があったのだ」
そんなことを怒ってるんじゃない。
何故アンジュさんの話題をリアム様から出さないんだ?
リアム様こそ、何故隠し事をしているんだ?
膝を抱え込んで顔を埋めた。
「一人になりたい……」
きっとアンジュさんとの時間を楽しんでいるんだ。俺という番がいながら、自宅に帰った瞬間もう浮気か? あれ? もしかして俺が浮気相手のパターンだったりして……。
あの時のリアム様を信じたい。
でも目の当たりにしてしまったアンジュさんとの抱擁。
この国では挨拶でハグをするのか? それにしてもあんなにもしっかりと抱き合うなんてするものか。
あの二人を見た後で、俺はどんな顔してリアム様と過ごせば良いんだ。
本当は逃げ出したいくらいだが、今日はもうここを抜け出すなんてできないし。
……早くもホテルに帰りたくなってしまった。
運命の番ともなれば、悩みなんてなくなるのかと思ってたが、そんなことはない。
実際アンジュさんと話をして、美人の上に良い人だと知っている。
俺とアンジュさん。例えばどっちと結婚する? そりゃ誰だってアンジュさんを取るだろう。
もし俺がαでもアンジュさんと結婚したいって思う。
広い部屋のどこで何をして過ごせば良いかも分からず、少しでも居心地の良い場所を探した結果、窓際のカーテンに包まってしゃがみ込んだ。
部屋のライトの灯し方すら分からず、だんだんと外と同じように暗くなっていく。
今の俺の気持ちと同じだ。月でも見えれば少しは癒されたかもしれないが、まだそんな時間ではなかった。
薄暗い部屋で、明日なんと言ってここから出ようか。そればかり考えて過ごす。
突然ドアの開く音と同時に部屋の灯りが点いた。リアム様が帰って来たのだ。
少しの間、リアム様は部屋の奥まで入らなかった。
そして歩き始めると、迷いなく窓際に近寄り、俺が隠れていたカーテンを捲った。
「ただいま。マヒロは何故こんな所に隠れているんだ?」
「…………」
リアム様に顔を覗きこまれ、顔を逸らす。
また元の服に戻っている。公私混同しないタイプだな。これが『できる男』の手本だ。
俺なんて、厨房で働いてまた自室に帰ってくるまで一度だって着替えたりしない。
なんなら、今だってホールの助っ人で借りた時の黒スーツをそのまま着ている。
やはり生きる世界が違いすぎるんだ。
「何かあったか? もしかして、誰かがここに来たとか?」
俺は何も喋らず首を横に振った。
「何故喋らない? 聞かせてくれないと分からないじゃないか」
そんなの、言えるものなら言いたいさ。
でも『夕方に綺麗な女の人と抱き合っていましたね』なんて俺の口から言えというのか?
そしてそれを言われた時、リアム様はどんな反応をするんだ?
全てが恐怖でしかない。
「———今は、誰とも喋りたくない」
「マヒロ。私にも言えないような何かがあったんだろう?」
俺に向き合ってリアム様もしゃがみ込んだ。
しまった、ここは部屋の角だ。逃げようにも逃げられない。
「そんな悲しい顔をするなんて、余程のことだろう? 無理せず話てくれないか?」
いつもは俺様なリアム様がこんな優しい口調で喋るなんて、益々怪しい。
「やっぱり……来るんじゃなかった……」
「っ!? 何故そんな……いきなり一人にしてしまったのは悪かった。どうしてもやらなきゃいけない仕事があったのだ」
そんなことを怒ってるんじゃない。
何故アンジュさんの話題をリアム様から出さないんだ?
リアム様こそ、何故隠し事をしているんだ?
膝を抱え込んで顔を埋めた。
「一人になりたい……」
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