BLゲームのモブに転生したので壁になろうと思います

文字の大きさ
5 / 25

5話

しおりを挟む
寮に着くと、隣に荷物を運び込んでいるのが見えた。

あ、お隣さん来たんだ。

挨拶したほうがいいかな?でも今は忙しいかな?と少しの間ドアの前で考えていたら部屋からひょっこり顔が出てきた。

「もしかしてお隣さん?」
「はい!そうです」

「よかった!俺ルーカス・オーウェン。よろしくな」
にかっと人懐っこい笑みで右手を差し出されたのでそれに応えた。

「私はフィルローゼ・マクファインです。こちらこそよろしくお願いします」

「マクファイン?」
「?はい。そうですが」

「あ、いや。なんでもない。それより、俺堅苦しいの苦手でさ。できれば敬語なしで話せたらなーって....。卒業するまでずっとお隣さんなんだしさ!」

「うん。わかった」
「ありがと!名前もルカでいいから!」

「じゃあルカで。俺のこともフィルでいいよ」
「フィルな!いやー、隣がいい奴でよかった!」
「ふふ、俺も今そう思ってた」

もしかして友達第一号じゃない!?
やばい、めっちゃ嬉しいんだけど!

にこにこしながらルカを見るとなんだか驚いたような顔をしている。

「どうかした?」
「いや、普通なんだなと思って」

「普通?」
「噂でな?あくまでも噂で俺が言ったとかじゃないからな?」
めちゃくちゃ念を押されるがなんだ?

「マクファイン家は変わり者一家だって。本当は市井の出なんじゃないかって」

おお、そんなことで有名になってたのか。

「ふーん、そうなんだ」
「ははっ、他人事だな」

「知らない人がどこでなに言ってようが気にならないから」
幸せだしね。

「おお、かっこいいな。まあでも噂は噂なんだなって思ったよ」

ベルトレッド様もその噂をご存知だったのかな?

「フィル、明日もっと話せないか?」

明日、明後日と入学前のテストが行われるのだが、明日は公爵家と侯爵家、伯爵家、明後日は子爵家と男爵家、と別れてテストを行う。

明日、テストの様子を見に行きたかったのだが、テスト内容は当日まで知らせてはいけないことになっているので残念ながら見学ができない。

なのでその申し出はありがたかった。

「うん。俺も話したい」
「よし!じゃあ明日な!あ、そうだ。忘れるところだった。さっきフィルのお兄さん来たぞ」

「兄さんが?」
「ああ、後でまた来るから戻ったら部屋から出ないようにって」

うわ、そうなんだ。悪いことしちゃったな。

「ありがとう」
「お兄さんちょっとブラコンじゃないか?」

「そう?ちょっと過保護なところはあると思うけど」
「過保護ねぇ....。ま、いいや。じゃあ明日な!」
「うん。また明日」

自分の部屋に入ってベッドに寝転がった。

あの声を思い出しただけで胸がドキドキする。
いい声すぎるだろ....。
会ってしまったのは予想外だったが所詮モブだし、もう絡むこともないだろう。

あとは同じクラスになって早くイケボを堪能したい....!

テストの内容も気になるし早く明後日にならないかな~。

少しうとうとしてきた時にドアがノックされた。

「兄さん!一度来てくれてたみたいですみません」
「どこか行ってたのかい?」

「少し散策していただけですよ」
「それなら私も誘ってほしかったな。誰かに何かされなかった?」

「?特になにも....。人にも会いませんでしたし」
ベルトレッド様のことは秘密にしないと。

「ならいいんだ。何かあったら必ず言うんだよ?」
「はい。あ、隣の方とお友達になりました!兄さんも会ったんですよね?」

「ああ、あの子か。仲良くするのはいいが....。フィル、これだけは覚えておきなさい」

あまりにも真剣な顔をするものだからごくりと唾を飲み込んだ。

「男はみんな狼だから」

うん?
........。

うん?いや、俺もね?一応男だから意味はわかるんだけどね?

