勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました

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24話

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———あったかい......きもちい.......。

ぼーっとする意識の中、その温かいものに手を伸ばす。

「——たか...?」

「ん....?」

あれ、おれいつの間にねてたんだっけ....?

重たい瞼を開けると逞しい胸板が目の前にあった。

は.....?

しかもなにも纏っていない。
どうやら温かいものの正体はこれだったようだ。その逞しい胸板にしっかりと抱きついている。

「おい、起きたのか?」

「!?」

頭の上から降ってきた声が聞き覚えのある声で思わず飛び起きた。
それはもうすごい勢いで。そんなことをしたもんだから視界がぐらりと揺れた。

「おいっ」

焦った声と共に頭を支えられ、ベッドに打ちつけられずに済んだ。

「あ、ありがと....」

「どうした?気分悪いか?」

大きな手で両頬を包まれ綺麗な顔が間近に迫る。長い髪がぱらりと落ちて首をくすぐった。
外からの淡い光で照らされた顔はやはりリベルだ。

「ち、近い...!ちょっと眩暈しただけだからっ」

ぐいぐいと胸板を押すがびくともしない。

「ってかなんであんたがここに?あれからどうなって...服着ろよ!」

もう!なんで裸なんだよ!

「...無事で良かった....。すぐに助けに行けなくて、悪かった」

う...、な、なんか甘くないか...!?

「あ、いや...それよりここは...フィレルさんは?無事なのか?」

未だ両頬を包まれて顔を動かせないので目だけを動かして辺りを見回すと見覚えのある場所だった。

砦に戻ってこれたんだ....。

ほっとして視線を戻すとリベルがなにやらムスッとした顔をしている。

え、なに...?

「.....フィレル様はご無事だ」

「よかった....」

そう呟くとさらに眉間に皺がよる。

...だからなんだよ。なんか文句でもあるのか?

「お前は?」

「へ?」

「チヒロは痛むところなどはないか?」

「あ、うん。ないよ。大丈夫」

それよりもそろそろ離れてくれませんかね?目のやり場に困るんですが....。

「そうか」

だがリベルは離れるどころか近づいてきて俺の額にちゅっと唇を落とした。

柔らかい感触に一瞬思考が停止して———

「な、なにしてんの!?」

「匂いが消えてる。どこか触られたりしなかったか?」

「は!?さ、触られてないからっ。っ...!や、やめろって...!それより状況を...んっ!」

すんすんと首筋の匂いを嗅がれ、鼻息があたってくすぐったい。
身をよじるとぬるりとした舌が這い、軽く吸われた。

なんなんだよ!...あ、もしかしてマーキングか?

「っ、おいっ、マーキングなら護衛もいるし要らないんじゃないかっ?」

「....これは別にマーキングの為にやっているわけではない」

「は...?じゃあなんで....ひっ!だからっ、耳はやめろって!...っん」

熱い舌が首筋から耳へと移動し、がじがじと甘噛みされる。

「匂いが無いのが不愉快なだけだ」

なるほど...って意味わからんわっ。そんなんで納得すると思ってんのかっ。

「ぁっ、ん...ほんとに、やっ、めろって...!...っ!」

「嫌ならもっと抵抗しろ。他の奴にもこんな簡単に触らせる気か?」

はいぃぃ!?なんで俺がそんなこと言われなきゃいけないんだよ!だいたいこんなことする人あんたしかいないわ!
それに———

「しょうがない、だろ...。あんたに触られるとなんか力抜けるんだよ....んんっ!?や....んっ....ふ...ぁ....」

な、なんでキス!?

唐突に塞がれた唇から舌が入り込み、縦横無尽に動き回る。押し出そうとしてもそれすらも絡め取られ、部屋にはくちゅくちゅと水音が響く。
触れられてないところなんてないんじゃないかと思うくらい舌が這ったところで、ようやく離れていった。

「はっ...はぁ...なん、で....」

「煽ったのはお前だろ」

煽った覚えなんてないんですけど!?

「い、意味わかんないっ...。も、いい加減離れろよっ...!」

「なら名前で呼べ」

「は....?だから意味が——んむっ!んー!....っ、ぁ...んんっ....」

問答無用と言わんばかりにまたも強引に唇を塞がれ、今度は上顎や舌裏など敏感な部分ばかり攻め立てられる。

「呼ばないなら続けるぞ?まぁ、俺はそれでもいいが」

理解ができずにぽかんとしていると、リベルの顔が再び近づいたので慌てて止めた。

「ま、待って!わかった!呼ぶから!」

そう言うと、それ以上は近づいて来なかったがかなり近い。しかも改めて言うとなるとなんだか少し照れる。
せめてもう少し離れてくれないかと肩を押しても無駄だった。


「....リ、リベル....」


だー!もう!名前呼ぶだけなのになんでこんな恥ずかしいんだ!

一方リベルは満足したのかようやく離れてくれた。

「今日はそれで許してやるよ。まだ起きるには少し早いからもう少し寝てろ。起きたら全部話してやるから」

頭をくしくしゃっと撫でられ、太い腕で起きた時のポジションに引き戻されてしまう。

いやいやいや!なんでよ!?絶対おかしいでしょ!
そもそももう目はばっちり冴えちゃってるし今更寝れるはずもない。

しかも今日とか言ってなかったか!?

だが、何度も文句を言っても暴れても解放してくれる気は全くないようで諦めて瞼を閉じた。

寝られるはずない、そう思っていたのに包まれているのがあまりにも心地よくていつの間にか眠ってしまっていた。
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