29 / 36
29 大根とルルーシェラの冒険①
しおりを挟む
さて、ルルーシェラと大根がアリアと離れていた間に何があったのか。それは、シロが見て見ぬふりをするくらいにはやらかしていたのである。
「王城の抜け道を探しますよーっ!!」
「じぶん、だいこんあしなんでーっ!!」
アリアと別れ、再びえいえいおーっと気合いを入れるルルーシェラと大根。気合いだけはじゅうぶんだった。
実はルルーシェラと出会ってから大根には劇的変化が起こっていたのだが、周りのみんなどころか大根本人もそれに気付いていない。ちなみに、決して頭の葉っぱの艶が良くなったとか瑞々しさが増えたとか。そんなのではないとだけ言っておく。
「さて、まずはどうやって王城に近付くかですね。さすがに堂々と正面突破するわけにはいかないし……というか、城の中に入り込む抜け道だとしたら城の裏側とかでしょうか?」
「じぶん、だいこんあしなんで!」
首を傾げて悩むルルーシェラに大根が任せろと言わんばかりに胸を叩いてみせた。
「え、何かいいアイデアがあるんですか?」
「じぶーん、だいこーんあしなーんで!」
そして大根は一生懸命に手足を動かしジェスチャーを加えながらルルーシェラに自分の考えを説明する事にした。
いつもならアリアが「なんとなく」で察してくれたりシロが通訳的な事をしてくれるのだが、ここにはいない。それに気付いたのはアリアと別れてからだが、アリアは忙しいしシロもアリアの側を離れないだろうから自分で頑張るしかないのだ。
大根はルルーシェラがどこまでわかってくれるかについて一抹の不安があったのだが、いつもより多く葉っぱを揺らしてジェスチャーを頑張った。
「だ、大根さん……!」
するとルルーシェラは感動したように頬を紅潮させ、大根を抱き締めたのだ。
「すごい!大根さんは大根とは思えないくらい天才な大根さんだったんですね!
確かに私の黒髪黒目は目立つかもしれないし、大根さんに至っては動く大根さんですから下手に動き回って城の周りをうろうろするのはリスクが高い……だからこその変装ですか!えぇ、令嬢のフリなら任せてください!なんといっても悪役令嬢の替え玉をやってましたから……ふふっ、まさかここであの日々が役立つなんて。それにしても、大根さんは犬の変装でいいんですか?」
なんとルルーシェラは、大根が伝えたい事を百パーセント以上に理解してくれたのだ。大根、超感動である。
「じぶん、だいこんあしなんで!」
「なるほど、大根さんは土の状況がわかったり穴が掘れるんですね!土を探るなら犬……さすがです!」
こうして、お忍びの貴族令嬢とちょっと変わった犬(?)に変装したルルーシェラと大根だったのだが……。
「待てーっ!そこの不審者~っ!!ぶひゃっ?!」
「怪しい人間を発見!奇妙な犬?いや、珍獣?……とにかく不審な女が城の周りを嗅ぎ回っていたのを発見しどぅあっ?!」
「なんでバレちゃったんでしょう?!」
「じぶん、だいこんあしなんで~っ?!」
なぜかルルーシェラと大根は城の兵士達に追われていた。さっきから大根が地面に穴を開けて次々と兵士を落として埋めているのだが、どこから湧いて出てくるのかと思うくらいに兵士は増えていった。
実は最近、例の隠し子王子があちらの国の王子になった事が極秘に通達されていた。正当な血筋であることを証明する為にも協力するようにと、きょうh……おどs……お願いしてきたのである。とにかく、辛い目にあい心労で亡くなってしまった王女を書類上だけでも正式な側妃にして、その王子をただの隠し子ではなく体が弱かった為にひっそりと療養させていた事にしたいと。決して不義の子にはさせないと、王妃の強い意志がそこにはあった。多少の無理矢理感はあるだろうが、両王家が認めたという事実があればどうとでもなるという算段だった。
