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最終章・幸せな日常
90・救出とドキドキ
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白い霧の中から、大勢の人がこちらへと駆け付けて来るのが見える。その無駄のない動き…騎士だわ!それにあの一番前で光る剣を持ち、疾風の如く走って来るのは…お兄様!その両脇には叔父様と…お祖父様?うそ…
そしてその後ろからは、白地に赤のラインの…近衛?皇帝陛下は、近衛の出動を許可して下さったの?その特徴的な軍服を纏った大勢の騎士達が!それと同時に、立ち込めていた霧が晴れて…
これまで気付いて無かったけど、この土地はぐるりと塀に囲まれて、その中には十軒ほどの倉庫が建てられている。かなりの広さがあり大規模な拠点だった…それほど大がかりな密輸が行われていたということ。もう、あの人達は終わりね…そう安心したら、足がふらついて来て…
「アリシア大丈夫?もう少しだから頑張ってちょうだい!」
ルーシーが支えてくれようとするが、弟とも手を繋いでいる為にしっかりと支えることは無理のようで…
それで少し前に出ることになるが、もうきっと大丈夫だろうと建物の壁に寄りかかりながら成り行きを見つめていた。
お兄様達や騎士の他に、ルシードも見える。それにロブやフィリップも!?皆んなのその華麗な剣さばきには驚いて、そんなに強かったのね?と改めて感心する。それと…圧巻なのは叔父様だわ。叔父様についてはかなりの逸話があるけど、目の前で戦っている姿を見るのは初めて。お兄様やお祖父様とは違って、それほど体格は大きくはないのにセンスに優れているというか…全身をバネのようにしならせて、縦横無尽に剣を打ち込んでいる。あれでは…誰も敵わないだろう。それにいつものノホホンとした叔父様ではなく、真剣な顔付きで…叔母様に次に会った時には、カッコよかった!って報告しないと…などと呑気に思っていると…
「こんなところにいたのか。娘…こっちに来い!」
──モ、モルド公爵!迂闊だった…沢山の人達が助けに来てくれて、安心し過ぎていた。もう一網打尽だと思っていて…
建物の陰から現れたモルド公爵に後ろから両腕を掴まれ、まるで盾のように前に押し出される。私の背中越しに公爵は、大声を上げて…
「おい見ろ!この娘がどうなってもいいのか?危害を加えられたくなかったら、馬を用意しろ!」
この後に及んで、そう言い放つモルド公爵。そして私の首筋にナイフを突き付けている。それには助けに来てくれた面々も成すすべもなく…
「アリシア!ぐぬぅ…モルドめ!汚い手を使いおって」
お祖父様が苦しげにそう言っている。もう目の前で、手の届きそうな所に皆んながいるのに…と悲しくなってきた。そしてもう足はガクガクで立っているのも限界!あれからどれくらいの日が経っているのか分からないが、殆ど食べてはいないしお風呂だって入っていない。それに寝るところだって冷たい床の上で…ああ、もう倒れそう!
そんな状態で自分の首で光るナイフに緊張する。倒れると刺さるかも?なんて怖いことを考えていると…横から誰かが、私の身体をバッと引き寄せる。その瞬間、まるで花が咲いたように血が飛び散って…
「アリシア、大丈夫か!」
倒れかかっている私を支え顔を見下ろしているその顔には、一筋の赤い線が走っている。そこからはスーッと血が流れ落ちて…
「ア、アンドリュー?」
私は呆然として、自分を見下ろしているアンドリューの顔を見つめる。ど、どうして?私が大好きなその可愛い顔に…傷が!!キャ~
それからアンドリューは、動揺している私を抱き寄せたまま、モルドの持っているナイフをはたき落とす。
それから、大変なことをしてしまった…そう思って固まる私の身体をしっかりと抱き上げるアンドリュー。そして大きく頷くと…皆は一斉にモルド公爵目掛けて襲いかかった。
それにモルドはあっさりと拘束され項垂れる。
「もう言い逃れ出来ないぞ?モルド公爵。この拠点をしっかり調べて密輸に関わった罪を問う!おまけに私への暗殺に関わった罪もある…死んだマクスウェルが、もしもの時用に証拠を残していた。これで…王妃もお前もおしまいだ!」
ルシードのそんな凛とした声が響く。やったわね…そう思った時、ここにいる筈もない人の聞き覚えのある声が。
「ルーシー!大丈夫か?」
えっ…この声って、誰だったかしら?記憶が確かなら…ジャックマンじゃない?それに何故ルーシーを呼んでいるの。
「お、お父様!?」
何ですって?ジャックマンが、ルーシーの父親だったの?そう驚愕して、そう言えば…と不思議に感じていたことを思い出す。
ルシード殿下との件で、二人が付き合っているのだと思い込んでいた時、皇帝陛下は何故ルーシーに何も言わないのだろうと思っていた。私のように呼びつけて、一言交際を咎めればいいのでは?と。もしかしてそれが、原因だったのかも。チラッと見ると、ルーシーはジャックマンに抱き着いている。恐らくだけど、ずっと見守っていたんだわ…父だと名乗ることはなかったけど、遠くからでも…と見守っていたんだろうと思う。それは良かったけど…頭が全然働かない!もう疲れ果てているし、正直それよりも気になるのは…アンドリュー!
