厄介払いされてしまいました

たくわん

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数日後、エリアーナによる城の家計改革が本格的に始まった。

朝から書斎にこもり、エリアーナは一つ一つの支出項目を精査していった。ルーカスも隣で書類を整理し、彼女の提案に耳を傾けた。

「まず、食材の購入ルートを変更します」

エリアーナは帳簿を指差した。

「王都から高級食材を取り寄せるのをやめて、地元の農家や商人から買いましょう。新鮮で、しかも安価です」

「それは良い案だ。地元にお金が回るし」

「ええ。それに、季節の食材を使えば、味も良くなります」

次に、エリアーナは城の暖房費に目をつけた。

「使っていない部屋の暖房を止めます。客室は来客がある時だけ温めれば十分です」

「確かに。父は見栄で全ての部屋を暖房していたが、無駄だった」

「それから、この豪華な晩餐会の費用。もう必要ありません」

ルーカスは頷いた。

「父の時代の悪習だ。僕は質素な食事で十分だ」

エリアーナは微笑んだ。

「質素でも、心のこもった食事の方が美味しいものです」

一週間かけて、城の無駄な支出を次々と削減していった。使用人たちの給金も見直した。

ある日、エリアーナはセバスチャンを呼んだ。

「セバスチャン、使用人の皆さんの給金を見直したいのです」

老執事は緊張した面持ちで頷いた。

「はい、奥方様」

「削減するのではありません。適正にしたいのです」

エリアーナは資料を広げた。

「仕事の内容に見合った給金を支払う。頑張っている人には正当な報酬を、怠けている人には厳しく。それが公平というものです」

セバスチャンの目が、わずかに見開かれた。

「では、削減ではなく」

「むしろ、一部の人は増額になります。あなたのように、長年誠実に働いてくださっている方には、もっと報いるべきです」

老執事の目に、涙が光った。

「奥方様...ありがとうございます」

「いいえ。当然のことです」

エリアーナは優しく微笑んだ。

「これからも、よろしくお願いしますね、セバスチャン」

「はい。この命に代えても、奥方様とルーカス様にお仕えいたします」

使用人たちへの説明会が開かれた。最初は不安そうだった彼らも、エリアーナの公平な方針を聞いて安堵した。

料理番のマルタは、給金が増額されることを知って涙を流した。

「ありがとうございます、奥方様。頑張ります」

「これからも、美味しい食事を作ってくださいね」

こうして、城の雰囲気が少しずつ変わり始めた。使用人たちは以前より活気づき、仕事に励むようになった。

ある夜、ルーカスがエリアーナに言った。

「君のおかげで、城が生き生きとしてきた」

「いいえ、皆さんが頑張ってくださっているからです」

「でも、それを引き出したのは君だ」

二人は書斎で、今後の計画を話し合った。

「城の支出は大幅に削減できました。次は、領民が豊かになる方法を考えないと」

エリアーナが言うと、ルーカスは頷いた。

「領民が豊かになれば、税収も増える。まずは農業改革から始めるべきだろう」

「実は、一つ提案があるんです」

エリアーナは少し緊張しながら言った。

「薬草の栽培はどうでしょうか」

「薬草?」

「ええ。私、トマスから薬草の知識を教わったんです。ラベンダー、カモミール、ペパーミントなど」

エリアーナは説明を続けた。

「これらは育てやすく、しかも王都で高値で売れます。換金作物として、この領地に向いていると思うんです」

ルーカスの目が輝いた。

「それは素晴らしい案だ!」

ルーカスの目が輝いた。

「君は想像以上に有能だ、エリアーナ」

その言葉に、エリアーナの胸が温かくなった。

「ありがとうございます」

「いや、本当だ。家計管理の知識も、薬草の知識も。君は、この領地にとってかけがえのない存在だ」

ルーカスは真剣な表情で彼女を見つめた。

「君に出会えて、本当に良かった」

エリアーナは、生まれて初めて、心から自分を認めてくれる人に出会った喜びを感じた。

侯爵家では、誰も彼女を認めなかった。地味だ、取り柄がない、役立たずだと言われ続けた。

でも、ここでは違う。

ルーカスは、彼女の能力を認め、感謝してくれる。

「私も、ルーカス様に出会えて良かったです」

エリアーナは微笑んだ。

「ここでなら、私も何かの役に立てる」

二人は向かい合い、互いを見つめた。

窓の外では、月が静かに輝いている。

「これから、一緒に頑張ろう」

ルーカスが手を差し出した。

「ええ」

エリアーナはその手を取った。

二人の手が握り合わされた瞬間、何か大切な絆が生まれた気がした。

城の家計は改善され、使用人たちの士気は上がり、そして新しい希望が見えてきた。

薬草栽培という、領地を救うかもしれない計画。

グレンフォード領の未来に、光が差し始めていた。

そして、エリアーナとルーカスの心にも、温かな感情が芽生え始めていた。
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