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29 大根とルルーシェラの冒険①
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さて、ルルーシェラと大根がアリアと離れていた間に何があったのか。それは、シロが見て見ぬふりをするくらいにはやらかしていたのである。
「王城の抜け道を探しますよーっ!!」
「じぶん、だいこんあしなんでーっ!!」
アリアと別れ、再びえいえいおーっと気合いを入れるルルーシェラと大根。気合いだけはじゅうぶんだった。
実はルルーシェラと出会ってから大根には劇的変化が起こっていたのだが、周りのみんなどころか大根本人もそれに気付いていない。ちなみに、決して頭の葉っぱの艶が良くなったとか瑞々しさが増えたとか。そんなのではないとだけ言っておく。
「さて、まずはどうやって王城に近付くかですね。さすがに堂々と正面突破するわけにはいかないし……というか、城の中に入り込む抜け道だとしたら城の裏側とかでしょうか?」
「じぶん、だいこんあしなんで!」
首を傾げて悩むルルーシェラに大根が任せろと言わんばかりに胸を叩いてみせた。
「え、何かいいアイデアがあるんですか?」
「じぶーん、だいこーんあしなーんで!」
そして大根は一生懸命に手足を動かしジェスチャーを加えながらルルーシェラに自分の考えを説明する事にした。
いつもならアリアが「なんとなく」で察してくれたりシロが通訳的な事をしてくれるのだが、ここにはいない。それに気付いたのはアリアと別れてからだが、アリアは忙しいしシロもアリアの側を離れないだろうから自分で頑張るしかないのだ。
大根はルルーシェラがどこまでわかってくれるかについて一抹の不安があったのだが、いつもより多く葉っぱを揺らしてジェスチャーを頑張った。
「だ、大根さん……!」
するとルルーシェラは感動したように頬を紅潮させ、大根を抱き締めたのだ。
「すごい!大根さんは大根とは思えないくらい天才な大根さんだったんですね!
確かに私の黒髪黒目は目立つかもしれないし、大根さんに至っては動く大根さんですから下手に動き回って城の周りをうろうろするのはリスクが高い……だからこその変装ですか!えぇ、令嬢のフリなら任せてください!なんといっても悪役令嬢の替え玉をやってましたから……ふふっ、まさかここであの日々が役立つなんて。それにしても、大根さんは犬の変装でいいんですか?」
なんとルルーシェラは、大根が伝えたい事を百パーセント以上に理解してくれたのだ。大根、超感動である。
「じぶん、だいこんあしなんで!」
「なるほど、大根さんは土の状況がわかったり穴が掘れるんですね!土を探るなら犬……さすがです!」
こうして、お忍びの貴族令嬢とちょっと変わった犬(?)に変装したルルーシェラと大根だったのだが……。
「待てーっ!そこの不審者~っ!!ぶひゃっ?!」
「怪しい人間を発見!奇妙な犬?いや、珍獣?……とにかく不審な女が城の周りを嗅ぎ回っていたのを発見しどぅあっ?!」
「なんでバレちゃったんでしょう?!」
「じぶん、だいこんあしなんで~っ?!」
なぜかルルーシェラと大根は城の兵士達に追われていた。さっきから大根が地面に穴を開けて次々と兵士を落として埋めているのだが、どこから湧いて出てくるのかと思うくらいに兵士は増えていった。
実は最近、例の隠し子王子があちらの国の王子になった事が極秘に通達されていた。正当な血筋であることを証明する為にも協力するようにと、きょうh……おどs……お願いしてきたのである。とにかく、辛い目にあい心労で亡くなってしまった王女を書類上だけでも正式な側妃にして、その王子をただの隠し子ではなく体が弱かった為にひっそりと療養させていた事にしたいと。決して不義の子にはさせないと、王妃の強い意志がそこにはあった。多少の無理矢理感はあるだろうが、両王家が認めたという事実があればどうとでもなるという算段だった。
だが、こちらの王家は大混乱だ。
明らかに不義の子としてその存在を隠し続けた存在が今更隣の国の正式な王子として認められるなど思いもしなかったのだ。政略的に考えれば悪い事ではないはずだが、身に覚えのある者たちは隠し子王子からの報復を恐れていたのだろう。
なんと、その混乱ぶりは混乱し過ぎて「聖獣の岩の呪いでは」なんて言い出す人間まで出てくるほどだ。ちなみにそんな呪いはない。
だが、不安はさらに不安を呼ぶものである。自分と
母親を虐げた王家を恨んでいるだろう隠し子王子が自分たちと同等の力をつけて復讐にやって来たのだと……この国の事情を知る王族達は一斉に震え上がった。
そして膨れ上がった不安は疑心暗鬼となり、あるはずのない呪いまで信じられてしまい……結果、警備が厳しくなっていたのだ。
しかも下っ端の兵士達からしたら特に詳しい説明もなく、ただ「不審者がいたらとにかく捕まえろ」とピリピリした様子で国王から言われてしまったのだ。例え相手が平凡そうな少女であろうと珍妙な犬(?)であろうと逃すわけにはいかず必死である。
「せっかく家出してきた旅人風な令嬢を装ったのに、なんで追われてるんでしょう?!大根さんだって完璧に生物っぽくしたのに……まさか動く大根だってバレたんじゃあ?!捕まったら、大根さんが解剖されちゃうーっ!あっ!」
「じぶん、だいこんあしなんでーっ!?」
必死に逃げるルルーシェラと大根。しかしその先は行き止まりで穴に落ちなかった兵士達に追い詰められてしまったのだ。
「やっと捕まえだぞ……!」
息も絶え絶えの兵士がルルーシェラに向かって手を伸ばした。その手がルルーシェラに触れようとした瞬間。
「じぶん!だーいこーんあーしなーんでぇぇぇぇぇ!!」
大根が、覚醒したかのように叫んだのだった。
「王城の抜け道を探しますよーっ!!」
「じぶん、だいこんあしなんでーっ!!」
アリアと別れ、再びえいえいおーっと気合いを入れるルルーシェラと大根。気合いだけはじゅうぶんだった。
実はルルーシェラと出会ってから大根には劇的変化が起こっていたのだが、周りのみんなどころか大根本人もそれに気付いていない。ちなみに、決して頭の葉っぱの艶が良くなったとか瑞々しさが増えたとか。そんなのではないとだけ言っておく。
「さて、まずはどうやって王城に近付くかですね。さすがに堂々と正面突破するわけにはいかないし……というか、城の中に入り込む抜け道だとしたら城の裏側とかでしょうか?」
「じぶん、だいこんあしなんで!」
首を傾げて悩むルルーシェラに大根が任せろと言わんばかりに胸を叩いてみせた。
「え、何かいいアイデアがあるんですか?」
「じぶーん、だいこーんあしなーんで!」
そして大根は一生懸命に手足を動かしジェスチャーを加えながらルルーシェラに自分の考えを説明する事にした。
いつもならアリアが「なんとなく」で察してくれたりシロが通訳的な事をしてくれるのだが、ここにはいない。それに気付いたのはアリアと別れてからだが、アリアは忙しいしシロもアリアの側を離れないだろうから自分で頑張るしかないのだ。
大根はルルーシェラがどこまでわかってくれるかについて一抹の不安があったのだが、いつもより多く葉っぱを揺らしてジェスチャーを頑張った。
「だ、大根さん……!」
するとルルーシェラは感動したように頬を紅潮させ、大根を抱き締めたのだ。
「すごい!大根さんは大根とは思えないくらい天才な大根さんだったんですね!
確かに私の黒髪黒目は目立つかもしれないし、大根さんに至っては動く大根さんですから下手に動き回って城の周りをうろうろするのはリスクが高い……だからこその変装ですか!えぇ、令嬢のフリなら任せてください!なんといっても悪役令嬢の替え玉をやってましたから……ふふっ、まさかここであの日々が役立つなんて。それにしても、大根さんは犬の変装でいいんですか?」
なんとルルーシェラは、大根が伝えたい事を百パーセント以上に理解してくれたのだ。大根、超感動である。
「じぶん、だいこんあしなんで!」
「なるほど、大根さんは土の状況がわかったり穴が掘れるんですね!土を探るなら犬……さすがです!」
こうして、お忍びの貴族令嬢とちょっと変わった犬(?)に変装したルルーシェラと大根だったのだが……。
「待てーっ!そこの不審者~っ!!ぶひゃっ?!」
「怪しい人間を発見!奇妙な犬?いや、珍獣?……とにかく不審な女が城の周りを嗅ぎ回っていたのを発見しどぅあっ?!」
「なんでバレちゃったんでしょう?!」
「じぶん、だいこんあしなんで~っ?!」
なぜかルルーシェラと大根は城の兵士達に追われていた。さっきから大根が地面に穴を開けて次々と兵士を落として埋めているのだが、どこから湧いて出てくるのかと思うくらいに兵士は増えていった。
実は最近、例の隠し子王子があちらの国の王子になった事が極秘に通達されていた。正当な血筋であることを証明する為にも協力するようにと、きょうh……おどs……お願いしてきたのである。とにかく、辛い目にあい心労で亡くなってしまった王女を書類上だけでも正式な側妃にして、その王子をただの隠し子ではなく体が弱かった為にひっそりと療養させていた事にしたいと。決して不義の子にはさせないと、王妃の強い意志がそこにはあった。多少の無理矢理感はあるだろうが、両王家が認めたという事実があればどうとでもなるという算段だった。
だが、こちらの王家は大混乱だ。
明らかに不義の子としてその存在を隠し続けた存在が今更隣の国の正式な王子として認められるなど思いもしなかったのだ。政略的に考えれば悪い事ではないはずだが、身に覚えのある者たちは隠し子王子からの報復を恐れていたのだろう。
なんと、その混乱ぶりは混乱し過ぎて「聖獣の岩の呪いでは」なんて言い出す人間まで出てくるほどだ。ちなみにそんな呪いはない。
だが、不安はさらに不安を呼ぶものである。自分と
母親を虐げた王家を恨んでいるだろう隠し子王子が自分たちと同等の力をつけて復讐にやって来たのだと……この国の事情を知る王族達は一斉に震え上がった。
そして膨れ上がった不安は疑心暗鬼となり、あるはずのない呪いまで信じられてしまい……結果、警備が厳しくなっていたのだ。
しかも下っ端の兵士達からしたら特に詳しい説明もなく、ただ「不審者がいたらとにかく捕まえろ」とピリピリした様子で国王から言われてしまったのだ。例え相手が平凡そうな少女であろうと珍妙な犬(?)であろうと逃すわけにはいかず必死である。
「せっかく家出してきた旅人風な令嬢を装ったのに、なんで追われてるんでしょう?!大根さんだって完璧に生物っぽくしたのに……まさか動く大根だってバレたんじゃあ?!捕まったら、大根さんが解剖されちゃうーっ!あっ!」
「じぶん、だいこんあしなんでーっ!?」
必死に逃げるルルーシェラと大根。しかしその先は行き止まりで穴に落ちなかった兵士達に追い詰められてしまったのだ。
「やっと捕まえだぞ……!」
息も絶え絶えの兵士がルルーシェラに向かって手を伸ばした。その手がルルーシェラに触れようとした瞬間。
「じぶん!だーいこーんあーしなーんでぇぇぇぇぇ!!」
大根が、覚醒したかのように叫んだのだった。
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