「ああ、どうしよう?あなたの可愛い顔が…」
震える手で、アンドリューの顔に手を伸ばした。その傷からは未だ血が流れ続けている。思ったより深い?跡が残るかも…そう心配していると。
「馬鹿か!僕の顔なんて、どうでもいいだろう?アリシアを守って出来た傷なら勲章だ!それよりも…この頭はどうした?手当てはされているみたいだけど…他にどこか痛いところはないか?辛くはないのか?」
そう質問攻めに合う私が…アンドリューはそう心配しながら、まるで宝物のように私をお姫様抱っこしている。二年になってからは騎士課程を取っているからなのか、いつの間にか背もぐんと高くなり、思った以上に胸板が厚い!だから思った以上に抱かれ心地が良くて…
「助けに来てくれてありがとう。だけど…私、臭いでしょ?お風呂入っていないし…それに重くない?だからゴメンね」
そんな私にアンドリューは、少し悲しそうに顔をクシャッとする。
「臭い訳あるか!全然だよ。それに羽根のように軽いぞ?僕では安心出来ないかも知れないけど、信頼して身体を預けて欲しい。君を落とすことは絶対ないよ…死んだって」
うん…それはどういう意味なんだろう。死んでも離さないってこと?こんな時だけど、ドキドキしちゃう…弱ってるせいかな?それに羽根って…それは言い過ぎでしょう?とフフッと笑った。それから意識がプツリ…プツリと途切れる。
「おい、アリシア?眠くなっちゃったのか…大丈夫か!」
アンドリューの甘やかな声が、心地よく耳に響く。それを聞いていたら心の底から安心して…そして私は意識を手放した。
そしてその後ろからは、白地に赤のラインの…近衛?皇帝陛下は、近衛の出動を許可して下さったの?その特徴的な軍服を纏った大勢の騎士達が!それと同時に、立ち込めていた霧が晴れて…
これまで気付いて無かったけど、この土地はぐるりと塀に囲まれて、その中には十軒ほどの倉庫が建てられている。かなりの広さがあり大規模な拠点だった…それほど大がかりな密輸が行われていたということ。もう、あの人達は終わりね…そう安心したら、足がふらついて来て…
「アリシア大丈夫?もう少しだから頑張ってちょうだい!」
ルーシーが支えてくれようとするが、弟とも手を繋いでいる為にしっかりと支えることは無理のようで…
それで少し前に出ることになるが、もうきっと大丈夫だろうと建物の壁に寄りかかりながら成り行きを見つめていた。
お兄様達や騎士の他に、ルシードも見える。それにロブやフィリップも!?皆んなのその華麗な剣さばきには驚いて、そんなに強かったのね?と改めて感心する。それと…圧巻なのは叔父様だわ。叔父様についてはかなりの逸話があるけど、目の前で戦っている姿を見るのは初めて。お兄様やお祖父様とは違って、それほど体格は大きくはないのにセンスに優れているというか…全身をバネのようにしならせて、縦横無尽に剣を打ち込んでいる。あれでは…誰も敵わないだろう。それにいつものノホホンとした叔父様ではなく、真剣な顔付きで…叔母様に次に会った時には、カッコよかった!って報告しないと…などと呑気に思っていると…
「こんなところにいたのか。娘…こっちに来い!」
──モ、モルド公爵!迂闊だった…沢山の人達が助けに来てくれて、安心し過ぎていた。もう一網打尽だと思っていて…
建物の陰から現れたモルド公爵に後ろから両腕を掴まれ、まるで盾のように前に押し出される。私の背中越しに公爵は、大声を上げて…
「おい見ろ!この娘がどうなってもいいのか?危害を加えられたくなかったら、馬を用意しろ!」
この後に及んで、そう言い放つモルド公爵。そして私の首筋にナイフを突き付けている。それには助けに来てくれた面々も成すすべもなく…
「アリシア!ぐぬぅ…モルドめ!汚い手を使いおって」
お祖父様が苦しげにそう言っている。もう目の前で、手の届きそうな所に皆んながいるのに…と悲しくなってきた。そしてもう足はガクガクで立っているのも限界!あれからどれくらいの日が経っているのか分からないが、殆ど食べてはいないしお風呂だって入っていない。それに寝るところだって冷たい床の上で…ああ、もう倒れそう!
