BLゲームのモブに転生したので壁になろうと思います

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6話

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「フィルー?おーい、まだ寝てんのかー?」

扉をうるさいくらいノックされ目が覚めた。

「んぅ.....?」
なんだ....?なんか今日あったっけ....?

まだ寝起きで頭がぼーっとしている。

「フィル?あれ?いないのか?」

扉の外からノック音とともに声が響く。

ん?ルカ?
.....は!そうだ!ここもう学校か!
今日約束してたんだった!

「ルカ!ごめん!今起きた!すぐ準備してそっち行くからもう少し待ってて!」
「おお、いたのか。わかった。待ってるなー」

ああああ、申し訳ない....!
今まで寝坊なんてしたことなかったのに....!

時計を見るともうすぐお昼の時間だった。
俺そんな寝てたの!?自分にびっくりだわ!

急いで顔を洗って着替えも含め5分程で支度を終え、ルカのドアをノックした。
もちろん前世を含め、最高新記録だ。

「お、早かったな」
「ほんっっとにごめん!こんな時間まで起きれないと思わなくて....」

「ははっ、いいって。疲れてたんだろ。それに時間は決めてなかったしな」
真面目だなー、と腰を折って謝罪する俺を見て笑いながら言った。

優しい...!
友達になれてよかった...!

「それより昼食べに行こーぜ」
「うん」

食堂へ行くとそこそこ混んでいたが席はすぐにみつかった。
席に着いて俺はもう一度謝った。

「本当にごめん」
「はい!もう謝るの禁止!ご飯まずくなるだろ」

「ありがとう」
「そんなことより、フィルはこの学校へは何しに来たんだ?次男だからやっぱ結婚相手探しにとか?」

家督を継げるのは原則長男だ。
場合によっては当主が決めることもあるようだがマクファイン家ではすでに兄さんが家督を継ぐことは決まっている。

俺もそれに異議はない。
そして、結婚をするつもりも今のところない。

「いや、魔法を学びに来たんだよ」
「魔法を学びに?コネ作りとかじゃなく?」

「うん。うち全体的に過保護だからあんまり魔法とか教えてもらってなくて」
「え、それならなおさら結婚相手探した方がよくないか?フィルならすぐ見つかるだろ」

「うーん、結婚はまだ考えてないからなぁ」
「なにかやりたいことでもあるのか?」

「うん。冒険者になりたいんだ」
「は!?冒険者!?」

そう!冒険者!
この国には前世で読んだ小説に出てくる冒険者がいるのだ。

男なら誰でも一度は憧れるだろう。

貴族が冒険者になった例は少ないがちゃんと前例もある。

「....魔法適性は?」

魔法適性とは、火、水、氷、土、風、雷、光、闇、聖、の9つある属性魔法の中で扱える魔法のことだ。

この世界では、全ての人が魔力を持って生まれてくるが、属性魔法は貴族にしか扱えない。

魔法適性はだいたい1人1~2つで、稀に3つ扱える人も居るらしい。
3つも扱えたらもうチートだよね。

「俺は風だけだよ」
俺の扱える属性魔法は風属性のみ。ちなみに兄さんは火属性だけだ。

「風....。やっぱやめといた方がいいんじゃないか....?」

まあ、ルカがそう言うのも分からなくはない。
風魔法は火や雷などの発生させるだけで脅威になるような攻撃魔法はないし、どちらかというとサポート系の魔法が多い。

サイクロンを発生させるなどの強力な魔法もあるがそれだけ魔力消費も多いので使い勝手が悪いのだ。

使い方次第だと思うんだけどね。

「風魔法もけっこう使えるよ?剣の練習もしてるし」
「それでもなぁ....。家族はOKしてんのか?過保護なんだろ?」

「う...、家族にはまだ言ってない....」
絶対反対されるだろうし。

「でも!学校である程度成果出せば認めてくれるかもだし!やるだけやってみるつもりだよ!」

「そうか、まあそんなに言うならもうなにも言わないけど....」
「心配してくれてありがとう。ルカは?何かやりたいこととかあるの?」

「俺はやっぱり騎士団だな!」
「おお!かっこいい!」

「だろ!.....でもなぁ、俺の魔法適性氷だけなんだよなぁ....」
「あぁ...」

氷属性が弱いわけではないのだが、この国には火属性を扱う人が多いので不利属性である氷は敬遠されがちだ。

まあ、隣で火使ってる人がいても氷だとフォローしにくいしね...。

「せめてもうひとつ使えればなぁー」
「でも騎士団の人全員が火属性なわけじゃないし実力さえあれば大丈夫だよ!」

「だな!ラッキーなことに騎士団長の息子と同学年だし!仲良くなれればコネで入れるかも!」
「うーん....。コネは、どうかな....」

「でも仲良くなっといて損はないだろー」

うーん、俺的には損得勘定で友達になるとかは....。
どうなんだろ、と思ってしまう。

だってもし自分がその立場だったら嫌だから。

俺とルカの関係だって損得勘定はないわけだし。
こんな考えだから市井の生まれだって言われるのかもしれないけど。

でも前世では庶民だったから俺に関してはあながち間違いではない。

ただ、自分の考えを押し付けるつもりはないので仲良くなれるといいね、と適当に流しておいた。

「仲良くなるためにはやっぱ同じクラスにならないとだよな」
「そうだね。どんなテストか気になるなぁ」

「だな。フィルんちあんま教えてもらえないって言ってたけど、どの程度なんだ?」
「うーん、基本は教えてもらったかな?ただ、実践はあんまりやらせてもらえなかったから隠れて練習はしてたよ」

「思ったより過保護だな。フィルとも一緒のクラスになれたらって思ってたんだけど」
「俺だって一番上のクラス目指してるから!」

「お!じゃあ明日楽しみだな!」
「うん!」

お昼ご飯を食べ終わった後は校内を見て回り、ルカがいつもやっているというトレーニングを一緒にやった。

「....はぁっ、はぁ....。ルカ...毎日こんなことしてるの....?」

「ああ。フィルは体力ないなー。冒険者になりたいならこれくらいできないと」

剣の練習もしていたとはいえ、風魔法と組み合わせた練習しかしてなかった。
それしか興味なかったし、筋トレはもともと好きじゃないからしていない。だから自分にこんな体力がないとは思わなかった。

思わなかったけどこれは普通ではないよね!?

腹筋とか腕立てとか基本的な筋トレを100回ずつくらい平気でやってのけている。
俺はもちろんそこまでついていけなかったけどね。

「確かに華奢だもんなー」
「はぁ....、明日絶対筋肉痛だよー」

「ははっ、大事なテストの前日にやるもんじゃなかったな」

「いや、これを機に俺も筋トレする....」
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