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仕事始め
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次の週の土曜日、4月1日に、佐知と瑠璃はホテルでの撮影に臨んでいた。
まずはホテルの美容室で、ヘアメイクをしてもらう。
鏡に映る自分を見ながら、瑠璃はぼんやりと最近のことを思い出していた。
先週の打ち合わせで撮影のことが決まってから今日まで、仕事の引き継ぎをし、無事に契約満了となった。
仕事がなくなったら、もぬけの殻のようになるかと思っていたが、今日の撮影のことで頭がいっぱいで、実際はそんなに落ち込まずに済んだ。
ヘアメイクのあと、ホテル側が用意してくれた振り袖を着付けてもらう。
準備が整うと、まずは二人の桜並木の撮影から始まった。
カメラマンは、もちろん古谷だ。
気心が知れたもの同士、和やかな雰囲気で撮影は進み、天気に恵まれたこともあって、満開の桜は美しく鮮やかに写真に収まった。
続いては、和食レストランでお花見コースを頂き、茶道体験にも参加させてもらう。
その様子を、古谷が付きっきりで撮影するという形だった。
お料理も美味しく、また、教わりながら自分でお茶を点てたりと、終始佐知と瑠璃は、笑顔で楽しんでいた。
少し休憩を挟んでから、今度はホテルのあちこちで、瑠璃一人での撮影だった。
全て終わったのは夕方5時を過ぎた頃。
私服に着替えると、急に疲れがどっと押し寄せてきた。
「お疲れ様でございました。皆様、本当にありがとうございました」
ロビーラウンジに案内され、お茶を飲んでいると、満面の笑みで青木が声をかけてくれる。
「こちらこそ、お世話になりました。青木さんも1日立ち会ってくださってお疲れでしょう?」
佐知がそう言うと、青木はすぐさま否定する。
「いえ、わたくしは何も。皆様の撮影風景を拝見していると、とても楽しくて。素晴らしい写真になると確信しています」
そしてふと、真剣な表情で瑠璃を見る。
「今後のことなのですが…。古谷様の写真が出来上がり次第、パンフレットのデザインや構成を話し合うことになります。その席に、瑠璃様もご同席頂くことは可能でしょうか?もちろん古谷様と同様に、当ホテルと契約を結び、お給料を支払わせて頂きます。ただ、瑠璃様の職場は、副業を認めていらっしゃるかどうかが気がかりでして…」
「あ、それでしたら私、ちょうど昨日で契約期間終了となりまして…。今日から無職なのです」
「えっ、そうでしたか!」
嬉しそうな表情をしたあと、慌てて青木は真顔に戻る。
「あ、その、失礼致しました」
「いえ、大丈夫です。もともと2年間の契約で、めでたく期間満了となりましたから」
瑠璃が微笑むと、青木はホッとしたように笑った。
「でしたら是非、わたくしども企画広報課で、アルバイトという形でパンフレットの制作に関わって頂けませんか?時給制となりますので、無理にとは申しませんが…」
瑠璃は少し考えてながら口を開く。
「いえ、アルバイトでももちろん構いません。ただ、私のような無能でホテルの知識もない人間が、果たしてお役に立てるかどうか…」
「その点でしたら、あえて今回は知識のまっさらな方の意見を取り入れたいと考えています。お客様に近いお一人として、率直にご意見をうかがえたらと。いかがでしょうか?」
うーん…と瑠璃は考え込む。
やってみたいという気持ちと、果たしてご迷惑にならないかという不安…
どちらも半分ずつという感じで、決断出来ない。
すると、佐知が瑠璃の顔をのぞき込んできた。
「いいお話じゃない。やってみたら?瑠璃ちゃん」
古谷も大きく頷く。
「私も、瑠璃さんが一緒に手伝ってくださると心強いです」
どうしよう、思い切ってやってみようか…
「あの、私なんかで本当に大丈夫でしょうか?」
おずおずとそう確認すると、青木は力強く頷いた。
「もちろんです。今日1日拝見していて、瑠璃様はとても上品で立ち居振る舞いも美しく、ホテルの顔になって頂ける存在だと感じました」
「ええ?!それは買いかぶり過ぎです。そんなふうに言われると、逆に自信が…」
瑠璃がうつむくと、青木は慌てて手を振った。
「あ、いえ、そんな重責を負わせるつもりはなくてですね…。とにかく!そのままの自然体でいてくだされば充分ですから!ぜひとも、お願い致します」
もう一度考えたあと、瑠璃は意を決して頷いた。
「分かりました。私に出来ることを、精いっぱい務めさせて頂きます」