そんな状態で自分の首で光るナイフに緊張する。倒れると刺さるかも?なんて怖いことを考えていると…横から誰かが、私の身体をバッと引き寄せる。その瞬間、まるで花が咲いたように血が飛び散って…
「アリシア、大丈夫か!」
倒れかかっている私を支え顔を見下ろしているその顔には、一筋の赤い線が走っている。そこからはスーッと血が流れ落ちて…
「ア、アンドリュー?」
私は呆然として、自分を見下ろしているアンドリューの顔を見つめる。ど、どうして?私が大好きなその可愛い顔に…傷が!!キャ~
それからアンドリューは、動揺している私を抱き寄せたまま、モルドの持っているナイフをはたき落とす。
それから、大変なことをしてしまった…そう思って固まる私の身体をしっかりと抱き上げるアンドリュー。そして大きく頷くと…皆は一斉にモルド公爵目掛けて襲いかかった。
それにモルドはあっさりと拘束され項垂れる。
「もう言い逃れ出来ないぞ?モルド公爵。この拠点をしっかり調べて密輸に関わった罪を問う!おまけに私への暗殺に関わった罪もある…死んだマクスウェルが、もしもの時用に証拠を残していた。これで…王妃もお前もおしまいだ!」
ルシードのそんな凛とした声が響く。やったわね…そう思った時、ここにいる筈もない人の聞き覚えのある声が。
「ルーシー!大丈夫か?」
えっ…この声って、誰だったかしら?記憶が確かなら…ジャックマンじゃない?それに何故ルーシーを呼んでいるの。
「お、お父様!?」
何ですって?ジャックマンが、ルーシーの父親だったの?そう驚愕して、そう言えば…と不思議に感じていたことを思い出す。
ルシード殿下との件で、二人が付き合っているのだと思い込んでいた時、皇帝陛下は何故ルーシーに何も言わないのだろうと思っていた。私のように呼びつけて、一言交際を咎めればいいのでは?と。もしかしてそれが、原因だったのかも。チラッと見ると、ルーシーはジャックマンに抱き着いている。恐らくだけど、ずっと見守っていたんだわ…父だと名乗ることはなかったけど、遠くからでも…と見守っていたんだろうと思う。それは良かったけど…頭が全然働かない!もう疲れ果てているし、正直それよりも気になるのは…アンドリュー!
「ああ、どうしよう?あなたの可愛い顔が…」
震える手で、アンドリューの顔に手を伸ばした。その傷からは未だ血が流れ続けている。思ったより深い?跡が残るかも…そう心配していると。
「馬鹿か!僕の顔なんて、どうでもいいだろう?アリシアを守って出来た傷なら勲章だ!それよりも…この頭はどうした?手当てはされているみたいだけど…他にどこか痛いところはないか?辛くはないのか?」
そう質問攻めに合う私が…アンドリューはそう心配しながら、まるで宝物のように私をお姫様抱っこしている。二年になってからは騎士課程を取っているからなのか、いつの間にか背もぐんと高くなり、思った以上に胸板が厚い!だから思った以上に抱かれ心地が良くて…
「助けに来てくれてありがとう。だけど…私、臭いでしょ?お風呂入っていないし…それに重くない?だからゴメンね」
そんな私にアンドリューは、少し悲しそうに顔をクシャッとする。
「臭い訳あるか!全然だよ。それに羽根のように軽いぞ?僕では安心出来ないかも知れないけど、信頼して身体を預けて欲しい。君を落とすことは絶対ないよ…死んだって」
うん…それはどういう意味なんだろう。死んでも離さないってこと?こんな時だけど、ドキドキしちゃう…弱ってるせいかな?それに羽根って…それは言い過ぎでしょう?とフフッと笑った。それから意識がプツリ…プツリと途切れる。
「おい、アリシア?眠くなっちゃったのか…大丈夫か!」
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