【完結】ど近眼悪役令嬢に転生しました。言っておきますが、眼鏡は顔の一部ですから!

As-me.com

文字の大きさ
30 / 36

30 大根とルルーシェラの冒険②

しおりを挟む
 ドゴン!!と、地面が縦に揺れた気がした。

 あまりの揺れの大きさに思わず身を竦ませるルルーシェラを守るように大根が立ち上がったのだ。

 そしてルルーシェラの目の前には巨大な穴が現れた。全てを飲み込むかのような、深く暗い巨大な穴が。


「「「あ」」」



 そんな言葉を残して、目の前にいたはずの兵士たちは一瞬で、姿を消したのだった。






「こ、これは大根さんが……?!だ、大根さ……!」

 これまでの穴は人間がすっぽりぴったりハマって抜け出せなくはなっていたが頭のてっぺんは見えるくらいの深さだった。しかし目の前に広がる穴はあまりに巨大で底無しに深いように見えた。恐る恐る覗いてみるがすでに落ちてしまった兵士たちの姿は確認出来ないし声も聞こえない。これでは生死も不明である。

 さすがに死人を出すわけにはいかないと慌てて大根に確認しようとするルルーシェラだったが、その大根がぐったりと倒れている姿に声を失いそうになった。

「大根さん……!どうしたんですか?!まさか、魔力を使い果たして……?!」

「……じ、ぶん……だいこ……し、な…………────」

 ルルーシェラが倒れた大根を抱き上げると、プルプルと震える腕をルルーシェラに向けた。まだ意識があることにホッとするも、頭の葉っぱはどんどん萎れていき、体にもこれまでの艶がない。まるでたくあんのように水分が抜けていき……大根の手はパタリと地に落ちた。

 ルルーシェラの危機的状態に己の最大限の能力に目覚めただろう大根だったが、大根はただの畑の妖精だ。そう、ちょっと艶があって瑞々しい大根に過ぎないのだ。せめて名前を付けてもらっていて誰かの専属妖精となれていればまた違っていたかもしれないが……。

 つまり、大根は己の力を使いすぎたのである。あれだけ体内を満たしていたアリアの魔力が空っぽになってしまったのだ。この大根はアリアの魔力から生まれた大根であり、普段はダダ漏れているアリアの魔力を勝手に吸収して動いている。

 これはアリアも知らない事実なのだが、自然から生まれた妖精とは違いそうしなければ大根は生きていけないのだ。

 しかし、今はアリアと離れてしまっている。さすがにこれだけ距離があればアリアの魔力も届かない。


 どんどん硬くなる手足に、もうアスリート走りも出来ないだろうと覚悟を決めた。一度魔力が空っぽになってしまったら名前もついていない大根妖精などすぐにただの大根になってしまうだろう。それならせめて美味しいたくあんになりたいものだ。出来ればちょっと甘めがいい。

 大根は薄れる意識の中でそんなことを考えながら、それでもこんな己と仲良くしてくれたルルーシェラを守れた事に満足もしていた。

 していたのだが……。





「大根さん!大根さん、しっかりし……て……────あれ?」


 大根の変貌に泣きながらルルーシェラが大根を抱き締めたその時だった。ルルーシェラの体が淡く輝き始め……その光が大根に吸収されていったのである。


「これは……私の魔力?え、私の中にこんな魔力が?!」

 ルルーシェラ本人もびっくりするくらいの膨大な魔力。優しい色合いをしたそれはどんどん大根に吸収されていき、シオシオになっていた大根の体は艶を取り戻し頭の葉っぱは青々と茂っていった。硬くなっていた手足は柔軟性がアップしたのか今やぐるんぐるんと動いていた。



「じぶん、だいこんあしなんでぇぇぇぇぇ!!!」



 大根がパワーアップして復活したのである。そしてひとつ違うところが……それは大根のおでこ(?)に不思議な模様が浮かび上がっていたのである。


「これは……錬成陣……。え、まさか────これって錬金術?!私の……才能?」


 これはひとつの奇跡か。

 なんとルルーシェラはこの瞬間に眠っていた才能を目覚めさせ、大根妖精の尽きかけた命を錬成したのである。空っぽだった大根の体にはルルーシェラの魔力がたっぷりと注がれ、額にはルルーシェラの錬金術による陣が刻まれた。これはもう、大根にとったら契約以外のなにものでもない。

 そう、大根は念願の主人を手に入れたのであった────。














 ***






「そんなこんなで、大根さんの新能力〈巨大な穴を掘る〉で手当たり次第に掘ったら隠された秘密の入口を見つけました!だいぶ木の根っこが絡まっていたんで、さすがにそれは自分たちの手で取り除いたんで時間がかかっちゃったんですけど……ちゃんと城の内部に繋がっているのも確認してきましたよ!」

