極上の彼女と最愛の彼 Vol.3

葉月 まい

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生命の誕生

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「じゃあ瞳子ちゃん。取り敢えず頭から1回通してみてくれる?」

録音ブースの中の瞳子は、聞こえてきた吾郎の声に「分かりました」と答えて姿勢を正す。

1月の下旬、内海不動産のモデルルームで流す紹介映像のナレーションを録音する為、アートプラネッツの4人は瞳子を連れて貸しスタジオに来ていた。

映像を見ながら、瞳子は台本のセリフを丁寧にマイクに向かって語りかける。

「ひゃー!ほんとに綺麗な声だな、アリシアって。ヒーリング効果があるよ。癒やされるー」

聞こえてくる瞳子の声に、透は両手を広げて目を閉じる。

「あはは!何やってんだよ、透。森林浴か?」

洋平が笑う横で、吾郎は真剣にヘッドホンに耳を傾けていた。

「うん!瞳子ちゃん、1発OKだよ。念の為、雰囲気を変えてもうワンテイクお願い出来る?」

「はい、分かりました。今度はもう少し明るい口調で早めにしゃべってみます」

「いいね、頼むよ」

瞳子のナレーションのクオリティの高さに、四人は大満足で録音を終える。

「あっという間に終わったな。仕事が出来るねー、瞳子ちゃん」

「じゃあさ!パーッと打ち上げに行こうよ!」

「透、まだ昼の3時だぞ」

「いいってことよ!」

「何がだよ?」

洋平が透にそう言った時、スマートフォンがポケットの中で震えた。

「お、泉だ。ちょっとごめん」

断ってからスタジオの片隅で電話に出る。

「もしもし泉?どうした…えっ?!」

大きな声で驚く洋平に、皆も何事かと注目する。

「それって、もうすぐ産まれそうってこと?」

今度は皆が、えっ?!と驚く。

「分かった、すぐに行くからな!泉」

急いで通話を終える洋平を、皆は一斉に取り囲む。

「洋平さん、赤ちゃんが産まれそうなの?泉さんは?大丈夫?」

瞳子が心配そうに尋ねる。

「大丈夫だよ。今日は健診の日で、病院に行ってるんだ。予定日をだいぶ過ぎたから、これから陣痛促進剤を使ってお産になるらしい」

「そうなんですね!今、病院なら良かった。でも泉さん、一人でがんばってるんですね」

大河も瞳子の隣に並んで声をかける。

「とにかく洋平も、早く泉さんの所に行け」

「ああ、ありがとう」

バタバタと出て行く洋平を、皆で見送る。

「がんばれよー!」

「安産を祈ってるからなー!」

洋平は背中を向けたまま手を挙げて応え、走り去って行った。

「ああ、どうか無事に産まれますように…」

思わず両手を組んで祈るように呟く瞳子の肩を、大河は優しく抱き寄せる。

「大丈夫だよ、きっと。みんなで無事を祈って、嬉しい報告を待とう」

「はい」



その後は皆ソワソワして仕事にならず、居ても立ってもいられずにオフィスで時計とにらめっこする。

夕食はデリバリーを頼み、仕事終わりの亜由美もオフィスに駆けつけた。

時計の針が21時を過ぎた時…。

ピコン!とグループメッセージの通知音が一斉に鳴った。

「洋平からだ!20時12分、元気な男の子が産まれました!母子ともに無事です、だって!」

透がいち早く読み上げると、やったー!と全員で喜びの声を上げた。

「良かったー、泉さんも赤ちゃんも無事で」

「うんうん、ほんとに」

瞳子は亜由美と手を取り合って涙ぐむ。

「あ、赤ちゃんの写真だ。可愛いー!」

「え?見せて、透さん」

亜由美が透からスマートフォンを受け取り、瞳子と一緒に覗き込んだ。

小さな可愛い赤ちゃんを胸に抱いた泉と、その泉の肩を抱く洋平が写っている。

「ひゃー!なんて可愛いの。天使よ、天使」

「小さいおててにぷくぷくのほっぺ!やーん、ラブリー!」

瞳子と亜由美は、興奮して思わず抱き合う。

「泉さんも洋平さんも、すっかりママとパパの顔ね」

「うんうん。あー、早くベビーちゃんに会いたい!」

ひとしきり盛り上がったあと、二人にお祝いのメッセージを送る。

大河達はアートプラネッツのグループに、そして瞳子と亜由美は『マダムプラネッツ』と名づけた泉と3人のグループに、それぞれ『おめでとう!』のメッセージを送った。



「はあー、可愛いな。いつまででも見ていられる」

マンションに帰ってからも、瞳子はソファに座り、何度も泉と洋平の赤ちゃんの写真を眺めては、うっとりしていた。

「こんなに小さくて可愛い命がこの世に存在するなんて。まさに生命の神秘!そしてママって偉大!」

興奮冷めやらぬ瞳子を、大河は微笑んで見守る。

「赤ちゃん、目元が洋平さんにそっくりですね。口元は泉さんに似てるかな?とにかく本当に可愛い!」

堪え切れずに大河は苦笑いする。

「目がハートになってる瞳子も、とびきり可愛いよ」

「やだ!赤ちゃんに敵う訳ないでしょ?真っさらで汚れのない神聖な命なんだもの」

「瞳子だって、清らかで純真無垢だよ」

そう言ってみるが、瞳子の耳には届いていないらしい。

頬に手をやって、何度も可愛いと繰り返している。

「どんな男の子になるのかなー?洋平さんと泉さんの血を引いてるから、絶対に知的でスマートよね?楽しみだなー」

やれやれと大河は肩をすくめる。

「瞳子、よそのうちの赤ちゃんでそんなに盛り上がるなら、自分の赤ちゃんの時はどうなっちゃうんだ?」

すると瞳子は、えっ?!と真顔に戻った。

「私の、赤ちゃん?」

「そうだよ。俺の赤ちゃんでもあるけど」

「大河さんと、私の、赤ちゃん?」

「うん」

大河が頷くと、瞳子はみるみるうちに頬を赤らめてうつむく。

「赤ちゃん、いつか来てくれるかな?」

「ああ、来てくれるよ。可愛い瞳子ママのところに」

「え、そんな…。大河さんとの赤ちゃんだから、大河さんにも似てるわよね?」

「どうだろう?女の子なら、瞳子に似てとびきりの美人だろうな」

「男の子なら、大河さんみたいに、むむっ!て顔で産まれてくるのかな?」

は?と大河は声を上ずらせる。

「何?その、むむっ!て」

「ほら、大河さんの得意顔みたいに、眉間にしわを寄せて、むむっ!てしながら産まれてくるの」

「ちょっと、瞳子?俺の印象どうなってんだ?」

「だから、むむっ!て」

「むむっ!は、もういいっつーの!」

「あはは!その顔がまさにそうよ」

「なんだとー?」

ガバッと瞳子に覆いかぶさると、瞳子は「きゃー!」と声を上げて身を避ける。

「捕まえた!」

大河は瞳子を腕の中に閉じ込めると、そのままソファに押し倒した。

唇が触れそうになるくらいの距離で、二人は互いに見つめ合う。

「瞳子…」

綺麗な瞳で真っ直ぐに見つめてくる瞳子に、大河の胸は切なく傷んだ。

「大河さん…」

名前を囁かれたが最後、大河は一気に瞳子の唇を熱く奪う。

可愛くて、愛おしくて、幸せ過ぎて切なくなる。

大河はありったけの想いをぶつけるように、瞳子を強く抱きしめ、何度も何度も口づけていた。
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