【完結】ダンスパーティーで騎士様と。〜インテリ俺様騎士団長α×ポンコツ元ヤン転生Ω〜

亜沙美多郎

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spin-offージェイクと騎士ー

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 浮かれている。
 どのくらいかというと、従業員に「最近、いいことありました?」と聞かれるくらいには。

「そんなに顔に出ているのか……」
 口元に手をやる。

 自覚はまぁ……、してなくもない。
 ルイが会う度かわいいからいけない。
 職種も違い、お互いの勤務時間もまちまちだから、なかなか会えないかも……なんて懸念していたけど、意外にもそんなことはなかった。

 騎士団のダンスパーティーには、相変わらずベルガルドさんが連れてきてくれるし、(ベルガルドさんにはルイから俺との関係を報告したそうだ)
 ルイが休日の前日になると、泊まりに来てくれる。

 その上、仕事も順調だ。
 これで調子にのるなと言われても無理な話だろう。

「お疲れ様です、副支配人。今日も大盛況でしたね」
 従業員の女性に声をかけられた。
「ああ、忙しかったけど、今夜の従業員の連携プレイは見事だった。誇らしいよ」
 ありがとうと言うと、疲れを感じさせない満面の笑みを向けてくれた。

 周りの人に恵まれていると自覚している。ここに立てているのは、間違いなく優秀な従業員のおかげだ。
 最近では、それぞれの従業員がパーティー客をそのままホテルの部屋の確保まで促せるようになっている。

 そろそろ、俺がスタッフに紛れてパーティー会場に立つ日もなくなるかもしれない。

 順調すぎて怖いくらいだが、この波に乗ってもっとホテルを盛り上げたい。
 もちろん、ルイとの仲も。

 予定だと、次のルイの発情期まで半月くらいはある。もどかしい時間ではあるが、それまでにもっと俺に惚れてほしい。

 その為なら、何事も頑張れる。

 番になる前には、ルイの実家にも挨拶に行かせてほしいと頼んであるから、今はその日程の段取りを組んでいるところだ。
 ルイがどんな環境で、どんな風に育ったのか……、とても興味がある。本人は自分の地元を見られるのは恥ずかしいと言っているが……。
「でも、両親に何の挨拶もなく番うわけにはいかない。プリマティークホテルにも、ご招待したい」
 これだけは譲れないと言っておいた。

 ルイは田舎すぎるから……と都会育ちの俺に見られたくないのだそうだ。かと言って、田舎者の両親を高級ホテルにつれてくるのも恥ずかしいという。

「あの……家柄が釣り合わないと思ったら、僕のこと捨ててもいいですから……」
 なんて言い出した日には思わず説教めいたことを言ってしまった。

 ルイはきっと、俺との身分差のようなものを感じていて、その壁を今でも拭えていない。だから、一緒にいてもどこか一定の距離を感じてしまう。

 どうすれば、その壁を拭えるだろうか……。
 目下の悩みだ。

 リアム様から、マヒロの話をしてもらおうか……、なんてのも考えなくはない。
 俺からの話より、素直に聞けるだろうし……。リアム様もお忍びでアンジュ様とお食事に来てくれている。近日中にもご予約を頂いていた。その時に相談してみよう。

 根回しなど……と思われるかもしれないが、今はそんな事を言ってられない。ルイの体質上、予定じゃない発情期がいつきても変ではない。行動は、早いに越したことはない。


 しかし……。

「今夜も大規模なパーティーだ。それぞれが持ち場の確認を!!」
「「「はい!!」」」

 大会場でのパーティーの準備は朝から大忙し。こんな日は、出勤時間よりも早くから行って、確認と準備に走り回っている。

 そんな時、突然ルイがホテルを訪ねて来た。今日は騎士団のパーティーはないはずだ。

 ルイの姿を見つけたのも偶然だった。

 大荷物を抱えている。

 どうした。

 朝から雨が降っていたと言うのに、傘も差さずに来たのか。

 おかしい。いつもの様子とは違う。

「ジェイクさ……」
「ルイ!! どうしたんだ。こんなにも濡れて……」
「僕……」


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