だが、こちらの王家は大混乱だ。
明らかに不義の子としてその存在を隠し続けた存在が今更隣の国の正式な王子として認められるなど思いもしなかったのだ。政略的に考えれば悪い事ではないはずだが、身に覚えのある者たちは隠し子王子からの報復を恐れていたのだろう。
なんと、その混乱ぶりは混乱し過ぎて「聖獣の岩の呪いでは」なんて言い出す人間まで出てくるほどだ。ちなみにそんな呪いはない。
だが、不安はさらに不安を呼ぶものである。自分と
母親を虐げた王家を恨んでいるだろう隠し子王子が自分たちと同等の力をつけて復讐にやって来たのだと……この国の事情を知る王族達は一斉に震え上がった。
そして膨れ上がった不安は疑心暗鬼となり、あるはずのない呪いまで信じられてしまい……結果、警備が厳しくなっていたのだ。
しかも下っ端の兵士達からしたら特に詳しい説明もなく、ただ「不審者がいたらとにかく捕まえろ」とピリピリした様子で国王から言われてしまったのだ。例え相手が平凡そうな少女であろうと珍妙な犬(?)であろうと逃すわけにはいかず必死である。
「せっかく家出してきた旅人風な令嬢を装ったのに、なんで追われてるんでしょう?!大根さんだって完璧に生物っぽくしたのに……まさか動く大根だってバレたんじゃあ?!捕まったら、大根さんが解剖されちゃうーっ!あっ!」
「じぶん、だいこんあしなんでーっ!?」
必死に逃げるルルーシェラと大根。しかしその先は行き止まりで穴に落ちなかった兵士達に追い詰められてしまったのだ。
「やっと捕まえだぞ……!」
息も絶え絶えの兵士がルルーシェラに向かって手を伸ばした。その手がルルーシェラに触れようとした瞬間。
「じぶん!だーいこーんあーしなーんでぇぇぇぇぇ!!」
大根が、覚醒したかのように叫んだのだった。
「王城の抜け道を探しますよーっ!!」
「じぶん、だいこんあしなんでーっ!!」
アリアと別れ、再びえいえいおーっと気合いを入れるルルーシェラと大根。気合いだけはじゅうぶんだった。
実はルルーシェラと出会ってから大根には劇的変化が起こっていたのだが、周りのみんなどころか大根本人もそれに気付いていない。ちなみに、決して頭の葉っぱの艶が良くなったとか瑞々しさが増えたとか。そんなのではないとだけ言っておく。
「さて、まずはどうやって王城に近付くかですね。さすがに堂々と正面突破するわけにはいかないし……というか、城の中に入り込む抜け道だとしたら城の裏側とかでしょうか?」
「じぶん、だいこんあしなんで!」
首を傾げて悩むルルーシェラに大根が任せろと言わんばかりに胸を叩いてみせた。
「え、何かいいアイデアがあるんですか?」
「じぶーん、だいこーんあしなーんで!」
そして大根は一生懸命に手足を動かしジェスチャーを加えながらルルーシェラに自分の考えを説明する事にした。
いつもならアリアが「なんとなく」で察してくれたりシロが通訳的な事をしてくれるのだが、ここにはいない。それに気付いたのはアリアと別れてからだが、アリアは忙しいしシロもアリアの側を離れないだろうから自分で頑張るしかないのだ。
大根はルルーシェラがどこまでわかってくれるかについて一抹の不安があったのだが、いつもより多く葉っぱを揺らしてジェスチャーを頑張った。
「だ、大根さん……!」
するとルルーシェラは感動したように頬を紅潮させ、大根を抱き締めたのだ。
「すごい!大根さんは大根とは思えないくらい天才な大根さんだったんですね!
