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31 ど近眼魔女と落ちこぼれ魔女
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「うーん。私の魔力って体の外に向かってダダ漏れしてるらしいから……もしかして、それがルルーシェラの刺激になってたのかしら?」
「さすがは“森の魔女”ですね!もう、アリアさんの事をお師匠様と呼ばせていただきます!」
「じぶん、だいこんあしなんで~!」
泥だらけだったルルーシェラには大根はとりあえずお風呂に入ってもらい、発見したという例の聖獣の岩への行き道について詳しく聞きたいと思ったのだが……ルルーシェラはあれからずっと浮足立ってそわそわとしている。
これまでの悩みはなんだったのか。というくらいあっさりと才能に目覚めたルルーシェラは未だに(魔力の)ほろ酔い状態であった。
「……シロ、どう思う?」
「ピィ」
こくりと頷くシロはやや呆れ気味だ。やっぱり私の魔力が原因なんだろうか?
「んふふ、お師匠様の魔力は規格外なんですねぇ!なにせ、私の問題をこんな簡単に解決しちゃうんてすもん!」
「え?」
「だって……私はずっと落ちこぼれで、魔力なんて欠片も持ってないと思ってました。それでも藁にも縋る思いでやってきたら、こんなにすぐ解決するなんて夢みたいですよ!お師匠様のおかげで双子の姉を救うことが出来ますし、私を馬鹿にした王子や国王をギャフンと言わせられます。このご恩をお返しするためにも、絶対に神獣の岩の所へ案内しますから!」
にっこりと笑うルルーシェラには変な思惑など感じられない。ひたすらに自分の気持ちに素直なルルーシェラの瞳がキラキラしていて、なんだか眩しく感じてしまうほどだ。色は全然違うのに、なぜかコハクの瞳を思い出してしまう。
……なんか、ちょっとでも警戒してたのが馬鹿みたいだわ。
絆された訳では無いが、疑うことはやめることにした。それに妖精である大根があんなに懐いているのだ、悪い人間であるはずがない……と思う。別にコハクにちょっと似てるからとか、師匠って思われるが嬉しいとか、そんなのでない。だんじてない。
ただ、今の状況は私にとって嬉しいことばかりであるのは確かだ。コハクを救う唯一の手がかりを手に入れる事が出来たし、大根もちゃんと主人を見つけることが出来たのだ。これからあの森で大根のアスリート走りを見れなくなると思うと少しだけ残念……とも思わなくもないけれど、大根が主人を見つけて幸せになる方が大切だろう。私は大根の主人にはなってあげられないのだから。
───森のみんなは寂しがるかもしれないわね。まぁ、ルルーシェラなら気軽に遊びに来そうだけど。そのときは……ちゃんと歓迎してあげてもいい、かな。一応“師匠”だし?なーんて……。
「ピィ」
なぜかシロがニヤニヤ(?)しながら私の頭上に留まったが、なんだか恥ずかしくなってしまったのだった。
*****
そうして翌日。私は、完成させた薬を持ってルルーシェラたちと共に秘密の通路を通って神獣の岩の目の前へとやってくることができた。
「────っ」
神獣の岩は想像とは違っていて、やたら大きなゴツゴツとした岩石の塊のような岩だった。でも、確かに微かではあるが確かに“何か”を感じたのである。
「年月のせいでこうなったのか、元からこうだったのかはわかりませんけど……この岩が目的の物で間違いないはずです!」
「じぶん、だいこんあしなんで!」
「……ええ、きっと間違いないわ。私も“何か”感じるもの……」
この岩に薬をかけて、聖霊が目覚めれば今度こそコハクを助けることが出来る。私は覚悟を決めて完成したばかりの薬をカバンから取り出した。
もしもこの薬が効かなかったら?それに、効果があったとしても聖獣がコハクの聖霊になってくれなかったら……。そんな不安が一瞬脳裏をよぎるが、それでもやるしか道はないのだ。
「いくわよ……!」
私が薬を握った手を上に掲げたその瞬間────。
「お師匠様、危ない!!」
私に覆いかぶさるようにぶつかってきたルルーシェラが、赤く染まった。
「ルルーシェラ……?!」
私達はいつの間にか城の兵士たちに見つかってしまっていて包囲されていたのだ。兵士の撃った矢がルルーシェラの背中に深々と刺さっている。
「……ごめんなさい、錬金術はまだ慣れてなくて……咄嗟に体が……。お師匠様、早くその薬を…………」
「でもルルーシェラが……!」
すると大根が「じぶん、だいこんあしなんで!」とルルーシェラを庇うように前に出ると、額の錬成陣が強い光を発しバリアのように膜を作って私たちを包みこんだのだ。
「お師匠様の願いは、必ず叶えると約束しました……。私も、これでも魔女ですから……!」
「じぶん、だいこんあしなんで!」
「ピィ!」
シロも大根に手を貸して魔力を補っている。そして、みんなが私を見たのだ。
「お師匠様が成し遂げるまで、絶対にこの場は守ります!」
「───ありがとう!」
だから私は、後ろを振り返らずに前だけを見た。コハクを救うために知り合って日の浅いルルーシェラまでもがこんなに頑張ってくれているのだから……。
「……お願い、目覚めて!」
私はありったけの薬を岩にぶちまけた。奇跡を信じて────。
「さすがは“森の魔女”ですね!もう、アリアさんの事をお師匠様と呼ばせていただきます!」
「じぶん、だいこんあしなんで~!」
泥だらけだったルルーシェラには大根はとりあえずお風呂に入ってもらい、発見したという例の聖獣の岩への行き道について詳しく聞きたいと思ったのだが……ルルーシェラはあれからずっと浮足立ってそわそわとしている。
これまでの悩みはなんだったのか。というくらいあっさりと才能に目覚めたルルーシェラは未だに(魔力の)ほろ酔い状態であった。
「……シロ、どう思う?」
「ピィ」
こくりと頷くシロはやや呆れ気味だ。やっぱり私の魔力が原因なんだろうか?
