7 / 25
7話
しおりを挟む
そしてようやくテスト当日。
案の定、筋肉痛はあるが動けないほどではない。
「おー、今日はちゃんと起きたんだな」
「あんな時間まで寝てたのあれが初めてだよ」
ルカと一緒にテスト会場へ向かった。
会場といっても学校の敷地内で運動場のようなところだ。
すでに多くの生徒が集まっている。
時間になると先生らしき人物の声が響いた。
「みなさん、時間になりました。これからテストを開始いたします。今回のテスト内容はこちらです」
指をさした方へ全員が顔を向ける。
そこには魔道具の鳥がふわふわと不規則に飛んでいた。
主に子供のおもちゃとして販売されているものだ。
魔力を込めると飛ぶ仕組みになっている。
子供の魔力操作の練習なんかにも使われている一般的なおもちゃ。
「これを魔法で撃ち落としていただきます」
その言葉に周りがざわざわと騒ぎだした。
「今回のテストは難易度高めだな。もしかしたらクラス4つとかになるかもな」
隣のルカも少し険しい顔つきをしている。
これ高めなの?でも兄さんの時は止まってる的みたいだったしそうなのかな?
「4クラスになることもあるの?」
「ほとんどないけどな。今年は大物が多いからお近づきになりたい奴が多いんじゃないか?」
ふーん。そんなものなのか。
「名前を呼ばれた方からこちらへお願いします」
早速テストが開始された。
2人の先生が各1人ずつ見るようだ。
これは時間がかかりそう。
でも他の人の魔法が見れるし退屈はしないか。
そう思っていたのだが、思ったより魔法のレベルが低いような気がする。
今のところ、撃ち落とせていない者の方が多いんじゃないだろうか。
うーん....。これはどうしたものか。
動く物を撃ち落とす練習ならずっとしていたのでできると思う。
けど、この中であっさり撃ち落としてしまうとなんだか目立ちそうな気もする。
目立つことは極力避けたいし、どうしようか。
ただ、昨日行われたテストがどれだけのレベルだったのかわからない以上、手を抜くのもちょっと怖い。
ま、いっか。
1番嫌なのはイケボが聞けなくなることだし。
いつも通りでいこう。
そう決心した直後、歓声があがった。
「フィル、大物のお出ましだ」
ルカが顎で示す方を見てみると3人の人影が見えた。
げっ。
攻略相手の3人だ。
金髪に碧眼でいかにも王子様です、といった風貌のカイル・ユグドール。
胸ほどまである茶髪を左側で結い、エメラルドグリーンの瞳に眼鏡をかけているレミオラ・クロスフィード。
そして黒髪碧眼のイケボ、ベルトレッド・アレイシス。
慌てて視線を逸らす。
目が合った、ような気がしたがきっと気のせいだ。
ライブで目が合ったと錯覚するアレと同じ。
「フィルローゼ・マクファイン」
ようやく名前を呼ばれた。
「フィル、頑張れよ!」
「うん。ありがとう」
視線が3人に集まっているから目立たなくてちょうどいいかもしれない。
「それでは、始めてください」
右腕を鳥に真っ直ぐ向け、親指と人差し指以外を折りたたむ。
銃のように構えたほうがイメージもしやすいし、狙いやすい。
狙いを定め、風の弾を放った。
ガシャン!
音もなく的中したおもちゃの鳥は音を立てて地面に落ちた。
撃ち落とした鳥を回収して先生に渡すが受け取ってくれない。
なんだかあんなにうるさかった周りも、少し静かになった気がする。
あれ?
「あの、駄目でしたか?」
声をかけるとようやく反応があった。
「あ、いえ。すみません。大丈夫です」
テストが終わった人はそのまま他の人の見学をするなり寮に戻るなり自由なので、邪魔にならないような所で見学しようと人だかりから抜けると兄の姿を見つけた。
「兄さん!」
「フィル、お疲れ様。見てたよ。すごいじゃないか」
にっこりと笑って頭を撫でてくれた。
「兄さんのアドバイスのお陰です!」
「それはよかった。この後はどうする?寮に戻ってゆっくりするかい?」
「いえ。ルカがまだなので。あと他の方も見たいです」
主人公のアレン・スピナーと幼なじみのラーフエル・トライトンも見ておきたい。
「.....そうか、早くここから移動したかったけど....。仕方ないね」
「なにか用事ですか?」
「いや、いいんだ。私がついてるからね」
「?」
兄さんがなにを言っているのか理解できなかったがルカの名前が呼ばれたのでそちらに意識を向けた。
ルカは右手に槍のような先の尖った氷の棒を作るとそれを鳥に向かって投げつけた。
ガキィン!
