【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!

MEIKO

文字の大きさ
63 / 96
第九章・秘密の友達

63・久しぶりの皇居

しおりを挟む
 ある日、お仕事中のお父様の元に意外な方が訪れる。それに驚いたお父様…いつもは自分の方が伺う立場で、それがまさか自らおいでになるとは!と、びっくり仰天だったそう。そのお方とは…皇帝陛下だ。そして驚き過ぎてポカンとしているお父様に向かって、「アリシアに会いたい!」と叫ばれたそうで…

 ──えっ…ミッション終わってますよね?

 皇帝陛下から私が賜ったミッションは、失敗のまま終了した。失敗…っていうか、本人が自爆しちゃったんだけどね?だからもう陛下の元に行くことはないと思ってたんだけど…思いのほか私を、気に入ってくださっていたみたい!それで約四カ月ぶりに今日は皇居へとレッツゴー!

 「お嬢様、久しぶりにお菓…いえ、久しぶりに皇帝陛下とお会い出来ますね?陛下からお嬢様に会いたいと…何だかそのお気持ち、ロッテは分かるような気がします」

 そう言ってロッテは、目を閉じて胸にそっと手をおく。今…お菓子って言おうとしてなかった?誤魔化していたけど、バレバレなんですけど?とは思うが、確かに皇居で出されるお菓子は美味しい!今日は何かしら?

 なんて考えている間に、いつもの巨大な城門のところに差し掛かる。もうすっかりと顔馴染みになっていた門兵さんが「お嬢様!お久しぶりです」と笑顔で声を掛けてくれて、私ってば皇居で人気者なのかしら?と満更でもない。それから皇居の正面に着くと…

 「アリシア様!ご無沙汰しております。お元気でらっしゃいましたか?」

 またまたお出迎えしてくれたジャックマンが、そう声を掛けてくれる。四カ月…といえば長いとは思うけど、まるで旧友に会ったかのようなその反応にちょっと面食らって…

 「ジャックマンもお元気そうですね?良かったわ!」

 こちらも笑顔でそう返して、かつて知ったる皇居の中を歩き出す。そして例の薔薇園の前にさしかかると…

 「そういえばあと少しで二年生におなりですね!もう春めいて来ましたし、そろそろ春咲の薔薇も咲きそうです。是非その時には、御祝いにこちらの薔薇をお贈り致します」

 そう言ってジャックマンは、ニコッと笑う。それに私は驚いて…

 「ええっ、こちらの薔薇をですか?そんな恐れ多いです!それに皇后様の薔薇を切ってしまうなど…」

 「いえいえ、大丈夫ですよ?皇居内に飾ることもありますので。アリシア様はどのお色が好きでしょうか?快活なイメージですから…オレンジ?それとも黄色でも」

 そう言って考え込むジャックマン。薔薇なら何色でも好きだけど…と迷った挙句、せっかくだからジャックマンが選んでくれたものにしようと決める。

 「ジャックマンが選んでくれる?一番好きな色にしてちょうだい!」

 それにジャックマンは少し驚いたようだったけど、うーんと暫し考えて…

 「では真っ赤な薔薇を贈らせていただきます!」

 そう言って笑顔になる。それに私は…プロポーズみたいじゃない!?と少しだけ戸惑ったが、贈ってくれる気持ちが嬉しくて笑顔で「はい!待ってますね」と返事をした。

 だけどこのジャックマンという人…侍従長という立場だから、皇居の人事を一手に担っているのだろう。そして恐らく平民ではなく、男爵…子爵くらいの身分はありそうだ。私のような年の者にも腰が低くて話しやすくて…だけど皇居の薔薇をくれるだなんて、勝手に言ってもいいのかしら?とちょっとだけ心配になる。
 だけど陛下からの信頼も厚い人だから、それくらいの権限は与えられているんだろうと、その日を楽しみに待つことにした。そして皇帝陛下の執務室の前に着くと…

 「アリシア、待っていたぞ!」

 またまた、扉の前で待ち構えていた皇帝陛下が!その歓迎ぶりに驚きながらも挨拶をする。

 「皇帝陛下、本日はお招きに預かりましてありがとうございます!再びお目にかかれて嬉しいです。本当に久しぶりにございますね?」

 そうにこやかに言って礼を取る。すると陛下はいつものように「いいから、いいから!」とソファに座るようにとおっしゃる。それでお言葉に甘えて座ると…

 「全然来てくれなかったではないか!これからも遊びに来て良いと言った筈だが?」

 そ、そんなことを言われても…と戸惑う私。用もないのに皇居に来れる?って考えると、難しいと思うけど~あっ、でもルシード殿下に会いに来ました!なら可能かも知れない。そうなると余計にややこしいことにならない?と思ったりするけど…

 「それはすみません…長い冬季休暇などあって、領地に戻っていたものですから…。それが終わったら直ぐに卒業パーティーがあったりで、忙しくしておりました」

 それに陛下は、うんうん頷いて笑顔になる。
 
 「そうか、卒業パーティーは生徒達にとっては重要だな。それにキャロラインのことも聞いた!名高いルーベルト家の令息ならば、きっと幸せにしてくれるであろう。スティーブのことでは本当に申し訳なかったからな…そうだ!」

 突然、陛下が大きな声を上げられギョッとする。どうしたんだろうと見上げると…

 「今日はどうだ?皇后と会ってみてはどうだろう。それに皇女にも会ってやってくれると嬉しいんだが」

 ──ええっ…皇后様に?おまけに皇女様にまで!

 思ってもみなかったことを提案されて戸惑う。皇后様といえばキャロラインの叔母様でもある。一度お目にかかりたいとは思っていたけど。だけどこんな伯爵家の令嬢が…いいのかしら?
しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

地味令嬢を見下した元婚約者へ──あなたの国、今日滅びますわよ

タマ マコト
ファンタジー
王都の片隅にある古びた礼拝堂で、静かに祈りと針仕事を続ける地味な令嬢イザベラ・レーン。 灰色の瞳、色褪せたドレス、目立たない声――誰もが彼女を“無害な聖女気取り”と笑った。 だが彼女の指先は、ただ布を縫っていたのではない。祈りの糸に、前世の記憶と古代詠唱を縫い込んでいた。 ある夜、王都の大広間で開かれた舞踏会。 婚約者アルトゥールは、人々の前で冷たく告げる――「君には何の価値もない」。 嘲笑の中で、イザベラはただ微笑んでいた。 その瞳の奥で、何かが静かに目覚めたことを、誰も気づかないまま。 翌朝、追放の命が下る。 砂埃舞う道を進みながら、彼女は古びた巻物の一節を指でなぞる。 ――“真実を映す者、偽りを滅ぼす” 彼女は祈る。けれど、その祈りはもう神へのものではなかった。 地味令嬢と呼ばれた女が、国そのものに裁きを下す最初の一歩を踏み出す。

婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします

タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。 悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

『追放令嬢は薬草(ハーブ)に夢中 ~前世の知識でポーションを作っていたら、聖女様より崇められ、私を捨てた王太子が泣きついてきました~』

とびぃ
ファンタジー
追放悪役令嬢の薬学スローライフ ~断罪されたら、そこは未知の薬草宝庫(ランクS)でした。知識チートでポーション作ってたら、王都のパンデミックを救う羽目に~ -第二部(11章~20章)追加しました- 【あらすじ】 「貴様を追放する! 魔物の巣窟『霧深き森』で、朽ち果てるがいい!」 王太子の婚約者ソフィアは、卒業パーティーで断罪された。 しかし、その顔に絶望はなかった。なぜなら、その「断罪劇」こそが、彼女の完璧な計画だったからだ。 彼女の魂は、前世で薬学研究に没頭し過労死した、日本の研究者。 王妃の座も権力闘争も、彼女には退屈な枷でしかない。 彼女が求めたのはただ一つ——誰にも邪魔されず、未知の植物を研究できる「アトリエ」だった。 追放先『霧深き森』は「死の土地」。 だが、チート能力【植物図鑑インターフェイス】を持つソフィアにとって、そこは未知の薬草が群生する、最高の「研究フィールド(ランクS)」だった! 石造りの廃屋を「アトリエ」に改造し、ガラクタから蒸留器を自作。村人を救い、薬師様と慕われ、理想のスローライフ(研究生活)が始まる。 だが、その平穏は長く続かない。 王都では、王宮薬師長の陰謀により、聖女の奇跡すら効かないパンデミック『紫死病』が発生していた。 ソフィアが開発した『特製回復ポーション』の噂が王都に届くとき、彼女の「研究成果」を巡る、新たな戦いが幕を開ける——。 【主な登場人物】 ソフィア・フォン・クライネルト 本作の主人公。元・侯爵令嬢。魂は日本の薬学研究者。 合理的かつ冷徹な思考で、スローライフ(研究)を妨げる障害を「薬学」で排除する。未知の薬草の解析が至上の喜び。 ギルバート・ヴァイス 王宮魔術師団・研究室所属の魔術師。 ソフィアの「科学(薬学)」に魅了され、助手(兼・共同研究者)としてアトリエに入り浸る知的な理解者。 アルベルト王太子 ソフィアの元婚約者。愚かな「正義」でソフィアを追放した張本人。王都の危機に際し、薬を強奪しに来るが……。 リリア 無力な「聖女」。アルベルトに庇護されるが、本物の災厄の前では無力な「駒」。 ロイド・バルトロメウス 『天秤と剣(スケイル&ソード)商会』の会頭。ソフィアに命を救われ、彼女の「薬学」の価値を見抜くビジネスパートナー。 【読みどころ】 「悪役令嬢追放」から始まる、痛快な「ざまぁ」展開! そして、知識チートを駆使した本格的な「薬学(ものづくり)」と、理想の「アトリエ」開拓。 科学と魔法が融合し、パンデミックというシリアスな災厄に立ち向かう、読み応え抜群の薬学ファンタジーをお楽しみください。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

処理中です...