魔王様は学校にいきたい!

ゆにこーん

文字の大きさ
147 / 310

極炎魔法

しおりを挟む
 旧ロアーナ要塞。
 ロアーナの町から遥か北東、ロアーナ山脈中腹に位置する石造りの古びた砦である。
 はるか昔に放棄され、廃墟と化しているの要塞。しかし実態は闇の組織、ガレウス邪教団によって改造された秘密基地である。

「「「ガレウス様のために……ガレウス様のために……」」」

 怪しげな囁きを繰り返す、黒いローブに身を包んだ吸血鬼達。傍らに積まれた檻の中では、たくさんの魔物が閉じ込められている。

「「「ガレウス様のために……ガレウス様のために……」」」

 吸血鬼達は巨大な注射器を用いて、怪しく光る液体を魔物達へと注入していく。液体を注入された魔物達は苦しそうなうめき声をあげ、その後グッタリと動かなくなってしまう。よく見ると魔物達の体はどす黒く変色しているようだ。

「「「ガレウス様のために……邪神ガレウス様のために……!」」」

 吸血鬼の不気味な囁きは一層力強さを増してく。とその時、燕尾服に身を包んだ悪魔、エゼルレッドが現れる。

「計画は順調か?」

「はっ!」

 現れたエゼルレッドの前に、一人の吸血鬼が膝をつく。

「魔物共を操り、ロアーナ高原、ロアーナ要塞、ロアーナの町を襲撃しております。薬によってアンデット化した魔物の群れです。第一王女と第二王女、そしてロアーナ軍を相手にしても十二分に戦えます!」

「ふうむ……」

「薬の改良にも成功しました、この新薬は魔物を暴れさせることなく一瞬でアンデットへと変質させます。現在アンデット軍団の増強を進めており、明日にもアンデット化した魔物を解き放つ予定です。ロアーナ地方を地獄と変えて見せましょう!」

 報告を受けたエゼルレッドは、ニヤリと邪悪な笑みを浮かべる。

「クククッ、素晴らしい働きだ」

「はっ、ありがたきお言葉!」

「一人でも多く……一人でも多くの人間を殺すのだ。殺した人間の魂を集め、儀式を通じて魔力へと変換するのだ」

「その魔力を糧として邪神ガレウス様は復活なされるのですね、しかし魂が足りなければ……?」

「心配はいらん、別の復活方法も考えている。例の物さえ手に入れば……クククハハッ!」

 両手を広げ高笑いをあげるエゼルレッド、もはや目的を達成したかのような態度である。しかし残念ながら、いつまでもエゼルレッドの思い通りにはならない。

「見つけたのじゃ……」

 どこからともなく聞えてくる可愛らしい少女の声。

「ぬっ、誰だ!?」

 部屋の四隅、机の下、照明の死角。影という影がドロドロと溶けあい、底なしの暗闇を作り出す。そして作り出された暗闇の中から、小さな影がヌルリと這い出てくる。

「どうやらお主等はガレウスの信奉者じゃな?」

 少女の姿をした魔王、ウルリカ様である。
 思いもよらぬ事態に吸血鬼達は口を開けたまま固まってしまう。一方エゼルレッドの反応は早かった。

「くっ……氷瀑魔法、アイスフォール!」

 ウルリカ様の異常性に気づいたエゼルレッドは、間髪入れず第六階梯に位置する強力な魔法を放ったのである。
 要塞内部は瞬く間に巨大な氷の滝に覆われる。巻き込まれた吸血鬼達は氷漬けとなってしまうが、エゼルレッドは気にもとめない。

「こいつは何者だ? どこから侵入した?」

 氷の滝に閉じ込められ、身動きを封じられてしまったウルリカ様。かと思いきやバキバキと氷を割り、テクテクと氷から出てきてしまったではないか。

「なんじゃ、こんなのものか?」

「なっ、バカな!?」

「ふんっ、こんなものでは妾の怒りは冷めんぞ?」

 焦るエゼルレッドをそっちのけにして、ウルリカ様は要塞内部をグルリと見渡す。

「怪しげな薬を使って魔物達をアンデットに変えておるのじゃな。あの魔物達は……もはや助からんか……」

 グッタリと倒れる魔物を、ウルリカ様は悲しそうな目で見つめている。しかし次の瞬間には、別人のように鋭い目でエゼルレッドを睨みつける。

「魔物達を苦しめおって……楽しい楽しい課外授業を台無しにしおって……、それに……」

 あまりにも強大な魔力の気配に、エゼルレッドは「ひっ」と悲鳴を漏らしてしまう。

「妾の大切な者達を傷つけようとしおって、許さんのじゃ!」

 解き放たれる強大な魔力。その衝撃は凄まじく、要塞内部を覆っていた氷の滝は粉々に砕け散る。

「ゆくのじゃ、第七階梯魔法──」

 手の平に灯る小さな火球。
 その小さな見た目とは対照的に、放たれる熱量は常軌を逸していた。じりじりと焼けつく熱波によって要塞内部は炎に包まれる。
 危険を察知したエゼルレッドは即座に逃走を図ろうとする、しかし怒りに燃えるウルリカ様から逃れられるはずはない。そして──。

「──極炎魔法、デモニカ・フレア──!」

 ロアーナ山脈に響き渡る凄まじい衝撃音。
 巨大に膨れあがった火球は、一瞬にして旧ロアーナ要塞を包み込む。すっかり日も落ちているというのに、旧ロアーナ要塞周辺は日中であるかのような明るさだ。
 石造りの建造物であるはずの旧ロアーナ要塞。しかし石造りだろうとなんだろうと、極炎魔法は全てを焼き滅ぼしてしまう。
 まさに極炎、炎の極みと呼ぶにふさわしい。

「そろそろ十分じゃな」

 ウルリカ様の言葉を合図に、膨れあがっていた火球はウルリカ様の手の平へと吸い込まれていく。
 あれほど激しく燃え盛っていた炎は、すっかり消え去ってしまった。そしてロアーナ要塞もすっかり消え去ってしまった。
 極炎魔法に触れた山肌はドロドロに融解し、まるで隕石でも衝突したかのような光景である。魔王の放つ第七階梯魔法とはかくも恐ろしい。

「うむ、少しスッキリしたのじゃ!」

 降りしきる灰の中、ウルリカ様はボロボロの布切れを掴んで立っていた。

「う……ぅ……」

 よく見るとそれは布切れではなく、真っ黒に焼け焦げたエゼルレッドのようである。

「お主はゼノンとアンナへの手土産なのじゃ」

 エゼルレッドは極炎魔法を耐え抜いたわけではない、ウルリカ様に生かされただけである。しかし極炎魔法の炎に焼かれ、今にも灰となって消えてしまいそうだ。

「ガレウスのことを喋ってもらうのじゃ、それまで死ぬことは許さんのじゃ」

 そう言うとウルリカ様は、ボロボロのエゼルレッドをポイッと地面に放り投げる。まるでゴミをポイ捨てする子供のようである。

「さて、みんなのところへ戻るかの!」

 そして、スッキリとした表情でニパッと笑うウルリカ様。
 この日、闇に蠢く邪悪な集団は、魔王の怒りに触れこの世から姿を消した。

 そしてロアーナ山脈の一帯も、地図の上から姿を消した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...