青木はぱっと顔を上げて、満面の笑みを浮かべた。
*
その日の夜遅く、総支配人室で一生は早瀬から、今日のホテルの様子や各部署からの報告を聞いていた。
「こちらは人事部のファイルです。明後日の入社式に向けて、改めて配属先を明記した新入社員の名簿でございます」
受け取って一生はパラパラとめくる。
「それから、企画広報課からの報告です。本日、新しいパンフレットのための撮影を行いました。滞りなく終わり、良い写真に仕上がりそうだとのことです」
「ああ、確かフォトコンテストの最優秀賞のカメラマンだったな」
「さようでございます。お客様モデルにもご協力頂き、より親しみやすいパンフレットにしたいと」
「うん、上がってくるのが楽しみだな」
「はい。それから、企画広報課の課長が、総支配人にアルバイト採用の件でご相談があると…」
一生は、ん?というように視線を上げる。
「アルバイトなら、現場に任せてあるはずだ。課長が採用したい人を採用すればいい。私には、事後報告で大丈夫だ」
「かしこまりました。そのように伝えます」
「企画広報課の課長って、確か早瀬と同期だったよな?」
うーん、と伸びをしながら一生が言う。
「はい。青木とは年齢も同じです」
「最近、企画広報課はずいぶん活発だな。色々と報告が上がってくるし。ホームページやネット配信にも力を入れたいとのことだったから、新入社員は、ウェブデザインが得意な女子を配属させたが、今後もますます楽しみだ。期待していると伝えてくれ」
「はい!ありがとうございます」
早瀬は、自分が褒められたかのように、顔をほころばせた。
*
4月3日の月曜日。
瑠璃はスーツに身を包み、緊張した面持ちでホテルの通路を青木に続いて歩いていく。
今日は、アルバイト採用のための手続きや、顔合わせ、ホテルの館内を案内してもらうことになっていた。
いつものエントランスではなく、従業員用の入口からオフィス棟に入る。
明日からは一人で入らなければならない為、瑠璃はしっかり道順を頭に入れておく。
「企画広報課は、お客様と接する部署ではないから、普段の服装はオフィスカジュアルで大丈夫です。直接オフィス棟の3階に来てくださいね」
「は、はい」
瑠璃がガチガチになって返事をすると、青木は振り返って笑いかけた。
「そんなに緊張しないで。うちの課は、なんていうか、ホテルらしくないノリの連中ばかりだから。それにちょうど今日、入社式が午前中にあったんだ。うちの課にも女子社員が一人配属されることになってる。今はお昼休憩で、1時にこちらに来るから、一緒に紹介するね」
再びガチガチの返事をする瑠璃に、ふふっと笑ってから、青木は会議室のドアを開けた。
履歴書を渡し、アルバイトについて、青木からひと通り説明を受け、書類にサインする。
すると、入口のドアをノックする音がした。
「お、来たかな。はーい、どうぞ」
青木が大きな声でドアを振り返ると、失礼しますと言って、紺のスーツを着た女の子が頭を下げながら入ってきた。
瑠璃と同じように、ガチガチに緊張している。
「あの、私、こちらに配属されました、新入社員の小山 奈々と申します。よろしくお願いします」
下を向いたままそう言うと、さらに頭を低くしてお辞儀をした。
「初めまして。私は企画広報課の課長をしている、青木 優太です。そしてこちらが…」
瑠璃は慌てて立ち上がる。
「今日からアルバイトとして来てくれることになった、えーっと名字忘れちゃった、ハハ。瑠璃さんです」
「初めまして。早乙女 瑠璃と申します。よろしくお願い致します」
「そうそう、早乙女 瑠璃さん。二人とも、ちょうど同じ日にスタートだし、心強いでしょ?良かったね」
青木の言葉に、奈々と瑠璃はお互い顔を見合わせ、はにかんだ笑顔で頷いた。
*
「はーい、みんな。待望の女性陣をお連れしましたよー」
青木がそう言いながら、『企画広報課』と書かれたドアを開けると、うえーい!と野太い声が響き渡った。
瑠璃と奈々は、びっくりして思わず後ずさる。
「ほらみんな、もっと紳士的に!早々に嫌われるぞ?」
そう言って青木は瑠璃達を振り返る。
「ごめんね、大丈夫だから。どうぞ入って」
「は、はい。失礼します」
おずおずと、奈々に続いて瑠璃も前に並ぶ。
「えー、こちらが新入社員の小山 奈々さんです。そしてそのお隣が、アルバイトとして手伝ってもらうことになった、早乙女 瑠璃さん」
二人それぞれ自己紹介して、よろしくお願いしますと頭を下げる。
「うおー!奈々ちゃんに瑠璃ちゃん。よろしくねー!」
「待ってましたー!俺は加藤でーす」
