27 / 37
25話
しおりを挟む
結局、目が覚めたのはお昼を少し過ぎた頃だった。
どんだけ寝てんだ、俺は...。
しかも、いつもは起きる時にはいなくなっているリベルもなぜかまだ隣にいる。
どうやらリベルは結構前に起きていたようだ。
なら起こそ?男の寝顔なんか見てたっておもしろくもなんともないだろうに。
ってか明るいところで見る美形のドアップとかムキムキな胸板とか心臓に悪い。
とりあえずお昼を食べながら経緯を話してくれるというので部屋にご飯を運んでもらった。
早くフィレルさんに会いたかったけどお腹も空いてるし仕方ない。
どうやら俺が気を失った後すぐに助けが来たらしい。
助けに来てくれた人たちはフィレルさん直属の部下でほとんど表には出てこない、所謂暗躍部隊。
ある程度のことは予想していたフィレルさんが前もって指示を与えていたらしく、すぐに救出してくれたってわけ。すごくない?フィレルさん。
あの近衛団員の男が匂いを消してなかったのも早期解決に繋がったようだ。ちなみにノックスの部下たちが吹きつけてたやつが匂いを消すためのもので、暗躍している人にとっては必需品なんだって。
あ、だから匂いが無いとか言ってたのね。
俺には匂わないからピンとこないけど匂ってたものが匂わなくなったら不愉快になるのかもしれないな。
ただ、ノックスには逃げられてしまったらしい。
俺としては助かっただけでも御の字だと思ったのだがリベルには甘い、と怒られた。
「ノックスに気に入られたらしいな」
「え?いや、あれは気に入られたというかおもしろがられたというか....」
「同じことだ」
同じ...かなぁ....?
「どちらにせよ、また狙われる可能性があるということだ」
「でもさすがにこんなとこまでは来ないでしょ」
国境付近だし騎士団がたくさんいる場所にわざわざ来るとは思えない。
「それが甘いつってんだよ。いいか、次同じ事が起こったとしても絶対についていこうとするなよ」
「え....」
「誰が殺されそうになっても、だ。分かったな?」
できればもうあんな状況に陥りたくないんですけどね!ただ、同じことをするなと言われてもあまり自信はない。
「.....俺がついていくことで誰かが助かるなら、助けたい」
「駄目だ。皆お前に助けて欲しいなんて思ってない」
「そんな言い方しなくても...!」
「本当の事だ。チヒロを犠牲にしてまで助かりたいと思ってる奴なんていない」
「っ!」
犠牲....、そう言われてしまうとたしかにそうなのかもしれない。みんな俺に助けてもらうほど弱くはないから。
でも、それでも———
「俺だってみんなを助けたい!」
「....気持ちはわかる。だが、もしお前が逆の立場だったらどうだ?そんな事されて嬉しいか?」
「!!」
そう言われて言葉に詰まった。
そうだ。見方を変えればそれはただの自己満足でしかない。
自分が傷つかない方を選んでるだけ。
「........嬉しくない」
ブスッとしながらついていかないことを約束すると、リベルは心底ホッとしたように表情を緩めた。
え、そんな顔しないでよ。不貞腐れた俺恥ずかしいじゃん!
居心地が悪くて慌てて話題を変えた。
転移陣を壊したと近衛団員が言っていたが、実はもう一つあるらしい。
と、いっても知っているのはリベルとトリスさん、後は王族と宰相、近衛騎士団長さんのみであの男は知らなかったみたいだけど。
俺を救出後、狼煙をあげてトリスさんが転移させてくれたようだ。
リュードとヴィスもその転移陣で王都に来ていて、救出に協力してくれたと聞いたので早くお礼を言いに行きたい。
リベルも本当は来たかったようだが、さすがに団長がこの砦を離れるわけにもいかずなぜか謝られた。
「当然じゃない?突然レムールが攻めてきたらやばいし」
指揮官不在の戦争なんて確実に負けるだろう。
「....それでも、俺はお前に護る誓いを立てたのになにもできなかった」
護る誓い.....、あ、あの怖いやつか。
「それ、俺は了承してないからね?だから勝手に申し訳なく思われても困るんですけど」
そう言ってもリベルの顔が晴れないのでしかたなく言葉を重ねた。
「リュードとヴィスもリベルの剣みたいなものでしょ?ちゃんと護ってもらったから、大丈夫。ありがとう」
すると今度はこれでもかというほど目を見開いて驚きの表情に変わる。
なんだ?目が大きい自慢でもしたいのか?