これはあれか、俺がルカを襲わないか心配してるのか。
まさかそんな心配をされるとは。

「大丈夫ですよ、兄さん」
俺は至ってノーマルですから。

自信満々で言ったのだが、なぜかため息をつかれてしまった。

「うん、でも一応ね。気をつけるんだよ」
「はい」

「そうだ、明日は用事ができてしまってね。残念だけど一緒にいられないんだ」
「そうなのですね。残念ですが明日は私もルカと約束しているので大丈夫ですよ」

「.....ルカ?」
「隣の方です。そういえばうちは結構有名だったのですね」

「噂のことかい?フィルは何も気にしなくていいんだよ」
噂のこと、兄さんは知ってたのか。

「はい。周りの人がなんと言おうと気になりませんから」
「フィルはいい子だね」

ちゅっと頬に音を立てて唇を落とされる。

「明後日のテストは必ず見に行くから」
「本当ですか?心強いです」

それから兄さんに学校内を軽く案内してもらって食堂で夕食をとった。

学食ってあんまり期待はしてなかったけど、さすが貴族が通う学校だ。
とても美味しかった。

「それじゃあ私は戻るよ」
「はい。本日はありがとうございました」
「部屋には私以外誰もあげないように」

食事中にも散々言われたのだが別れ際にも念を押された。

「わかってます」

部屋に戻ってシャワーを浴びると移動の疲れもあってか、すぐに眠気が襲いベッドに潜り込んだ瞬間に俺は意識を手放した。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾
BL
 妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?

米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。 ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。 隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。 「愛してるよ、私のユリタン」 そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。 “最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。 成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。 怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか? ……え、違う?

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる

ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。 ・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。 ・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。 ・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。

転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。 酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。 性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。 そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。 離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。 姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。 冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟 今度こそ、本当の恋をしよう。

冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない

北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。 ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。 四歳である今はまだ従者ではない。 死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった?? 十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。 こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう! そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!? クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。

【完結済】スパダリになりたいので、幼馴染に弟子入りしました!

キノア9g
BL
モテたくて完璧な幼馴染に弟子入りしたら、なぜか俺が溺愛されてる!? あらすじ 「俺は将来、可愛い奥さんをもらって温かい家庭を築くんだ!」 前世、ブラック企業で過労死した社畜の俺(リアン)。 今世こそは定時退社と幸せな結婚を手に入れるため、理想の男「スパダリ」になることを決意する。 お手本は、幼馴染で公爵家嫡男のシリル。 顔よし、家柄よし、能力よしの完璧超人な彼に「弟子入り」し、その技術を盗もうとするけれど……? 「リアン、君の淹れたお茶以外は飲みたくないな」 「君は無防備すぎる。私の側を離れてはいけないよ」 スパダリ修行のつもりが、いつの間にか身の回りのお世話係(兼・精神安定剤)として依存されていた!? しかも、俺が婚活をしようとすると、なぜか全力で阻止されて――。 【無自覚ポジティブな元社畜】×【隠れ激重執着な氷の貴公子】 「君の就職先は私(公爵家)に決まっているだろう?」

【完結】悪妻オメガの俺、離縁されたいんだけど旦那様が溺愛してくる

古井重箱
BL
【あらすじ】劣等感が強いオメガ、レムートは父から南域に嫁ぐよう命じられる。結婚相手はヴァイゼンなる偉丈夫。見知らぬ土地で、見知らぬ男と結婚するなんて嫌だ。悪妻になろう。そして離縁されて、修道士として生きていこう。そう決意したレムートは、悪妻になるべくワガママを口にするのだが、ヴァイゼンにかえって可愛らがれる事態に。「どうすれば悪妻になれるんだ!?」レムートの試練が始まる。【注記】海のように心が広い攻(25)×気難しい美人受(18)。ラブシーンありの回には*をつけます。オメガバースの一般的な解釈から外れたところがあったらごめんなさい。更新は気まぐれです。アルファポリスとムーンライトノベルズ、pixivに投稿。

処理中です...