よし!
見事命中!
「ルカ!こっちこっち!」
キョロキョロしているルカを手を上げて呼んだ。
「フィル!お前すごいな!あれどうやったんだよ!」
両肩を掴まれぐいっと近づいてきた。
うおっ。なんか興奮してません?
落ち着いて、と言う前に兄さんが「近い」と一言。
ルカは両肩からばっと手を離して一歩下がった。
「あー、お兄さん居たんすね。失礼しました」
「君に兄と呼ばれたくはない」
「ちょ、兄さん!?」
普段はそんな意地悪なことを言わないのにどうしたのだろう?
「ルカ、シュレイツ兄さんだよ。兄さん、隣の部屋で友人のルーカスです」
うーん....。なんか空気悪くないか?
握手をするわけでもなくお互いにこっと笑っただけだ。
その笑顔もなんだか怖い。
「えーっと、ルカはこの後どうする?俺と兄さんはまだ少し見ていくつもりなんだけど....」
「じゃあ俺も見ていこうかな」
......。
なんか兄さんから舌打ちが聞こえたような気がしたんだけど.....。気のせいだよね?
「君は空気が読めないタイプなのかな?」
「ええ、よく言われます」
2人ともにこにこしているのに火花が散っているように見える。
えええええー。
なにこれ。どういう状況?俺の居ないところでなんかあった?
どうしたもんかと悩んでいたけどアレン・スピナーの名前が呼ばれたので一旦無視した。
違いますよ?決して面倒だからとかじゃありません。
案の定、筋肉痛はあるが動けないほどではない。
「おー、今日はちゃんと起きたんだな」
「あんな時間まで寝てたのあれが初めてだよ」
ルカと一緒にテスト会場へ向かった。
会場といっても学校の敷地内で運動場のようなところだ。
すでに多くの生徒が集まっている。
時間になると先生らしき人物の声が響いた。
「みなさん、時間になりました。これからテストを開始いたします。今回のテスト内容はこちらです」
指をさした方へ全員が顔を向ける。
そこには魔道具の鳥がふわふわと不規則に飛んでいた。
主に子供のおもちゃとして販売されているものだ。
魔力を込めると飛ぶ仕組みになっている。
子供の魔力操作の練習なんかにも使われている一般的なおもちゃ。
「これを魔法で撃ち落としていただきます」
その言葉に周りがざわざわと騒ぎだした。
「今回のテストは難易度高めだな。もしかしたらクラス4つとかになるかもな」
隣のルカも少し険しい顔つきをしている。
これ高めなの?でも兄さんの時は止まってる的みたいだったしそうなのかな?
「4クラスになることもあるの?」
「ほとんどないけどな。今年は大物が多いからお近づきになりたい奴が多いんじゃないか?」
ふーん。そんなものなのか。
「名前を呼ばれた方からこちらへお願いします」
早速テストが開始された。
2人の先生が各1人ずつ見るようだ。
これは時間がかかりそう。
でも他の人の魔法が見れるし退屈はしないか。
そう思っていたのだが、思ったより魔法のレベルが低いような気がする。
今のところ、撃ち落とせていない者の方が多いんじゃないだろうか。
うーん....。これはどうしたものか。
動く物を撃ち落とす練習ならずっとしていたのでできると思う。
けど、この中であっさり撃ち落としてしまうとなんだか目立ちそうな気もする。
目立つことは極力避けたいし、どうしようか。
ただ、昨日行われたテストがどれだけのレベルだったのかわからない以上、手を抜くのもちょっと怖い。
ま、いっか。
1番嫌なのはイケボが聞けなくなることだし。
いつも通りでいこう。
そう決心した直後、歓声があがった。
「フィル、大物のお出ましだ」
ルカが顎で示す方を見てみると3人の人影が見えた。
げっ。
攻略相手の3人だ。
金髪に碧眼でいかにも王子様です、といった風貌のカイル・ユグドール。
胸ほどまである茶髪を左側で結い、エメラルドグリーンの瞳に眼鏡をかけているレミオラ・クロスフィード。
そして黒髪碧眼のイケボ、ベルトレッド・アレイシス。
慌てて視線を逸らす。
目が合った、ような気がしたがきっと気のせいだ。
ライブで目が合ったと錯覚するアレと同じ。
「フィルローゼ・マクファイン」
ようやく名前を呼ばれた。
「フィル、頑張れよ!」
「うん。ありがとう」
視線が3人に集まっているから目立たなくてちょうどいいかもしれない。
「それでは、始めてください」
右腕を鳥に真っ直ぐ向け、親指と人差し指以外を折りたたむ。
銃のように構えたほうがイメージもしやすいし、狙いやすい。
狙いを定め、風の弾を放った。
ガシャン!