しかしいいですね、イケメンは。そんな表情でもイケメンなのは変わらないのだ。
むしろぶさいくな表情なんかできないんじゃないか?いや、さすがに変顔とかしたらぶさいくになるのかな。
まあ変顔してるリベルは想像つかないけど。
などとくだらないことを考えながらまじまじと見ていたらふわりと笑って「まいった」と呟いた。
うん?今別に睨めっことかしてないよ?笑わすつもりもなかったしね?それともなにか、俺の顔が元々笑えるとでも言いたいのか。
ケンカを売っているのかと思ったけど違うらしい。じゃあなんなんだ。
聞いても「わからないならいい」と話をたたんでしまった。
どんだけ寝てんだ、俺は...。
しかも、いつもは起きる時にはいなくなっているリベルもなぜかまだ隣にいる。
どうやらリベルは結構前に起きていたようだ。
なら起こそ?男の寝顔なんか見てたっておもしろくもなんともないだろうに。
ってか明るいところで見る美形のドアップとかムキムキな胸板とか心臓に悪い。
とりあえずお昼を食べながら経緯を話してくれるというので部屋にご飯を運んでもらった。
早くフィレルさんに会いたかったけどお腹も空いてるし仕方ない。
どうやら俺が気を失った後すぐに助けが来たらしい。
助けに来てくれた人たちはフィレルさん直属の部下でほとんど表には出てこない、所謂暗躍部隊。
ある程度のことは予想していたフィレルさんが前もって指示を与えていたらしく、すぐに救出してくれたってわけ。すごくない?フィレルさん。
あの近衛団員の男が匂いを消してなかったのも早期解決に繋がったようだ。ちなみにノックスの部下たちが吹きつけてたやつが匂いを消すためのもので、暗躍している人にとっては必需品なんだって。
あ、だから匂いが無いとか言ってたのね。
俺には匂わないからピンとこないけど匂ってたものが匂わなくなったら不愉快になるのかもしれないな。
ただ、ノックスには逃げられてしまったらしい。
俺としては助かっただけでも御の字だと思ったのだがリベルには甘い、と怒られた。
「ノックスに気に入られたらしいな」
「え?いや、あれは気に入られたというかおもしろがられたというか....」
「同じことだ」
同じ...かなぁ....?
「どちらにせよ、また狙われる可能性があるということだ」
「でもさすがにこんなとこまでは来ないでしょ」
国境付近だし騎士団がたくさんいる場所にわざわざ来るとは思えない。
「それが甘いつってんだよ。いいか、次同じ事が起こったとしても絶対についていこうとするなよ」
「え....」
「誰が殺されそうになっても、だ。分かったな?」
できればもうあんな状況に陥りたくないんですけどね!ただ、同じことをするなと言われてもあまり自信はない。
「.....俺がついていくことで誰かが助かるなら、助けたい」
「駄目だ。皆お前に助けて欲しいなんて思ってない」
「そんな言い方しなくても...!」
「本当の事だ。チヒロを犠牲にしてまで助かりたいと思ってる奴なんていない」
「っ!」
犠牲....、そう言われてしまうとたしかにそうなのかもしれない。みんな俺に助けてもらうほど弱くはないから。
でも、それでも———
「俺だってみんなを助けたい!」
「....気持ちはわかる。だが、もしお前が逆の立場だったらどうだ?そんな事されて嬉しいか?」
「!!」
そう言われて言葉に詰まった。
そうだ。見方を変えればそれはただの自己満足でしかない。
自分が傷つかない方を選んでるだけ。
「........嬉しくない」
ブスッとしながらついていかないことを約束すると、リベルは心底ホッとしたように表情を緩めた。
え、そんな顔しないでよ。不貞腐れた俺恥ずかしいじゃん!
居心地が悪くて慌てて話題を変えた。
転移陣を壊したと近衛団員が言っていたが、実はもう一つあるらしい。
と、いっても知っているのはリベルとトリスさん、後は王族と宰相、近衛騎士団長さんのみであの男は知らなかったみたいだけど。
俺を救出後、狼煙をあげてトリスさんが転移させてくれたようだ。
リュードとヴィスもその転移陣で王都に来ていて、救出に協力してくれたと聞いたので早くお礼を言いに行きたい。
リベルも本当は来たかったようだが、さすがに団長がこの砦を離れるわけにもいかずなぜか謝られた。
「当然じゃない?突然レムールが攻めてきたらやばいし」
指揮官不在の戦争なんて確実に負けるだろう。
「....それでも、俺はお前に護る誓いを立てたのになにもできなかった」
護る誓い.....、あ、あの怖いやつか。
「それ、俺は了承してないからね?だから勝手に申し訳なく思われても困るんですけど」
そう言ってもリベルの顔が晴れないのでしかたなく言葉を重ねた。
「リュードとヴィスもリベルの剣みたいなものでしょ?ちゃんと護ってもらったから、大丈夫。ありがとう」
すると今度はこれでもかというほど目を見開いて驚きの表情に変わる。
なんだ?目が大きい自慢でもしたいのか?
しかしいいですね、イケメンは。そんな表情でもイケメンなのは変わらないのだ。
むしろぶさいくな表情なんかできないんじゃないか?いや、さすがに変顔とかしたらぶさいくになるのかな。
まあ変顔してるリベルは想像つかないけど。
などとくだらないことを考えながらまじまじと見ていたらふわりと笑って「まいった」と呟いた。
うん?今別に睨めっことかしてないよ?笑わすつもりもなかったしね?それともなにか、俺の顔が元々笑えるとでも言いたいのか。
ケンカを売っているのかと思ったけど違うらしい。じゃあなんなんだ。
聞いても「わからないならいい」と話をたたんでしまった。
88
あなたにおすすめの小説
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
異世界に転移したら運命の人の膝の上でした!
鳴海
BL
ある日、異世界に転移した天音(あまね)は、そこでハインツという名のカイネルシア帝国の皇帝に出会った。
この世界では異世界転移者は”界渡り人”と呼ばれる神からの預かり子で、界渡り人の幸せがこの国の繁栄に大きく関与すると言われている。
界渡り人に幸せになってもらいたいハインツのおかげで離宮に住むことになった天音は、日本にいた頃の何倍も贅沢な暮らしをさせてもらえることになった。
そんな天音がやっと異世界での生活に慣れた頃、なぜか危険な目に遭い始めて……。
【完】心配性は異世界で番認定された狼獣人に甘やかされる
おはぎ
BL
起きるとそこは見覚えのない場所。死んだ瞬間を思い出して呆然としている優人に、騎士らしき人たちが声を掛けてくる。何で頭に獣耳…?とポカンとしていると、その中の狼獣人のカイラが何故か優しくて、ぴったり身体をくっつけてくる。何でそんなに気遣ってくれるの?と分からない優人は大きな身体に怯えながら何とかこの別世界で生きていこうとする話。
知らない世界に来てあれこれ考えては心配してしまう優人と、優人が可愛くて仕方ないカイラが溺愛しながら支えて甘やかしていきます。
異世界で勇者をやったら執着系騎士に愛された
よしゆき
BL
平凡な高校生の受けが異世界の勇者に選ばれた。女神に美少年へと顔を変えられ勇者になった受けは、一緒に旅をする騎士に告白される。返事を先伸ばしにして受けは攻めの前から姿を消し、そのまま攻めの告白をうやむやにしようとする。
触手生物に溺愛されていたら、氷の騎士様(天然)の心を掴んでしまいました?
雪 いつき
BL
仕事帰りにマンホールに落ちた森川 碧葉(もりかわ あおば)は、気付けばヌメヌメの触手生物に宙吊りにされていた。
「ちょっとそこのお兄さん! 助けて!」
通りすがりの銀髪美青年に助けを求めたことから、回らなくてもいい運命の歯車が回り始めてしまう。
異世界からきた聖女……ではなく聖者として、神聖力を目覚めさせるためにドラゴン討伐へと向かうことに。王様は胡散臭い。討伐仲間の騎士様たちはいい奴。そして触手生物には、愛されすぎて喘がされる日々。
どうしてこんなに触手生物に愛されるのか。ピィピィ鳴いて懐く触手が、ちょっと可愛い……?
更には国家的に深刻な問題まで起こってしまって……。異世界に来たなら悠々自適に過ごしたかったのに!
異色の触手と氷の(天然)騎士様に溺愛されすぎる生活が、今、始まる―――
※昔書いていたものを加筆修正して、小説家になろうサイト様にも上げているお話です。
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
(誤字脱字報告は不要)
狼騎士は異世界の男巫女(のおまけ)を追跡中!
Kokonuca.
BL
異世界!召喚!ケモ耳!な王道が書きたかったので
ある日、はるひは自分の護衛騎士と関係をもってしまう、けれどその護衛騎士ははるひの兄かすがの秘密の恋人で……
兄と護衛騎士を守りたいはるひは、二人の前から姿を消すことを選択した
完結しましたが、こぼれ話を更新いたします
花街だからといって身体は売ってません…って話聞いてます?
銀花月
BL
魔導師マルスは秘密裏に王命を受けて、花街で花を売る(フリ)をしていた。フッと視線を感じ、目線をむけると騎士団の第ニ副団長とバッチリ目が合ってしまう。
王命を知られる訳にもいかず…
王宮内で見た事はあるが接点もない。自分の事は分からないだろうとマルスはシラをきろうとするが、副団長は「お前の花を買ってやろう、マルス=トルマトン」と声をかけてきたーーーえ?俺だってバレてる?
※[小説家になろう]様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる