【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!

MEIKO

文字の大きさ
10 / 96
第二章・学園生活が幕を開ける

10・怪しい言い訳

しおりを挟む
 目の前の皇太子殿下は、またこの令嬢か!?と言わんばかりに顔をしかめている。それから斜め方向に身体を向け、ハァ…と溜息を吐いた。それから、仕方ないな…と言わんばかりに嫌な顔をしたまま私の方へと向き直す。

 「また君だね?確かランドン令嬢。私だってよく分からないが、こちらのルーシーがキャロラインから嫌がらせをされて泣き出したのだ。それを諫めようとしている」

 見れば、ピンク頭が真っ赤な顔をして泣いている。だけどキャロラインは何も言わずその隣で呆然とされているだけ…。
 またそんな状況だけで…決めつけてらっしゃる?

 「よく分からないのですよね?」

 「な、何?」

 「だからよく分からないのに、そう決めつけているのかと聞いているのです。そして皇太子殿下は、キャロライン様がこちらの令嬢に何かをした場面など見ていない…そうですよね?」

 「そ、そうなるな…」

 皇太子殿下と私、こんなやり取りが繰り広げられる。案の定といえばそうなんだけど、この人はそもそも何故、こうなったのかを聞かないの?呆れ返った私は、今度はそのルーシーと呼ばれる令嬢をじっと見る。

 「ピンク髪のご令嬢、そうなのですか?あなたはキャロライン様から、嫌がらせをされたとおっしゃるのですか?」

 「ピ、ピンク?」

 ピンク頭はもうとっくに涙は引っ込み、私からそう言われたことにキョトンとしている。そして思い出したようにウルウルと瞳を潤ませながら私を見る。何よ…ピンクって言ったのが不満なの?

 「申し訳ありませんが、お名前を存じておりません。クラスも違いますしね?ですからそうお呼びしました。気に障ったのなら大変申し訳ありません。それでどうなのです?」

 今度は私がキョトンとピンク頭を見る番だ。再度問われた途端に、その令嬢は挙動不審になる。

 「こちらはバーモント子爵家の、ルーシー嬢だ。同じ一年生の名前など、君なら直ぐ覚えられる筈だろ?全く…」

 横から皇太子殿下が、少し苛つきながらそう紹介してくれる。別に聞いてませんけど?そうは思うが、ルーシー・バーモントね、はいはい!と心の中で呟いた。それから「ご丁寧にどうも…」と殿下に対して頭を下げる。それからバーモント嬢に向き直すと、私としっかりと目が合う。うん…反論か!?

 「私がキャロライン様の隣を通った瞬間、突然強い痛みが走ったのです。それであまりの衝撃に転んでしまって…。確かにその場面は見てはいませんが、そこに居たのはキャロライン様ただお一人なのです。それは間違いありません!」

 それに私は、なるほどね…と頷いた。なるほどそういう訳があって、そうなったのか…と。そして一方だけの言い分を聞くのは不公平だと、今度はキャロラインに聞くことにする。

 「それではキャロライン様、それに何か身に覚えはありまして?バーモント令嬢は、そうおっしゃってますが」

 それにはキャロラインの顔は青ざめ、否定の意味だろう勢いよく頭を振った。そして…

 「わたくしは無実です!ルーシー様が何を根拠にそうおっしゃっているのか、皆目見当もつきません。何もしていないのに、何故そのようなことが?」

 そう切実に訴えてくる。その強い視線は、私に信じて欲しい!と言っているようで…
 それに私は『分かってます』と伝えるように、ゆっくりと一度瞬きをする。
 
 この場にいる全てのクラスメイト達は、どうなるのかと固唾を呑んで見守っている。本来場を仕切るべきのランバート先生は、オドオドして遠巻きに見ているだけだ。その姿を見て呆れるが、全く役に立ちそうにもないので放っておく。そして…

 「まずはバーモント令嬢、それは驚かれたことでしょう。一応この授業の後、保健室で手当てをされることをお勧め致しますわ」

 私が急にトーンダウンしたことに安心したのか、先ほどまでの挑むような視線を緩めて微笑むバーモント嬢。そして隣の取り巻き連中にも笑顔を振り撒いて、嬉しそうにしている。それを見ていたキャロラインは、絶望したように顔を伏せ、微かに身体を震わせる。それは見ていても痛々しいものだった。そんな対照的な二人を見比べて私は思う…だけどね、バーモント嬢…安心するのは早いんじゃないかしら?

 「ところでバーモント嬢、あなたこの実験何をやっているのかご存知?わざわざこの実験室に集まってるのだけど…聞いてらっしゃったのかしら?」

 安心したのも束の間、まさかそんなことを言われるとは思ってみなかった様子のバーモント嬢。そして思った通り知らないのか、目を激しく泳がせている。そして取り巻きの一人に目で訴えかけるも、その人も分からないようで…

 「な、何の実験?そ、それは…」

 案の定、全然お話しにならない。だからCクラスなのね?と納得がいく。そんな様子だが畳み掛けるように、もう一つ肝心なことを聞く。

 「それに不思議なのは、実験中だというのにどうして動き回ってらっしゃるの?あなたのいるべき場所は、あの端のテーブルではなくて?」

 そして私はこの実験室の一番後ろで端、出入り口間近のテーブルを指差す。それにはクラスメイト達も、同じくそのテーブルにと目をやった。
 
 この実験室に生徒達は、Aクラスから成績順に前から詰めて座っていた。9つあるテーブルが3つ横並びにあり、それが三列になっている。一番前の3つのテーブルはAクラスの生徒が。そして真ん中はB、そして一番後ろのテーブルはCだ。おまけに実験に使用される教室だけあって、安全の為に大きく間を空けて配置されている。
 そして今バーモント嬢がいるのは一番前、それも窓側の端ということは、自分とは一番かけ離れているテーブルにいることになる。

 「これって…何故なのかしらね?」

 そう言って私は、悠然と微笑む。
しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします

タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。 悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

『追放令嬢は薬草(ハーブ)に夢中 ~前世の知識でポーションを作っていたら、聖女様より崇められ、私を捨てた王太子が泣きついてきました~』

とびぃ
ファンタジー
追放悪役令嬢の薬学スローライフ ~断罪されたら、そこは未知の薬草宝庫(ランクS)でした。知識チートでポーション作ってたら、王都のパンデミックを救う羽目に~ -第二部(11章~20章)追加しました- 【あらすじ】 「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」 王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。 彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。 追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった! 石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。 【主な登場人物】 ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。 ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。 アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。 リリア 無力な「聖女」。アルベルトに庇護されるが、本物の災厄の前では無力な「駒」。 ロイド・バルトロメウス 『天秤と剣(スケイル&ソード)商会』の会頭。ソフィアに命を救われ、彼女の「薬学」の価値を見抜くビジネスパートナー。 【読みどころ】 「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

処理中です...