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第五章・恋の進行状況
29・危険な大公ルート
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「えっ…そうなのかい?知らなかった!では伯父上の婚約者が君なんだね。凄い巡り合わせだ!」
ラウル殿下はアランの言葉に、嬉々として反応した。そして父親である国王陛下の弟君、マクベス大公の妃になるというアランを見つめる。
「はい!こんな田舎者で、なんの取り柄もない男の僕を、結婚相手として選んでいただけて有り難いと思っております」
そうはにかんだ笑顔で、幸せそうに話すアラン。さっきまでは印象に残らない顔だなんて思っていたけど、なんだかこの子のこと、無茶苦茶可愛く思えてきたよ?
「はぁん?大公様も趣味が悪いね。伯爵家の令息とだなんて…せいぜい頑張ればぁ」
──アンディ!将来の大公妃の御前であるぞ?頭が高い!控えおろう~印籠見せちゃうぞ!!
それにしてもアンディは、何てこと言うのよ?今は自分が格上かも知れないけど、未来の妃殿下だよ?この子、怖いものなしだな…
確かに、伯爵家の令息であるアランが大公妃になるというのは、身分的にどうなの?って思うだろう。それがもしもラウル殿下の相手だったら…間違いなく反対される。
僕から見ればギリギリオッケーなんじゃないの?って思うが、そうならないのはラウル殿下が、将来国王になる可能性が高いからだ。それなら何故、大公なら大丈夫なの?
それは、後継者争いの為だ。何の力もない家門の令息、しかも四男。そんな影響力を持たない人を配偶者として迎えるのは、王位を狙ってませんよー!っていうアピールに他ならない。そうした理由から選ばれたであろうアラン君だが、凄く嬉しそうだ!きっと、マクベス大公様を愛しているんだろうな。だけど…
このBLゲームのマクベス大公ルートは、唯一の破滅ルートとして知られている。大公殿下が、今の婚約者であるアラン君と結婚するのであれば、何の問題もないんだ。それが、もしもジュリアスだったら?…大問題だ!!
これはあくまでゲームの中のお話なんだけど、いろんな分岐点で必ず出会ってしまうジュリアスとマクベス大公。そして必ずといっていいほど、大公がジュリアスに対して一目惚れする。それで婚約者がいるにも関わらず、ジュリアスを手に入れたい大公は、暴走するんだ…
まず、邪魔になった婚約者を秘密裏に殺してしまう…それが、この地味可愛いアラン君だなんて酷すぎるっ!
ゲームをやっていた時は、ふ~ん、そう?って思っちゃったけど、こうやって被害者を目の当たりにすると恐ろしい!
こんなに自分を慕ってくれる婚約者を殺すなんて、有り得ないでしょ!婚約を破棄すればいいのに殺すんだよ?
それが大公の恐ろしいところなんだよ…
大公は、先代の国王の側室から生まれた王子だ。今の国王が後継ぎに指名された時、大公はまだ幼かった為に候補者にもなれず、また側室腹だった為に存在自体が重要視されなかった。そして唯一の大公として、目立たず出しゃばらず、立場をわきまえて生きて行くことを選択した。だから、アラン君のような人を選んだんだ。
だけど…心の中にほんの少しの炎を宿していた。いつも控えめに微笑んでいたけど、常にその炎が燻り続けていた。
それがジュリアスと出会ったことで、燃え盛る炎へと変貌してしまう…
国内で最も影響力を持つ、公爵家令息という立場のジュリアス。その力を借りたらもしかして…そして、そもそもあのジュリアスに似合う立場を用意しなければ!との思いで、どんどん手が付けられない状態になっていくんだよ。
──マズい…マズ過ぎるよね?そんな猛烈な狂気に、僕の坊ちゃまが巻き込まれたらどうする!?あかん…絶対!
「それでね、当日マクベス大公様が見に来られるんです交流戦を。僕の勇姿を是非見たい!とおっしゃって…。恥ずかしいですが、頑張ります!」
──来るなぁーーっ!なんで来る?
交流戦に…なんて、もう時間がない!あと二週間ほどしかないじゃないか?この先どこかで、出会ってしまう可能性が高いけど、そこじゃないでしょうよ?だって、攻略対象者揃い踏みだよ…?
ただでさえ、ガイ・クルーガーという最有力の攻略対象が来るのは間違いないんだ。おまけにそんな不穏な人物まで集まるなんて!
そして僕は、それだけじゃない気がしている。これはあくまで僕だけの問題だけれど…きっとアイツも現れるだろう。僕の異母兄弟で天敵のような存在の、イーライ・アノー。
ずっと怖かった…見つかってしまうのが。そうなったら連れ戻されるのだろうか?それとも、母の形見のプロミスリングを奪われる?そう恐怖を感じていた。
だけど今の僕は、怖くなんてない!愛する人で、僕の一番の理解者…坊ちゃまが側にいてくれさえすれば、負ける気なんてしない!
ラウル殿下はアランの言葉に、嬉々として反応した。そして父親である国王陛下の弟君、マクベス大公の妃になるというアランを見つめる。
「はい!こんな田舎者で、なんの取り柄もない男の僕を、結婚相手として選んでいただけて有り難いと思っております」
そうはにかんだ笑顔で、幸せそうに話すアラン。さっきまでは印象に残らない顔だなんて思っていたけど、なんだかこの子のこと、無茶苦茶可愛く思えてきたよ?
「はぁん?大公様も趣味が悪いね。伯爵家の令息とだなんて…せいぜい頑張ればぁ」
──アンディ!将来の大公妃の御前であるぞ?頭が高い!控えおろう~印籠見せちゃうぞ!!
それにしてもアンディは、何てこと言うのよ?今は自分が格上かも知れないけど、未来の妃殿下だよ?この子、怖いものなしだな…
確かに、伯爵家の令息であるアランが大公妃になるというのは、身分的にどうなの?って思うだろう。それがもしもラウル殿下の相手だったら…間違いなく反対される。
僕から見ればギリギリオッケーなんじゃないの?って思うが、そうならないのはラウル殿下が、将来国王になる可能性が高いからだ。それなら何故、大公なら大丈夫なの?
それは、後継者争いの為だ。何の力もない家門の令息、しかも四男。そんな影響力を持たない人を配偶者として迎えるのは、王位を狙ってませんよー!っていうアピールに他ならない。そうした理由から選ばれたであろうアラン君だが、凄く嬉しそうだ!きっと、マクベス大公様を愛しているんだろうな。だけど…
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それが大公の恐ろしいところなんだよ…
大公は、先代の国王の側室から生まれた王子だ。今の国王が後継ぎに指名された時、大公はまだ幼かった為に候補者にもなれず、また側室腹だった為に存在自体が重要視されなかった。そして唯一の大公として、目立たず出しゃばらず、立場をわきまえて生きて行くことを選択した。だから、アラン君のような人を選んだんだ。
だけど…心の中にほんの少しの炎を宿していた。いつも控えめに微笑んでいたけど、常にその炎が燻り続けていた。
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──マズい…マズ過ぎるよね?そんな猛烈な狂気に、僕の坊ちゃまが巻き込まれたらどうする!?あかん…絶対!
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そして僕は、それだけじゃない気がしている。これはあくまで僕だけの問題だけれど…きっとアイツも現れるだろう。僕の異母兄弟で天敵のような存在の、イーライ・アノー。
ずっと怖かった…見つかってしまうのが。そうなったら連れ戻されるのだろうか?それとも、母の形見のプロミスリングを奪われる?そう恐怖を感じていた。
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