確かに私の黒髪黒目は目立つかもしれないし、大根さんに至っては動く大根さんですから下手に動き回って城の周りをうろうろするのはリスクが高い……だからこその変装ですか!えぇ、令嬢のフリなら任せてください!なんといっても悪役令嬢の替え玉をやってましたから……ふふっ、まさかここであの日々が役立つなんて。それにしても、大根さんは犬の変装でいいんですか?」
なんとルルーシェラは、大根が伝えたい事を百パーセント以上に理解してくれたのだ。大根、超感動である。
「じぶん、だいこんあしなんで!」
「なるほど、大根さんは土の状況がわかったり穴が掘れるんですね!土を探るなら犬……さすがです!」
こうして、お忍びの貴族令嬢とちょっと変わった犬(?)に変装したルルーシェラと大根だったのだが……。
「待てーっ!そこの不審者~っ!!ぶひゃっ?!」
「怪しい人間を発見!奇妙な犬?いや、珍獣?……とにかく不審な女が城の周りを嗅ぎ回っていたのを発見しどぅあっ?!」
「なんでバレちゃったんでしょう?!」
「じぶん、だいこんあしなんで~っ?!」
なぜかルルーシェラと大根は城の兵士達に追われていた。さっきから大根が地面に穴を開けて次々と兵士を落として埋めているのだが、どこから湧いて出てくるのかと思うくらいに兵士は増えていった。
実は最近、例の隠し子王子があちらの国の王子になった事が極秘に通達されていた。正当な血筋であることを証明する為にも協力するようにと、きょうh……おどs……お願いしてきたのである。とにかく、辛い目にあい心労で亡くなってしまった王女を書類上だけでも正式な側妃にして、その王子をただの隠し子ではなく体が弱かった為にひっそりと療養させていた事にしたいと。決して不義の子にはさせないと、王妃の強い意志がそこにはあった。多少の無理矢理感はあるだろうが、両王家が認めたという事実があればどうとでもなるという算段だった。
だが、こちらの王家は大混乱だ。
明らかに不義の子としてその存在を隠し続けた存在が今更隣の国の正式な王子として認められるなど思いもしなかったのだ。政略的に考えれば悪い事ではないはずだが、身に覚えのある者たちは隠し子王子からの報復を恐れていたのだろう。
なんと、その混乱ぶりは混乱し過ぎて「聖獣の岩の呪いでは」なんて言い出す人間まで出てくるほどだ。ちなみにそんな呪いはない。
だが、不安はさらに不安を呼ぶものである。自分と
母親を虐げた王家を恨んでいるだろう隠し子王子が自分たちと同等の力をつけて復讐にやって来たのだと……この国の事情を知る王族達は一斉に震え上がった。
そして膨れ上がった不安は疑心暗鬼となり、あるはずのない呪いまで信じられてしまい……結果、警備が厳しくなっていたのだ。
しかも下っ端の兵士達からしたら特に詳しい説明もなく、ただ「不審者がいたらとにかく捕まえろ」とピリピリした様子で国王から言われてしまったのだ。例え相手が平凡そうな少女であろうと珍妙な犬(?)であろうと逃すわけにはいかず必死である。
「せっかく家出してきた旅人風な令嬢を装ったのに、なんで追われてるんでしょう?!大根さんだって完璧に生物っぽくしたのに……まさか動く大根だってバレたんじゃあ?!捕まったら、大根さんが解剖されちゃうーっ!あっ!」
「じぶん、だいこんあしなんでーっ!?」
必死に逃げるルルーシェラと大根。しかしその先は行き止まりで穴に落ちなかった兵士達に追い詰められてしまったのだ。
「やっと捕まえだぞ……!」
息も絶え絶えの兵士がルルーシェラに向かって手を伸ばした。その手がルルーシェラに触れようとした瞬間。
「じぶん!だーいこーんあーしなーんでぇぇぇぇぇ!!」
大根が、覚醒したかのように叫んだのだった。
17
あなたにおすすめの小説
たいした苦悩じゃないのよね?