「じふん、だいこんあしなんで!」

 どこからどこまでに驚いていいのかわからずアリアは困惑していたが、シロはため息をついていた。

「ちょ、ちょっと待って……その前にその巨大な穴はどうしたの?落ちた兵士たちは……」

「穴はもちろん埋めましたけど……兵士たちは助け出しましたよ!────シロさんが!「シロが?!いつの間に?!」それが、どこからともなくシロさんがお仲間の鳥さんたちを連れてきてくれまして、穴に落ちてった兵士を拾って持っていってくれたんです!いやぁ、面倒くさくなったから穴に食料を放り込んで逃げようかなって悩んでたので助かりました!」

「じぶん、だいこんあしなんで!」

「……面倒くさくなったって……。なんだか酔ってるみたいな変なハイテンションになってるみたいだけど大丈夫なの?」


「ピィ……」

 やれやれと首を横に振るシロだったが、結局は気になって様子を見に行っていたようだった。そして、せっかく悪いことを考えていたのを内緒にしていたのに自らあっけらかんとバラすルルーシェラにも呆れている。どうやら急に魔力に目覚めたのと偶然とはいえ妖精と契約してしまったことで感情がおかしなことになっているようだった。その証拠にルルーシェラはアリアに土下座をして「アリアさん、どうか大根さんを私にください!錬成陣も消えないし、契約しちゃった責任をとります!」とまるで花嫁をもらうかのように大興奮している。ちなみに大根も土下座している。

「えー、あー……まぁ、大根本人がいいなら。どうぞ」


 こうして大根は自分だけの主人を手に入れたのだった。




しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

笑顔が苦手な元公爵令嬢ですが、路地裏のパン屋さんで人生やり直し中です。~「悪役」なんて、もう言わせない!~

虹湖🌈
ファンタジー
不器用だっていいじゃない。焼きたてのパンがあればきっと明日は笑えるから 「悪役令嬢」と蔑まれ、婚約者にも捨てられた公爵令嬢フィオナ。彼女の唯一の慰めは、前世でパン職人だった頃の淡い記憶。居場所を失くした彼女が選んだのは、華やかな貴族社会とは無縁の、小さなパン屋を開くことだった。 人付き合いは苦手、笑顔もぎこちない。おまけにパン作りは素人も同然。 「私に、できるのだろうか……」 それでも、彼女が心を込めて焼き上げるパンは、なぜか人の心を惹きつける。幼馴染のツッコミ、忠実な執事のサポート、そしてパンの師匠との出会い。少しずつ開いていくフィオナの心と、広がっていく温かい人の輪。 これは、どん底から立ち上がり、自分の「好き」を信じて一歩ずつ前に進む少女の物語。彼女の焼くパンのように、優しくて、ちょっぴり切なくて、心がじんわり温かくなるお話です。読後、きっとあなたも誰かのために何かを作りたくなるはず。

『捨てられ令嬢は、孤高の公爵に娶られる』

ヤオサカ
恋愛
この物語は完結しました。 婚約者に裏切られ、社交界の嘲笑の的となった侯爵令嬢マリアンヌ・ノアール。 笑わず、涙も見せずに誇りを貫く彼女の前に現れたのは、「孤高の公爵」と噂される男、レオン・ド・ベルヴァール。 名ばかりの契約婚約から始まったふたりの関係は、静かな会話と沈黙の中で、少しずつ心を通わせていく――。 偽りの婚約の先に、ほんとうの愛は芽吹くのか。これは、誇り高き令嬢と不器用な公爵の再生と愛の物語。

悪役令嬢は殿下の素顔がお好き

香澄京耶
恋愛
王太子の婚約者アメリアは、 公衆の場で婚約破棄される夢を見たことをきっかけに、自ら婚約解消を申し出る。 だが追い詰められた王太子、ギルバートは弱さと本心を曝け出してしまい――。 悪役令嬢と、素直になれない王太子の“逆転”ラブコメディ。

婚約破棄!ついでに王子をどん底に突き落とす。

鏡おもち
恋愛
公爵令嬢パルメは、王立学院のパーティーで第一王子リュントから公開婚約破棄を突きつけられる。しかし、周囲の同情をよそにパルメは歓喜した。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜

まほりろ
恋愛
ムーンライトノベルズで日間総合1位、週間総合2位になった作品です。 【完結】「ディアーナ・フォークト! 貴様との婚約を破棄する!!」見目麗しい第二王子にそう言い渡されたとき、ディアーナは騎士団長の子息に取り押さえられ膝をついていた。王子の側近により読み上げられるディアーナの罪状。第二王子の腕の中で幸せそうに微笑むヒロインのユリア。悪役令嬢のディアーナはユリアに斬りかかり、義理の兄で第二王子の近衛隊のフリードに斬り殺される。 三日月杏奈は漫画好きの普通の女の子、バナナの皮で滑って転んで死んだ。享年二十歳。 目を覚ました杏奈は少女漫画「クリンゲル学園の天使」悪役令嬢ディアーナ・フォークト転生していた。破滅フラグを壊す為に義理の兄と仲良くしようとしたら溺愛されました。 私の事を大切にしてくれるお義兄様と仲良く暮らします。王子殿下私のことは放っておいてください。 ムーンライトノベルズにも投稿しています。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

悪役令嬢発溺愛幼女着

みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」  わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。  響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。  わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。  冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。  どうして。  誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。

処理中です...