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47話 アルガスと過ごそう その1
しおりを挟む「アイリーン殿、少々よろしいですか?」
「アルガス伯爵、なんでしょうか?」
その日、アイリーンは私室から出てきたアルガスに呼び止められた。アランドロ女王国のシエラ女王が帰ってから3日が経過している。
「女王国の兵士選別はもうじき完了するかと思われます。それが完了次第、タイネーブ殿の支援に向かう手筈なのですが……」
「は、はい……」
アイリーンとしても気になっていた事柄だ。この3日間、特に音沙汰がなかった為、彼女は仕事の合間にそわそわしていることが多かった。周囲からはトイレでも我慢しているのではないかと、噂されていたが……。
「実は、私も向かう手筈になっておりまして……」
「そうなんですか?」
アルガス自身が向かうというのは初耳だ。彼もそれなりに戦えるのかもしれないが、暴動の鎮圧に対する反抗戦に参加して大丈夫なのだろうか。単純に怪我の方面が心配だ。
「顔は隠していきますし、完全武装で安全度を最優先に戦いますのでご安心ください。それに、戦争を起こすわけではないのですから」
「それはそうですが……心配です」
アイリーンの本音が漏れた瞬間だった。アイリーンとしては、彼に無茶なことはしてほしくはない。タイネーブが戦うのは容認しているのに、勝手な言い分かもしれないが、強さに対する信頼が違うのだ。アルガスは決して武闘派というわけではない。
「心配いただきまして、ありがとうございます。しかし、私も女王国の伯爵。民への威厳を示す為にも今回は出陣する必要が出てまいりました。そこで、少し付き合っていただきたい場所があるのですが」
「私とですか?」
「ええ、アイリーン殿と一緒に向かいたいと思っています。よろしいでしょうか?」
「はい、喜んで。それで、向かう場所はどこになるんですか?」
アイリーンの何気ない質問だ。アルガスは咳払いを軽く行いながら回答した。
「戦いで死亡した、兵士たちの霊廟……エオリテネスへ」
「……えっ?」
エオリテネス……アランドロ女王国の一区画にある墓地になる。戦争で死亡した者たちが祀られており、戦争を行う前に将軍閣下などが、勝利を必ず持ち帰る覚悟を作り出す為に向かうことが多いとされている。アイリーンもゲーム内で行ったことがあるので、それについては知っていた。
「……それは、どういう意味で向かうのでしょうか?」
エオリテネスは、死亡するリスクのある者が、必ず帰ってくるという意思表示で向かう地でもある。アイリーンとしては不安を拭い去れなかった。
「文字通り、必ず生きて帰ってくると祈願する為ですよ」
アルガスは力強く、臆面もなく彼女に言った。そんな彼の表情には、既に「必ず帰ってくる」という強い意志が現れていたそうな……。
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