「俺は山下、25歳。絶賛彼女募集中でーす!」
「お前っ、ずるいぞ!」
ワイワイと賑やかな雰囲気に押され気味の瑠璃と奈々だったが、やがて二人目が合うと、ふふっと笑い合った。
*
「いたた、足が…」
「大丈夫?少し休む?」
ホテルの館内を青木に案内してもらったあと、定時の17時になり、二人は連れ立ってホテルをあとにした。
駅への連絡路を歩くにもパンプスの靴ずれが痛そうな奈々に、瑠璃は近くのコーヒーショップで休憩しようと声をかけた。
ドリンクを手に二人掛けのテーブルに着くと、奈々はホッとしたように息を吐いた。
「はあ、疲れた…」
「朝から入社式だったんでしょう?そのあとも館内あちこち歩いたし、初日で緊張したものね。今日はゆっくり休んでね」
「ありがとう。あの、私も瑠璃ちゃんって呼んでもいい?」
「え?ああ、もちろん。私も奈々ちゃんって呼んでもいいかしら?」
「うん!」
そして二人して、照れ笑いをする。
「瑠璃ちゃんは、明日何時出勤なの?」
「私は明日、13時に来るように言われてるの。奈々ちゃん達は、新入社員のオリエンテーションが午前中にあるんでしょう?」
「そう。瑠璃ちゃんも新入社員だったら心強かったのになあ。でも、午後からは一緒だもんね。頑張ってくる!」
「うん、待ってるね」
そしてお互い連絡先を交換して、また明日ね!と手を振って別れた。
瑠璃は、新しい環境に緊張しつつも、新たな出会いになんだかワクワクしていた。
*
「この写真、もう少し右端にした方がいいかな?」
奈々がパソコンのマウスを動かしながら、画面に映る写真の1つを右にずらしてみせる。
「うーん、そうだね。その辺りがいいかも。大きさはどうする?」
瑠璃の問いかけに、今度は奈々が、うーんと考え込む。
「このくらいでどう?」
「あ、いいかも!そのバランスでいいと思う」
古谷から写真が上がってくると、青木は奈々と瑠璃に、まずは二人で自由にデザインしてみて、と言い、二人はあれこれ相談しながら手探りで作っていた。
最初、写真に写っているのが瑠璃であることに奈々は驚いていたが、じっくり見てから、とてもすてき!と言ってくれた。
既存のパンフレットや、他のホテルのものも参考にしながら、二人でああでもない、こうでもないと言いつつ作っていく作業はとてもおもしろく、瑠璃は定時になっても気づかないほど、毎日熱中していた。
奈々のパソコンのスキルは素晴らしく、デザインのセンスもとてもいい。
瑠璃は、サクサクと手早く作業する奈々を、とてもうらやましく、そして頼もしく思っていた。
時々青木が様子を見に来てくれ、へえー、いい感じだねと言ってもらうと、瑠璃と奈々は嬉しさに笑顔で頷き合った。
やがてパンフレットのデザインと並行して、SNSでホテルの様子を発信する業務も任されるようになった。
これなら自分にも出来ると、瑠璃は、庭に咲き始めたハナミズキやツツジを写真に撮って紹介したり、5月に始まるバラフェアの予告を記事にしたりする。
必ず青木のチェックを受けてから更新するのだが、やっぱり女性の目線って違うんだなあと妙に感心された。
あっという間に時間は過ぎていき、やりがいのある仕事と働きやすい環境に、瑠璃は充実感でいっぱいだった。
*
オフィス棟の2階。
毎朝、朝礼を行う会議室で、早瀬はいつものように各部署の部長と課長から報告を受けていた。
内容によって、総支配人に伝えた方がいいと早瀬が判断した案件は、そのあとすぐ一生に伝えている。
今日は特に急ぎの案件はなさそうだった。
夜に、1日の報告としてまとめて伝えればいいだろう。
解散後、ふと企画広報課からの資料に目を留める。
まだ制作途中だが、一度総支配人に目を通して頂いて、ご意見をうかがいたいとのことでパンフレットの試作が提出されていた。
表紙は、ホテルのエントランスの写真。
色合いはシックで、文字も敢えてダークトーン、フォントやバランスもいい。
ホテルの高級感だけでなく、センスのよさも感じられる。
(新入社員のデザインか。なかなかいい)
そう思いながら、次のページをめくる。
今度は明るく開放的なイメージだ。
吹き抜けのロビーやシャンデリア、繊細な壁の彫刻、そして庭に咲くきれいな花々と、思わずスタッフですら見落としてしまいそうな細部を、丁寧にクローズアップしている。
(へえ、うちのホテルじゃないみたいだな。こんな見え方もあるのか…ん?)
ふと早瀬は、桜並木の写真に目を留める。
大きくはないが、その写真に写っている母と娘のような二人の面影は、なんとなく見覚えがある。
(この横顔…もしや!)
慌てて部屋を飛び出し、廊下の先を歩くうしろ姿に呼びかける。
「課長!おい、青木!!」
呼ばれてゆっくり振り向いた青木は、意外そうな顔をした。
「なんだ?どうしたんだ、早瀬」
「お前、ちょっと、これ!」
急いで駆け寄り、パンフレットを見せる。
「ああ、なかなかいいだろう?新入社員とアルバイトの女子コンビの作品だよ。いやー、うちの課も一気に華やいで、男子達も張り切っちゃって…」
「お前、この写真、フォトコンテストの最優秀者に頼んだって言ってたよな?彼の知り合いのお客様をモデルにしてって」
「ああ、そうだよ。古谷さんに撮影依頼したら、あのコンテストの写真もパンフレットに使いたいって。で、その時のモデルさんとその付き添いの方に、もう一度撮影お願いしたんだ。そう報告してあっただろ?」
「ちょ、ちょっと待て」
口ではそう言いつつ、実際には自分を落ち着かせようとしていた。
深呼吸してから、早瀬は口を開く。
「報告では、最優秀賞のカメラマンが、お知り合いをモデルにして撮影したってことだった。4月の1日だったか?」
「そうだよ。それがなんだ?」
「そのお知り合いが、コンテストの写真のモデルの方だとは聞いてないぞ!」
「そうだっけか?でもそれがなんだ?何か問題でも?」
「その方…オリオンツーリストの御曹司のフィアンセだ!隣に写る方は、はっきり認識出来ないがおそらく社長夫人!」
えっ…と、青木の顔から血の気が引く。
「ちょ、ちょっと待て。俺…コンテストの写真のモデルさんだってことしか知らなくて…。もしかして、瑠璃ちゃんをアルバイトに雇ってることも、マズイんじゃ…」
「な、何?瑠璃ちゃんって誰だ?」
「だから、その…コンテストの写真のモデルさん。一応、総支配人には相談しようとしたぞ?その方をアルバイトに雇ってもいいかって。でもお前が、現場の俺がいいなら大丈夫だって…」
(な、なんと…)
早瀬はもはや絶句し、意識が遠のくのを感じた。
*
「この度は、わたくしの監督不行届でこのような事態を招き、大変申し訳ございませんでした」
深々と頭を下げる一生に続き、申し訳ございませんでした!と声を張り上げて青木が頭を下げる。
その隣で早瀬も続いた。
総支配人室のソファに座った佐知は、三人に頭を下げられ、はあと大きく息を吐いた。
「顔を上げてちょうだい」
ためらったあと、ゆっくりと一生達は顔を上げる。
「一生さん」
「はい」
「私はとても残念です」
「はい。このようなことになったのは、私の責任です。澤山様に大変なご迷惑と…」
「いいえ、そうではありません」
ピシャリと遮って、佐知は一生を見据える。
「私が残念なのは、一生さんが私を呼び出し、青木さん達に頭を下げさせたことです」
「…は?とおっしゃいますのは」
佐知はまたもやため息をつく。
一生は姿勢を正して言葉を待つ。
「私が今回、お客様モデルとして撮影をお引き受けしたのは、私の意思です。主人にも確認を取り、この写真なら顔が判別出来ないから、問題ないと許可をもらいました。そもそも私は、主人の会社の役員でも何でもありませんからね。私はあくまで、このホテルのお客様の一人という立場で参加しました。そしてそれは瑠璃ちゃんも同じです」
「はっ。それは大変ありがたく光栄なお言葉です。せめて心ばかりですが感謝の意を受け取って頂きたく…」
「結構です」
またもや冷たく佐知が言う。
「私も瑠璃ちゃんも、そんなつもりでお引き受けしたのではありません」
「は、はい。失礼致しました。それではあの、瑠璃様が、畏れ多くも当ホテルで働いてくださっていることに関しては、今一度話し合い、改善を…」
「なぜですか?」
「それは、その。ご子息のフィアンセともあろう方が、当ホテルでアルバイトなど…」
「瑠璃ちゃんは瑠璃ちゃんです。早乙女 瑠璃という一人の女性です。それ以外の肩書きで判断するのは失礼な話ですよ」
「はいっ…」
もはや一生は、なにも言葉が出て来なかった。
佐知はゆっくり立ち上がると、青木の前に歩み出る。
「青木さん、瑠璃ちゃんを雇ってくださってありがとう」
「はっ!いえ、その、自分はなにも…」
佐知は、視線を落として優しく笑いながら話す。
「瑠璃ちゃん、毎日とても楽しそうなのよ。青木さんや周りの皆さんも優しいし、仲のよいお友達も出来たって。おば様の写真を使ってすてきなパンフレットにするから、待っててねと電話をくれてね。青木さん、どうぞこれからも、変わらぬ態度で瑠璃ちゃんに接してあげてくださいね」
「は、はい!かしこまりました」
佐知は頷くと、一生を振り返る。
「一生さん。青木さんを褒めこそすれ、叱るなんてもってのほかですよ。そして今日のことも、瑠璃ちゃんには決して話さぬように…いいですね?」
「はい。承知致しました」
佐知はようやく一生に微笑むと、その場にいる三人を見渡し、
「皆様、どうか瑠璃ちゃんのことを、くれぐれもよろしくお願い致します」
真剣な表情で深々と頭を下げた。
まずはホテルの美容室で、ヘアメイクをしてもらう。
鏡に映る自分を見ながら、瑠璃はぼんやりと最近のことを思い出していた。
先週の打ち合わせで撮影のことが決まってから今日まで、仕事の引き継ぎをし、無事に契約満了となった。
仕事がなくなったら、もぬけの殻のようになるかと思っていたが、今日の撮影のことで頭がいっぱいで、実際はそんなに落ち込まずに済んだ。
ヘアメイクのあと、ホテル側が用意してくれた振り袖を着付けてもらう。
準備が整うと、まずは二人の桜並木の撮影から始まった。
カメラマンは、もちろん古谷だ。
気心が知れたもの同士、和やかな雰囲気で撮影は進み、天気に恵まれたこともあって、満開の桜は美しく鮮やかに写真に収まった。
続いては、和食レストランでお花見コースを頂き、茶道体験にも参加させてもらう。
その様子を、古谷が付きっきりで撮影するという形だった。
お料理も美味しく、また、教わりながら自分でお茶を点てたりと、終始佐知と瑠璃は、笑顔で楽しんでいた。
少し休憩を挟んでから、今度はホテルのあちこちで、瑠璃一人での撮影だった。
全て終わったのは夕方5時を過ぎた頃。
私服に着替えると、急に疲れがどっと押し寄せてきた。
「お疲れ様でございました。皆様、本当にありがとうございました」
ロビーラウンジに案内され、お茶を飲んでいると、満面の笑みで青木が声をかけてくれる。
「こちらこそ、お世話になりました。青木さんも1日立ち会ってくださってお疲れでしょう?」
佐知がそう言うと、青木はすぐさま否定する。
「いえ、わたくしは何も。皆様の撮影風景を拝見していると、とても楽しくて。素晴らしい写真になると確信しています」
そしてふと、真剣な表情で瑠璃を見る。
「今後のことなのですが…。古谷様の写真が出来上がり次第、パンフレットのデザインや構成を話し合うことになります。その席に、瑠璃様もご同席頂くことは可能でしょうか?もちろん古谷様と同様に、当ホテルと契約を結び、お給料を支払わせて頂きます。ただ、瑠璃様の職場は、副業を認めていらっしゃるかどうかが気がかりでして…」
「あ、それでしたら私、ちょうど昨日で契約期間終了となりまして…。今日から無職なのです」
「えっ、そうでしたか!」
嬉しそうな表情をしたあと、慌てて青木は真顔に戻る。
「あ、その、失礼致しました」
「いえ、大丈夫です。もともと2年間の契約で、めでたく期間満了となりましたから」
瑠璃が微笑むと、青木はホッとしたように笑った。
「でしたら是非、わたくしども企画広報課で、アルバイトという形でパンフレットの制作に関わって頂けませんか?時給制となりますので、無理にとは申しませんが…」
瑠璃は少し考えてながら口を開く。
「いえ、アルバイトでももちろん構いません。ただ、私のような無能でホテルの知識もない人間が、果たしてお役に立てるかどうか…」
「その点でしたら、あえて今回は知識のまっさらな方の意見を取り入れたいと考えています。お客様に近いお一人として、率直にご意見をうかがえたらと。いかがでしょうか?」
うーん…と瑠璃は考え込む。
やってみたいという気持ちと、果たしてご迷惑にならないかという不安…
どちらも半分ずつという感じで、決断出来ない。
すると、佐知が瑠璃の顔をのぞき込んできた。
「いいお話じゃない。やってみたら?瑠璃ちゃん」
古谷も大きく頷く。
「私も、瑠璃さんが一緒に手伝ってくださると心強いです」
どうしよう、思い切ってやってみようか…
「あの、私なんかで本当に大丈夫でしょうか?」
おずおずとそう確認すると、青木は力強く頷いた。
「もちろんです。今日1日拝見していて、瑠璃様はとても上品で立ち居振る舞いも美しく、ホテルの顔になって頂ける存在だと感じました」
「ええ?!それは買いかぶり過ぎです。そんなふうに言われると、逆に自信が…」
瑠璃がうつむくと、青木は慌てて手を振った。
「あ、いえ、そんな重責を負わせるつもりはなくてですね…。とにかく!そのままの自然体でいてくだされば充分ですから!ぜひとも、お願い致します」
もう一度考えたあと、瑠璃は意を決して頷いた。
「分かりました。私に出来ることを、精いっぱい務めさせて頂きます」
青木はぱっと顔を上げて、満面の笑みを浮かべた。
*
その日の夜遅く、総支配人室で一生は早瀬から、今日のホテルの様子や各部署からの報告を聞いていた。
「こちらは人事部のファイルです。明後日の入社式に向けて、改めて配属先を明記した新入社員の名簿でございます」
受け取って一生はパラパラとめくる。
「それから、企画広報課からの報告です。本日、新しいパンフレットのための撮影を行いました。滞りなく終わり、良い写真に仕上がりそうだとのことです」
「ああ、確かフォトコンテストの最優秀賞のカメラマンだったな」
「さようでございます。お客様モデルにもご協力頂き、より親しみやすいパンフレットにしたいと」
「うん、上がってくるのが楽しみだな」
「はい。それから、企画広報課の課長が、総支配人にアルバイト採用の件でご相談があると…」
一生は、ん?というように視線を上げる。
「アルバイトなら、現場に任せてあるはずだ。課長が採用したい人を採用すればいい。私には、事後報告で大丈夫だ」
「かしこまりました。そのように伝えます」
「企画広報課の課長って、確か早瀬と同期だったよな?」
うーん、と伸びをしながら一生が言う。
「はい。青木とは年齢も同じです」
「最近、企画広報課はずいぶん活発だな。色々と報告が上がってくるし。ホームページやネット配信にも力を入れたいとのことだったから、新入社員は、ウェブデザインが得意な女子を配属させたが、今後もますます楽しみだ。期待していると伝えてくれ」
「はい!ありがとうございます」
早瀬は、自分が褒められたかのように、顔をほころばせた。
*
4月3日の月曜日。
瑠璃はスーツに身を包み、緊張した面持ちでホテルの通路を青木に続いて歩いていく。
今日は、アルバイト採用のための手続きや、顔合わせ、ホテルの館内を案内してもらうことになっていた。
いつものエントランスではなく、従業員用の入口からオフィス棟に入る。
明日からは一人で入らなければならない為、瑠璃はしっかり道順を頭に入れておく。
「企画広報課は、お客様と接する部署ではないから、普段の服装はオフィスカジュアルで大丈夫です。直接オフィス棟の3階に来てくださいね」
「は、はい」
瑠璃がガチガチになって返事をすると、青木は振り返って笑いかけた。
「そんなに緊張しないで。うちの課は、なんていうか、ホテルらしくないノリの連中ばかりだから。それにちょうど今日、入社式が午前中にあったんだ。うちの課にも女子社員が一人配属されることになってる。今はお昼休憩で、1時にこちらに来るから、一緒に紹介するね」
再びガチガチの返事をする瑠璃に、ふふっと笑ってから、青木は会議室のドアを開けた。
履歴書を渡し、アルバイトについて、青木からひと通り説明を受け、書類にサインする。
すると、入口のドアをノックする音がした。
「お、来たかな。はーい、どうぞ」
青木が大きな声でドアを振り返ると、失礼しますと言って、紺のスーツを着た女の子が頭を下げながら入ってきた。
瑠璃と同じように、ガチガチに緊張している。
「あの、私、こちらに配属されました、新入社員の小山 奈々と申します。よろしくお願いします」
下を向いたままそう言うと、さらに頭を低くしてお辞儀をした。
「初めまして。私は企画広報課の課長をしている、青木 優太です。そしてこちらが…」
瑠璃は慌てて立ち上がる。
「今日からアルバイトとして来てくれることになった、えーっと名字忘れちゃった、ハハ。瑠璃さんです」
「初めまして。早乙女 瑠璃と申します。よろしくお願い致します」
「そうそう、早乙女 瑠璃さん。二人とも、ちょうど同じ日にスタートだし、心強いでしょ?良かったね」
青木の言葉に、奈々と瑠璃はお互い顔を見合わせ、はにかんだ笑顔で頷いた。
*
「はーい、みんな。待望の女性陣をお連れしましたよー」
青木がそう言いながら、『企画広報課』と書かれたドアを開けると、うえーい!と野太い声が響き渡った。
瑠璃と奈々は、びっくりして思わず後ずさる。
「ほらみんな、もっと紳士的に!早々に嫌われるぞ?」
そう言って青木は瑠璃達を振り返る。
「ごめんね、大丈夫だから。どうぞ入って」
「は、はい。失礼します」
おずおずと、奈々に続いて瑠璃も前に並ぶ。
「えー、こちらが新入社員の小山 奈々さんです。そしてそのお隣が、アルバイトとして手伝ってもらうことになった、早乙女 瑠璃さん」
二人それぞれ自己紹介して、よろしくお願いしますと頭を下げる。
「うおー!奈々ちゃんに瑠璃ちゃん。よろしくねー!」
「待ってましたー!俺は加藤でーす」
「俺は山下、25歳。絶賛彼女募集中でーす!」
「お前っ、ずるいぞ!」
ワイワイと賑やかな雰囲気に押され気味の瑠璃と奈々だったが、やがて二人目が合うと、ふふっと笑い合った。
*
「いたた、足が…」
「大丈夫?少し休む?」
ホテルの館内を青木に案内してもらったあと、定時の17時になり、二人は連れ立ってホテルをあとにした。
駅への連絡路を歩くにもパンプスの靴ずれが痛そうな奈々に、瑠璃は近くのコーヒーショップで休憩しようと声をかけた。
ドリンクを手に二人掛けのテーブルに着くと、奈々はホッとしたように息を吐いた。
「はあ、疲れた…」
「朝から入社式だったんでしょう?そのあとも館内あちこち歩いたし、初日で緊張したものね。今日はゆっくり休んでね」
「ありがとう。あの、私も瑠璃ちゃんって呼んでもいい?」
「え?ああ、もちろん。私も奈々ちゃんって呼んでもいいかしら?」
「うん!」
そして二人して、照れ笑いをする。
「瑠璃ちゃんは、明日何時出勤なの?」
「私は明日、13時に来るように言われてるの。奈々ちゃん達は、新入社員のオリエンテーションが午前中にあるんでしょう?」
「そう。瑠璃ちゃんも新入社員だったら心強かったのになあ。でも、午後からは一緒だもんね。頑張ってくる!」
「うん、待ってるね」
そしてお互い連絡先を交換して、また明日ね!と手を振って別れた。
瑠璃は、新しい環境に緊張しつつも、新たな出会いになんだかワクワクしていた。
*
「この写真、もう少し右端にした方がいいかな?」
奈々がパソコンのマウスを動かしながら、画面に映る写真の1つを右にずらしてみせる。
「うーん、そうだね。その辺りがいいかも。大きさはどうする?」
瑠璃の問いかけに、今度は奈々が、うーんと考え込む。
「このくらいでどう?」
「あ、いいかも!そのバランスでいいと思う」
古谷から写真が上がってくると、青木は奈々と瑠璃に、まずは二人で自由にデザインしてみて、と言い、二人はあれこれ相談しながら手探りで作っていた。
最初、写真に写っているのが瑠璃であることに奈々は驚いていたが、じっくり見てから、とてもすてき!と言ってくれた。
既存のパンフレットや、他のホテルのものも参考にしながら、二人でああでもない、こうでもないと言いつつ作っていく作業はとてもおもしろく、瑠璃は定時になっても気づかないほど、毎日熱中していた。
奈々のパソコンのスキルは素晴らしく、デザインのセンスもとてもいい。
瑠璃は、サクサクと手早く作業する奈々を、とてもうらやましく、そして頼もしく思っていた。
時々青木が様子を見に来てくれ、へえー、いい感じだねと言ってもらうと、瑠璃と奈々は嬉しさに笑顔で頷き合った。
やがてパンフレットのデザインと並行して、SNSでホテルの様子を発信する業務も任されるようになった。
これなら自分にも出来ると、瑠璃は、庭に咲き始めたハナミズキやツツジを写真に撮って紹介したり、5月に始まるバラフェアの予告を記事にしたりする。
必ず青木のチェックを受けてから更新するのだが、やっぱり女性の目線って違うんだなあと妙に感心された。
あっという間に時間は過ぎていき、やりがいのある仕事と働きやすい環境に、瑠璃は充実感でいっぱいだった。
*
オフィス棟の2階。
毎朝、朝礼を行う会議室で、早瀬はいつものように各部署の部長と課長から報告を受けていた。
内容によって、総支配人に伝えた方がいいと早瀬が判断した案件は、そのあとすぐ一生に伝えている。
今日は特に急ぎの案件はなさそうだった。
夜に、1日の報告としてまとめて伝えればいいだろう。
解散後、ふと企画広報課からの資料に目を留める。
まだ制作途中だが、一度総支配人に目を通して頂いて、ご意見をうかがいたいとのことでパンフレットの試作が提出されていた。
表紙は、ホテルのエントランスの写真。
色合いはシックで、文字も敢えてダークトーン、フォントやバランスもいい。
ホテルの高級感だけでなく、センスのよさも感じられる。
(新入社員のデザインか。なかなかいい)
そう思いながら、次のページをめくる。
今度は明るく開放的なイメージだ。
吹き抜けのロビーやシャンデリア、繊細な壁の彫刻、そして庭に咲くきれいな花々と、思わずスタッフですら見落としてしまいそうな細部を、丁寧にクローズアップしている。
(へえ、うちのホテルじゃないみたいだな。こんな見え方もあるのか…ん?)
ふと早瀬は、桜並木の写真に目を留める。
大きくはないが、その写真に写っている母と娘のような二人の面影は、なんとなく見覚えがある。
(この横顔…もしや!)
慌てて部屋を飛び出し、廊下の先を歩くうしろ姿に呼びかける。
「課長!おい、青木!!」
呼ばれてゆっくり振り向いた青木は、意外そうな顔をした。
「なんだ?どうしたんだ、早瀬」
「お前、ちょっと、これ!」
急いで駆け寄り、パンフレットを見せる。
「ああ、なかなかいいだろう?新入社員とアルバイトの女子コンビの作品だよ。いやー、うちの課も一気に華やいで、男子達も張り切っちゃって…」
「お前、この写真、フォトコンテストの最優秀者に頼んだって言ってたよな?彼の知り合いのお客様をモデルにしてって」
「ああ、そうだよ。古谷さんに撮影依頼したら、あのコンテストの写真もパンフレットに使いたいって。で、その時のモデルさんとその付き添いの方に、もう一度撮影お願いしたんだ。そう報告してあっただろ?」
「ちょ、ちょっと待て」
口ではそう言いつつ、実際には自分を落ち着かせようとしていた。
深呼吸してから、早瀬は口を開く。
「報告では、最優秀賞のカメラマンが、お知り合いをモデルにして撮影したってことだった。4月の1日だったか?」
「そうだよ。それがなんだ?」
「そのお知り合いが、コンテストの写真のモデルの方だとは聞いてないぞ!」
「そうだっけか?でもそれがなんだ?何か問題でも?」
「その方…オリオンツーリストの御曹司のフィアンセだ!隣に写る方は、はっきり認識出来ないがおそらく社長夫人!」
えっ…と、青木の顔から血の気が引く。
「ちょ、ちょっと待て。俺…コンテストの写真のモデルさんだってことしか知らなくて…。もしかして、瑠璃ちゃんをアルバイトに雇ってることも、マズイんじゃ…」
「な、何?瑠璃ちゃんって誰だ?」
「だから、その…コンテストの写真のモデルさん。一応、総支配人には相談しようとしたぞ?その方をアルバイトに雇ってもいいかって。でもお前が、現場の俺がいいなら大丈夫だって…」
(な、なんと…)
早瀬はもはや絶句し、意識が遠のくのを感じた。
*
「この度は、わたくしの監督不行届でこのような事態を招き、大変申し訳ございませんでした」
深々と頭を下げる一生に続き、申し訳ございませんでした!と声を張り上げて青木が頭を下げる。
その隣で早瀬も続いた。
総支配人室のソファに座った佐知は、三人に頭を下げられ、はあと大きく息を吐いた。
「顔を上げてちょうだい」
ためらったあと、ゆっくりと一生達は顔を上げる。
「一生さん」
「はい」
「私はとても残念です」
「はい。このようなことになったのは、私の責任です。澤山様に大変なご迷惑と…」
「いいえ、そうではありません」
ピシャリと遮って、佐知は一生を見据える。
「私が残念なのは、一生さんが私を呼び出し、青木さん達に頭を下げさせたことです」
「…は?とおっしゃいますのは」
佐知はまたもやため息をつく。
一生は姿勢を正して言葉を待つ。
「私が今回、お客様モデルとして撮影をお引き受けしたのは、私の意思です。主人にも確認を取り、この写真なら顔が判別出来ないから、問題ないと許可をもらいました。そもそも私は、主人の会社の役員でも何でもありませんからね。私はあくまで、このホテルのお客様の一人という立場で参加しました。そしてそれは瑠璃ちゃんも同じです」
「はっ。それは大変ありがたく光栄なお言葉です。せめて心ばかりですが感謝の意を受け取って頂きたく…」
「結構です」
またもや冷たく佐知が言う。
「私も瑠璃ちゃんも、そんなつもりでお引き受けしたのではありません」
「は、はい。失礼致しました。それではあの、瑠璃様が、畏れ多くも当ホテルで働いてくださっていることに関しては、今一度話し合い、改善を…」
「なぜですか?」
「それは、その。ご子息のフィアンセともあろう方が、当ホテルでアルバイトなど…」
「瑠璃ちゃんは瑠璃ちゃんです。早乙女 瑠璃という一人の女性です。それ以外の肩書きで判断するのは失礼な話ですよ」
「はいっ…」
もはや一生は、なにも言葉が出て来なかった。
佐知はゆっくり立ち上がると、青木の前に歩み出る。
「青木さん、瑠璃ちゃんを雇ってくださってありがとう」
「はっ!いえ、その、自分はなにも…」
佐知は、視線を落として優しく笑いながら話す。
「瑠璃ちゃん、毎日とても楽しそうなのよ。青木さんや周りの皆さんも優しいし、仲のよいお友達も出来たって。おば様の写真を使ってすてきなパンフレットにするから、待っててねと電話をくれてね。青木さん、どうぞこれからも、変わらぬ態度で瑠璃ちゃんに接してあげてくださいね」
「は、はい!かしこまりました」
佐知は頷くと、一生を振り返る。
「一生さん。青木さんを褒めこそすれ、叱るなんてもってのほかですよ。そして今日のことも、瑠璃ちゃんには決して話さぬように…いいですね?」
「はい。承知致しました」
佐知はようやく一生に微笑むと、その場にいる三人を見渡し、
「皆様、どうか瑠璃ちゃんのことを、くれぐれもよろしくお願い致します」
真剣な表情で深々と頭を下げた。
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