ぽんぽこ狸
恋愛
シェリルは、朝の日課である魔力の奉納をおこなった。
潤沢に満ちていた魔力はあっという間に吸い出され、すっからかんになって体が酷く重たくなり、足元はふらつき気分も悪い。
それでもこれはとても重要な役目であり、体にどれだけ負担がかかろうとも唯一無二の人々を守ることができる仕事だった。
けれども婚約者であるアルバートは、体が自由に動かない苦痛もシェリルの気持ちも理解せずに、幼いころからやっているという事実を盾にして「たいしたことない癖に、大袈裟だ」と罵る。
彼の友人は、シェリルの仕事に理解を示してアルバートを窘めようとするが怒鳴り散らして聞く耳を持たない。その様子を見てやっとシェリルは彼の真意に気がついたのだった。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
「僕が望んだのは、あなたではありません」と婚約破棄をされたのに、どうしてそんなに大切にするのでしょう。【短編集】
長岡更紗
恋愛
異世界恋愛短編詰め合わせです。
気になったものだけでもおつまみください!
『君を買いたいと言われましたが、私は売り物ではありません』
『悪役令嬢は、友の多幸を望むのか』
『わたくしでは、お姉様の身代わりになりませんか?』
『婿に来るはずだった第五王子と婚約破棄します! その後にお見合いさせられた副騎士団長と結婚することになりましたが、溺愛されて幸せです。 』
『婚約破棄された悪役令嬢だけど、騎士団長に溺愛されるルートは可能ですか?』
他多数。
他サイトにも重複投稿しています。
悪役令嬢ベアトリスの仁義なき恩返し~悪女の役目は終えましたのであとは好きにやらせていただきます~
糸烏 四季乃
恋愛
「ベアトリス・ガルブレイス公爵令嬢との婚約を破棄する!」
「殿下、その言葉、七年お待ちしておりました」
第二皇子の婚約者であるベアトリスは、皇子の本気の恋を邪魔する悪女として日々蔑ろにされている。しかし皇子の護衛であるナイジェルだけは、いつもベアトリスの味方をしてくれていた。
皇子との婚約が解消され自由を手に入れたベアトリスは、いつも救いの手を差し伸べてくれたナイジェルに恩返しを始める! ただ、長年悪女を演じてきたベアトリスの物事の判断基準は、一般の令嬢のそれとかなりズレている為になかなかナイジェルに恩返しを受け入れてもらえない。それでもどうしてもナイジェルに恩返しがしたい。このドッキンコドッキンコと高鳴る胸の鼓動を必死に抑え、ベアトリスは今日もナイジェルへの恩返しの為奮闘する!
規格外で少々常識外れの令嬢と、一途な騎士との溺愛ラブコメディ(!?)
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
悪役令嬢に転生!?わたくし取り急ぎ王太子殿下との婚約を阻止して、婚約者探しを始めますわ
春ことのは
恋愛
深夜、高熱に魘されて目覚めると公爵令嬢エリザベス・グリサリオに転生していた。
エリザベスって…もしかしてあのベストセラー小説「悠久の麗しき薔薇に捧ぐシリーズ」に出てくる悪役令嬢!?
この先、王太子殿下の婚約者に選ばれ、この身を王家に捧げるべく血の滲むような努力をしても、結局は平民出身のヒロインに殿下の心を奪われてしまうなんて…
しかも婚約を破棄されて毒殺?
わたくし、そんな未来はご免ですわ!
取り急ぎ殿下との婚約を阻止して、わが公爵家に縁のある殿方達から婚約者を探さなくては…。
__________
※2023.3.21 HOTランキングで11位に入らせて頂きました。
読んでくださった皆様のお陰です!
本当にありがとうございました。
※お気に入り登録やしおりをありがとうございます。
とても励みになっています!
※この作品は小説家になろう様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる