魔王様は学校にいきたい!

ゆにこーん

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お祭り騒ぎ

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 時刻は夕暮れ。お祭り大好きロアーナの町は、かつてなほどの大盛りあがりを見せていた。危機を退けたお祝いで飲めや歌えのどんちゃん騒ぎである。
 下級クラスの生徒達は、町を救った英雄として住人から引っ張りだこである。先頭に立って吸血鬼と戦ったシャルロットは、超がつくほどの大人気だ。

「シャルロット様のおかげで俺達の町は守られたんだ! シャルロット様万歳!」

「よっ、我らが王女様! やっぱりヴィクトリア女王様の血を引いておられる!」

「おい知ってるか? シャルロット様は勝利の女神様なんだってよ!」

「王都では太陽の天使様って呼ばれているらしいぜ?」

「王女様は女神様で天使様だったのか! すげえーっ!!」

「「「「「王女様! 女神様! 天使様! シャルロット様ーっ!!」」」」」

 盃をかかげ、肩を組み、大声でシャルロットの名を連呼する住人達。少々盛りあがりすぎではなかろうか。
 そんなお祭り騒ぎから少し離れた物陰で、コソコソと人影が集まっていた。

「はぁ……はぁ……、ようやく抜け出せましたわ……」

「俺もなんとか抜け出せた、押し潰されそうだったぜ」

「揉みくちゃにされてしまいました」

 集まっているのは下級クラスの生徒達である、どうやらお祭り騒ぎからコソコソと脱出してきたらしい。
 騒ぎから逃れてホッと一息、とそこへ──。

「こんな所にいたのね……」

「お母様!」

 現れたのはヴィクトリア女王である。体調は回復してきたようで、昼間に比べてずいぶんと顔色がよくなっている。

「また無茶をしたわね、吸血鬼と戦うなんて……」

 ヴィクトリア女王の言葉にビクリと肩を震わせるシャルロット。前回こっぴどく叱られたのだ、トラウマ気味になっているのだろう。

「その、ごめんなさ──」

「「「「「ごめんなさい!」」」」」

「──へっ!?」

 シャルロットは謝ろうと頭を下げ、しかし途中でビックリと固まってしまう。なんとクラスメイト全員が一斉に頭を下げたのである。

「ボクの勝手な判断で吸血鬼と戦ってしまいました、叱るなら僕を叱ってください」

「いいや、自分の勝手な判断で吸血鬼と戦ったのだ! 叱るならば自分を叱ってほしい!」

「違いますよ、私の勝手な判断で吸血鬼と戦ったんです! だから私を叱ってください!」

「いやいや、勝手は判断をしたのは俺だろう! 俺こそ叱られるべきだ!」

「落ちついてください、勝手な判断をしたのは私ですよ。私こそ叱られるに相応しいです」

 五人はニコニコと笑いながら、我先に叱ってほしいと揉めている。なんとも奇妙な、しかし優しさでいっぱいのやり取りを見て、シャルロットはポロポロと涙を流してしまう。
 そんな六人に向かって大きく両腕を広げるヴィクトリア女王。ボロボロと涙を流しながら、六人全員を思いっきり抱き締める。

「お母様……?」

「心配したのよ……無事でよかったわ……」

「お母様……ぐぇっ、苦しいですわ……」

「あらっ、ごめんなさい!」

 ヴィクトリア女王は慌てて六人を解放する。危うく溺れかけてしまうほどの、深すぎる愛の抱擁である。

「みんな無事でいてくれて本当にありがとう、それともう一つお礼を言わせて」

「もう一つですの?」

「ロアーナの町を、私の生まれた町を救ってくれてありがとう」

 そう言うとヴィクトリア女王は、再び六人を抱きしめて回る。今度は一人一人順番だ、これには生徒達も一安心。

「ところでお母様、ウルリカは一緒ではありませんの?」

「そうだったわ! ウルリカちゃんはクリスティーナとエリザベスを助けにいったのよ!」

「お姉様達を?」

「クリスティーナとエリザベスにも危機が迫っているらしいの、それでウルリカちゃんは一人で助けに向かったのよ」

「そんなっ、お姉様達まで危険な目に!?」

 大切な家族の危機と聞いて、顔を青くするシャルロット。しかしシャルロットの心配は杞憂に終わる。

「ただいまなのじゃー」

 どこからともなく聞えてくる可愛らしい少女の声。暗闇の中からヌルリと這い出る、ボロボロの布切れを掴んだ少女。

「ウルリカちゃん、無事だったのね!」

「心配無用と言ったはずなのじゃ、妾は魔王じゃからな!」

 ニパッと笑ったウルリカ様は、掴んでいた布切れをドサッと放り投げる。

「ウルリカ様、これは一体……ひぇっ!?」

 ボロボロの布切れこと死にかけのエゼルレッドを見て、オリヴィアは思わず尻もちをついてしまう。黒こげで「うぅ……うぅ……」と呻いているのだ、怯えてしまうのも無理はない。

「ちょっとウルリカ、コレはなんですの?」

「それはゴミなのじゃ、ゼノンとアンナへの手土産なのじゃ」

「ゴミなのに手土産ってどういうことですのよ……。それよりウルリカ、お姉様達は無事ですの?」

「うむ! エミリオとドラルグを向かわせたからの!」

「エミリオとドラルグ……ですの?」

 エゼルレッドのこと、エミリオとドラルグのこと、どちらもウルリカ様しか知らない情報なのである。しかしウルリカ様は周囲の疑問など気にも留めず、暗闇に向かって大きく両手を広げる。

「ご苦労じゃったの、戻ってくるのじゃ!」

 ウルリカ様の号令と同時に暗闇の中から何十羽、いや何百羽ものコウモリが一斉に姿を現す。バタバタと羽音を立てながら、コウモリ達はウルリカ様の体に吸い込まれていく。
 あまりにも異様な光景に、誰もかれも開いた口が塞がらない。

「回収完了なのじゃ!」

「あの……ねえウルリカ? 先ほどのコウモリは一体?」

「あれは妾の使い魔なのじゃ、そんなことよりなのじゃ!」

「な、なんですの!?」

「悪者はみーんなやっつけたのじゃ、これで安心して課外授業を楽しめるのじゃ! しかし妾はお腹ペコペコじゃ、授業の前に甘々なお菓子をたらふく食べたいのじゃ……むむっ!」

 キラリと視線を光らせるウルリカ様。旧ロアーナ要塞でエゼルレッドを睨みつけた時の百倍は鋭い視線である。

「あそこを見るのじゃ、クイニーアマンが山積みなのじゃ!」

 視線の先では大きなお皿にクイニーアマンがこれでもかと積まれている。どうやらお祭り騒ぎのおやつとして、住人達が大量に用意したようだ。

「もはや一瞬たりとも我慢は出来ぬ! ロティよ、早く食べにいくのじゃ!!」

「ちょっと待ってウルリ──きゃあぁっ!?」

 興奮したウルリカ様は、シャルロットの手を掴んでクイニーアマンの山へと突撃していく。激しい戦いを終えたばかりだというのに、元気すぎる魔王様である。

「いっちゃったわね、色々と聞きたいこともあったのに……まあいいわ」

 ヴィクトリア女王はパンッと手を叩き、生徒達へと満面の笑顔を向ける。

「みんな頑張ってくれたものね、今はお祭りを楽しみましょう!」

 すっかり日は沈んだというのに、ロアーナの町は賑やかさを増すばかり。ヴィクトリア女王も参加して、飲めや歌えのどんちゃん騒ぎである。

 こうして今度こそ、ロアーナ地方に平和が訪れたのだった。
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