音もなく的中したおもちゃの鳥は音を立てて地面に落ちた。
撃ち落とした鳥を回収して先生に渡すが受け取ってくれない。
なんだかあんなにうるさかった周りも、少し静かになった気がする。
あれ?
「あの、駄目でしたか?」
声をかけるとようやく反応があった。
「あ、いえ。すみません。大丈夫です」
テストが終わった人はそのまま他の人の見学をするなり寮に戻るなり自由なので、邪魔にならないような所で見学しようと人だかりから抜けると兄の姿を見つけた。
「兄さん!」
「フィル、お疲れ様。見てたよ。すごいじゃないか」
にっこりと笑って頭を撫でてくれた。
「兄さんのアドバイスのお陰です!」
「それはよかった。この後はどうする?寮に戻ってゆっくりするかい?」
「いえ。ルカがまだなので。あと他の方も見たいです」
主人公のアレン・スピナーと幼なじみのラーフエル・トライトンも見ておきたい。
「.....そうか、早くここから移動したかったけど....。仕方ないね」
「なにか用事ですか?」
「いや、いいんだ。私がついてるからね」
「?」
兄さんがなにを言っているのか理解できなかったがルカの名前が呼ばれたのでそちらに意識を向けた。
ルカは右手に槍のような先の尖った氷の棒を作るとそれを鳥に向かって投げつけた。
ガキィン!
よし!
見事命中!
「ルカ!こっちこっち!」
キョロキョロしているルカを手を上げて呼んだ。
「フィル!お前すごいな!あれどうやったんだよ!」
両肩を掴まれぐいっと近づいてきた。
うおっ。なんか興奮してません?
落ち着いて、と言う前に兄さんが「近い」と一言。
ルカは両肩からばっと手を離して一歩下がった。
「あー、お兄さん居たんすね。失礼しました」
「君に兄と呼ばれたくはない」
「ちょ、兄さん!?」
普段はそんな意地悪なことを言わないのにどうしたのだろう?
「ルカ、シュレイツ兄さんだよ。兄さん、隣の部屋で友人のルーカスです」
うーん....。なんか空気悪くないか?
握手をするわけでもなくお互いにこっと笑っただけだ。
その笑顔もなんだか怖い。
「えーっと、ルカはこの後どうする?俺と兄さんはまだ少し見ていくつもりなんだけど....」
「じゃあ俺も見ていこうかな」
......。
なんか兄さんから舌打ちが聞こえたような気がしたんだけど.....。気のせいだよね?
「君は空気が読めないタイプなのかな?」
「ええ、よく言われます」
2人ともにこにこしているのに火花が散っているように見える。
えええええー。
なにこれ。どういう状況?俺の居ないところでなんかあった?
どうしたもんかと悩んでいたけどアレン・スピナーの名前が呼ばれたので一旦無視した。
違いますよ?決して面倒だからとかじゃありません。
165
あなたにおすすめの小説
ゲーム世界の貴族A(=俺)
猫宮乾
BL
妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。
【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる
ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。
・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。
・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。
・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。
冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない
北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。
ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。
四歳である今はまだ従者ではない。
死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった??
十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。
こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう!
そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!?
クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。
BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。
佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。
タチですが異世界ではじめて奪われました
雪
BL
「異世界ではじめて奪われました」の続編となります!
読まなくてもわかるようにはなっていますが気になった方は前作も読んで頂けると嬉しいです!
俺は桐生樹。21歳。平凡な大学3年生。
2年前に兄が死んでから少し荒れた生活を送っている。
丁度2年前の同じ場所で黙祷を捧げていたとき、俺の世界は一変した。
「異世界ではじめて奪われました」の主人公の弟が主役です!
もちろんハルトのその後なんかも出てきます!
ちょっと捻くれた性格の弟が溺愛される王道ストーリー。
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる