勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました

文字の大きさ
26 / 37

24話

しおりを挟む
———あったかい......きもちい.......。

ぼーっとする意識の中、その温かいものに手を伸ばす。

「——たか...?」

「ん....?」

あれ、おれいつの間にねてたんだっけ....?

重たい瞼を開けると逞しい胸板が目の前にあった。

は.....?

しかもなにも纏っていない。
どうやら温かいものの正体はこれだったようだ。その逞しい胸板にしっかりと抱きついている。

「おい、起きたのか?」

「!?」

頭の上から降ってきた声が聞き覚えのある声で思わず飛び起きた。
それはもうすごい勢いで。そんなことをしたもんだから視界がぐらりと揺れた。

「おいっ」

焦った声と共に頭を支えられ、ベッドに打ちつけられずに済んだ。

「あ、ありがと....」

「どうした?気分悪いか?」

大きな手で両頬を包まれ綺麗な顔が間近に迫る。長い髪がぱらりと落ちて首をくすぐった。
外からの淡い光で照らされた顔はやはりリベルだ。

「ち、近い...!ちょっと眩暈しただけだからっ」

ぐいぐいと胸板を押すがびくともしない。

「ってかなんであんたがここに?あれからどうなって...服着ろよ!」

もう!なんで裸なんだよ!

「...無事で良かった....。すぐに助けに行けなくて、悪かった」

う...、な、なんか甘くないか...!?

「あ、いや...それよりここは...フィレルさんは?無事なのか?」

未だ両頬を包まれて顔を動かせないので目だけを動かして辺りを見回すと見覚えのある場所だった。

砦に戻ってこれたんだ....。

ほっとして視線を戻すとリベルがなにやらムスッとした顔をしている。

え、なに...?

「.....フィレル様はご無事だ」

「よかった....」

そう呟くとさらに眉間に皺がよる。

...だからなんだよ。なんか文句でもあるのか?

「お前は?」

「へ?」

「チヒロは痛むところなどはないか?」

「あ、うん。ないよ。大丈夫」

それよりもそろそろ離れてくれませんかね?目のやり場に困るんですが....。

「そうか」

だがリベルは離れるどころか近づいてきて俺の額にちゅっと唇を落とした。

柔らかい感触に一瞬思考が停止して———

「な、なにしてんの!?」

「匂いが消えてる。どこか触られたりしなかったか?」

「は!?さ、触られてないからっ。っ...!や、やめろって...!それより状況を...んっ!」

すんすんと首筋の匂いを嗅がれ、鼻息があたってくすぐったい。
身をよじるとぬるりとした舌が這い、軽く吸われた。

なんなんだよ!...あ、もしかしてマーキングか?

「っ、おいっ、マーキングなら護衛もいるし要らないんじゃないかっ?」

「....これは別にマーキングの為にやっているわけではない」

「は...?じゃあなんで....ひっ!だからっ、耳はやめろって!...っん」

熱い舌が首筋から耳へと移動し、がじがじと甘噛みされる。

「匂いが無いのが不愉快なだけだ」

なるほど...って意味わからんわっ。そんなんで納得すると思ってんのかっ。

「ぁっ、ん...ほんとに、やっ、めろって...!...っ!」

「嫌ならもっと抵抗しろ。他の奴にもこんな簡単に触らせる気か?」

はいぃぃ!?なんで俺がそんなこと言われなきゃいけないんだよ!だいたいこんなことする人あんたしかいないわ!
それに———

「しょうがない、だろ...。あんたに触られるとなんか力抜けるんだよ....んんっ!?や....んっ....ふ...ぁ....」

な、なんでキス!?

唐突に塞がれた唇から舌が入り込み、縦横無尽に動き回る。押し出そうとしてもそれすらも絡め取られ、部屋にはくちゅくちゅと水音が響く。
触れられてないところなんてないんじゃないかと思うくらい舌が這ったところで、ようやく離れていった。

「はっ...はぁ...なん、で....」

「煽ったのはお前だろ」

煽った覚えなんてないんですけど!?

「い、意味わかんないっ...。も、いい加減離れろよっ...!」

「なら名前で呼べ」

「は....?だから意味が——んむっ!んー!....っ、ぁ...んんっ....」

問答無用と言わんばかりにまたも強引に唇を塞がれ、今度は上顎や舌裏など敏感な部分ばかり攻め立てられる。

「呼ばないなら続けるぞ?まぁ、俺はそれでもいいが」

理解ができずにぽかんとしていると、リベルの顔が再び近づいたので慌てて止めた。

「ま、待って!わかった!呼ぶから!」

そう言うと、それ以上は近づいて来なかったがかなり近い。しかも改めて言うとなるとなんだか少し照れる。
せめてもう少し離れてくれないかと肩を押しても無駄だった。


「....リ、リベル....」


だー!もう!名前呼ぶだけなのになんでこんな恥ずかしいんだ!

一方リベルは満足したのかようやく離れてくれた。

「今日はそれで許してやるよ。まだ起きるには少し早いからもう少し寝てろ。起きたら全部話してやるから」

頭をくしくしゃっと撫でられ、太い腕で起きた時のポジションに引き戻されてしまう。

いやいやいや!なんでよ!?絶対おかしいでしょ!
そもそももう目はばっちり冴えちゃってるし今更寝れるはずもない。

しかも今日とか言ってなかったか!?

だが、何度も文句を言っても暴れても解放してくれる気は全くないようで諦めて瞼を閉じた。

寝られるはずない、そう思っていたのに包まれているのがあまりにも心地よくていつの間にか眠ってしまっていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

狼騎士は異世界の男巫女(のおまけ)を追跡中!

Kokonuca.
BL
異世界!召喚!ケモ耳!な王道が書きたかったので ある日、はるひは自分の護衛騎士と関係をもってしまう、けれどその護衛騎士ははるひの兄かすがの秘密の恋人で…… 兄と護衛騎士を守りたいはるひは、二人の前から姿を消すことを選択した 完結しましたが、こぼれ話を更新いたします

異世界に転移したら運命の人の膝の上でした!

鳴海
BL
ある日、異世界に転移した天音(あまね)は、そこでハインツという名のカイネルシア帝国の皇帝に出会った。 この世界では異世界転移者は”界渡り人”と呼ばれる神からの預かり子で、界渡り人の幸せがこの国の繁栄に大きく関与すると言われている。 界渡り人に幸せになってもらいたいハインツのおかげで離宮に住むことになった天音は、日本にいた頃の何倍も贅沢な暮らしをさせてもらえることになった。 そんな天音がやっと異世界での生活に慣れた頃、なぜか危険な目に遭い始めて……。

異世界転移して出会っためちゃくちゃ好きな男が全く手を出してこない

春野ひより
BL
前触れもなく異世界転移したトップアイドル、アオイ。 路頭に迷いかけたアオイを拾ったのは娼館のガメツイ女主人で、アオイは半ば強制的に男娼としてデビューすることに。しかし、絶対に抱かれたくないアオイは初めての客である美しい男に交渉する。 「――僕を見てほしいんです」 奇跡的に男に気に入られたアオイ。足繁く通う男。男はアオイに惜しみなく金を注ぎ、アオイは美しい男に恋をするが、男は「私は貴方のファンです」と言うばかりで頑としてアオイを抱かなくて――。 愛されるには理由が必要だと思っているし、理由が無くなれば捨てられて当然だと思っている受けが「それでも愛して欲しい」と手を伸ばせるようになるまでの話です。 金を使うことでしか愛を伝えられない不器用な人外×自分に付けられた値段でしか愛を実感できない不器用な青年

異世界で王子様な先輩に溺愛されちゃってます

野良猫のらん
BL
手違いで異世界に召喚されてしまったマコトは、元の世界に戻ることもできず異世界で就職した。 得た職は冒険者ギルドの職員だった。 金髪翠眼でチャラい先輩フェリックスに苦手意識を抱くが、元の世界でマコトを散々に扱ったブラック企業の上司とは違い、彼は優しく接してくれた。 マコトはフェリックスを先輩と呼び慕うようになり、お昼を食べるにも何をするにも一緒に行動するようになった。 夜はオススメの飲食店を紹介してもらって一緒に食べにいき、お祭りにも一緒にいき、秋になったらハイキングを……ってあれ、これデートじゃない!? しかもしかも先輩は、実は王子様で……。 以前投稿した『冒険者ギルドで働いてたら親切な先輩に恋しちゃいました』の長編バージョンです。

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

花街だからといって身体は売ってません…って話聞いてます?

銀花月
BL
魔導師マルスは秘密裏に王命を受けて、花街で花を売る(フリ)をしていた。フッと視線を感じ、目線をむけると騎士団の第ニ副団長とバッチリ目が合ってしまう。 王命を知られる訳にもいかず… 王宮内で見た事はあるが接点もない。自分の事は分からないだろうとマルスはシラをきろうとするが、副団長は「お前の花を買ってやろう、マルス=トルマトン」と声をかけてきたーーーえ?俺だってバレてる? ※[小説家になろう]様にも掲載しています。

クズ令息、魔法で犬になったら恋人ができました

岩永みやび
BL
公爵家の次男ウィルは、王太子殿下の婚約者に手を出したとして犬になる魔法をかけられてしまう。好きな人とキスすれば人間に戻れるというが、犬姿に満足していたウィルはのんびり気ままな生活を送っていた。 そんなある日、ひとりのマイペースな騎士と出会って……? 「僕、犬を飼うのが夢だったんです」 『俺はおまえのペットではないからな?』 「だから今すごく嬉しいです」 『話聞いてるか? ペットではないからな?』 果たしてウィルは無事に好きな人を見つけて人間姿に戻れるのか。 ※不定期更新。主人公がクズです。女性と関係を持っていることを匂わせるような描写があります。

神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。 

処理中です...