「んふふ、お師匠様の魔力は規格外なんですねぇ!なにせ、私の問題をこんな簡単に解決しちゃうんてすもん!」
「え?」
「だって……私はずっと落ちこぼれで、魔力なんて欠片も持ってないと思ってました。それでも藁にも縋る思いでやってきたら、こんなにすぐ解決するなんて夢みたいですよ!お師匠様のおかげで双子の姉を救うことが出来ますし、私を馬鹿にした王子や国王をギャフンと言わせられます。このご恩をお返しするためにも、絶対に神獣の岩の所へ案内しますから!」
にっこりと笑うルルーシェラには変な思惑など感じられない。ひたすらに自分の気持ちに素直なルルーシェラの瞳がキラキラしていて、なんだか眩しく感じてしまうほどだ。色は全然違うのに、なぜかコハクの瞳を思い出してしまう。
……なんか、ちょっとでも警戒してたのが馬鹿みたいだわ。
絆された訳では無いが、疑うことはやめることにした。それに妖精である大根があんなに懐いているのだ、悪い人間であるはずがない……と思う。別にコハクにちょっと似てるからとか、師匠って思われるが嬉しいとか、そんなのでない。だんじてない。
ただ、今の状況は私にとって嬉しいことばかりであるのは確かだ。コハクを救う唯一の手がかりを手に入れる事が出来たし、大根もちゃんと主人を見つけることが出来たのだ。これからあの森で大根のアスリート走りを見れなくなると思うと少しだけ残念……とも思わなくもないけれど、大根が主人を見つけて幸せになる方が大切だろう。私は大根の主人にはなってあげられないのだから。
───森のみんなは寂しがるかもしれないわね。まぁ、ルルーシェラなら気軽に遊びに来そうだけど。そのときは……ちゃんと歓迎してあげてもいい、かな。一応“師匠”だし?なーんて……。
「ピィ」
なぜかシロがニヤニヤ(?)しながら私の頭上に留まったが、なんだか恥ずかしくなってしまったのだった。
*****
そうして翌日。私は、完成させた薬を持ってルルーシェラたちと共に秘密の通路を通って神獣の岩の目の前へとやってくることができた。
「────っ」
神獣の岩は想像とは違っていて、やたら大きなゴツゴツとした岩石の塊のような岩だった。でも、確かに微かではあるが確かに“何か”を感じたのである。
「年月のせいでこうなったのか、元からこうだったのかはわかりませんけど……この岩が目的の物で間違いないはずです!」
「じぶん、だいこんあしなんで!」
「……ええ、きっと間違いないわ。私も“何か”感じるもの……」
この岩に薬をかけて、聖霊が目覚めれば今度こそコハクを助けることが出来る。私は覚悟を決めて完成したばかりの薬をカバンから取り出した。
もしもこの薬が効かなかったら?それに、効果があったとしても聖獣がコハクの聖霊になってくれなかったら……。そんな不安が一瞬脳裏をよぎるが、それでもやるしか道はないのだ。
「いくわよ……!」
私が薬を握った手を上に掲げたその瞬間────。
「お師匠様、危ない!!」
私に覆いかぶさるようにぶつかってきたルルーシェラが、赤く染まった。
「ルルーシェラ……?!」
私達はいつの間にか城の兵士たちに見つかってしまっていて包囲されていたのだ。兵士の撃った矢がルルーシェラの背中に深々と刺さっている。
「……ごめんなさい、錬金術はまだ慣れてなくて……咄嗟に体が……。お師匠様、早くその薬を…………」
「でもルルーシェラが……!」
すると大根が「じぶん、だいこんあしなんで!」とルルーシェラを庇うように前に出ると、額の錬成陣が強い光を発しバリアのように膜を作って私たちを包みこんだのだ。
「お師匠様の願いは、必ず叶えると約束しました……。私も、これでも魔女ですから……!」
「じぶん、だいこんあしなんで!」
「ピィ!」
シロも大根に手を貸して魔力を補っている。そして、みんなが私を見たのだ。
「お師匠様が成し遂げるまで、絶対にこの場は守ります!」
「───ありがとう!」
だから私は、後ろを振り返らずに前だけを見た。コハクを救うために知り合って日の浅いルルーシェラまでもがこんなに頑張ってくれているのだから……。
「……お願い、目覚めて!」
私はありったけの薬を岩にぶちまけた。奇跡を信じて────。
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