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三角関係
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穏やかに日々が過ぎていく。
想は新曲を作り始め、しばらくはスタジオに缶詰めになると言っていたが、小夜の誕生日は必ず一緒に過ごすと言ってくれた。
『三月十九日だな。絶対に忘れない。ミュージックの日だ』
「え? あ! そうなんだ」
言われて初めて気づいた。
『音楽の神様が引き会わせてくれたのかもな。俺の運命の人に』
電話越しに真剣にそう言われて、小夜は真っ赤になる。
『もしもし、小夜?』
「は、はい。なんでしょう」
『照れてるだろ』
「…………別に」
『ははっ、わかりやすいな』
むーっと頬を膨らませるが、それもきっと想にはお見通しなのだろう。
『誕生日に会えるのを楽しみにしてる。俺のミューズ(音楽の女神)』
もはや小夜はなにも言葉が出てこない。
想がクスッと笑みをもらす声がした。
『愛してるよ、小夜』
「もう、それ以上言わないで」
『なんでだよ?』
「だって、言われ慣れてなくて……」
『それなら、慣れるまで言い続ける』
「だ、大丈夫! たった今、慣れたから」
想はますますおかしそうに笑う。
『ははっ。じゃあな、小夜。誕生日に俺にたっぷり愛される覚悟しといて』
もはや小夜は仰け反って絶句する。
『やっぱり慣れてないな。俺の小夜、愛し……』
「は、はい! わかりましたとも」
『くくっ、それはよかった。じゃあな、小夜』
「うん。またね、想。お仕事がんばって」
『ありがとう、小夜も』
電話を切ると、小夜はぐったりとベッドにうつ伏せになる。
「はあ、もう身がもたない。幸せすぎて怖いくらい」
こんな日々がずっと続いてくれるのだろうか。
そうだといい。
小夜は心からそう願った。
◇
「小夜。お前の相手って、シンガーソングライターの想か?」
三月に入ってすぐ、いきなり職場で光にそう切り出され、小夜は思わず固まった。
「やっぱりか。バレンタインコンサートで見かけてから、ずっと誰かに似てるって気になってた」
バレンタインコンサートで?
想もあの時、バーにいたということなのだろうか。
いや、それよりも今は。
「待って、お願い光くん。誰にも言わないで」
小夜は辺りを気にしながら小声で詰め寄った。
「お願いだからこのことは内緒にしてて。お願いします」
必死で手を合わせてそう言うと、光は大きくため息をつく。
「小夜にこんなこと言わせるなんて……。それで小夜は幸せなのか? 人に言えないような相手と、こそこそつき合って。外でデートもできないだろ? 堂々と宣言しないあいつが許せない」
「違うの、光くん。秘密にしててって言ったのは私の方で……」
「言わせたのはあいつだろ!」
鋭い声で言われて、小夜は思わず言葉を呑み込む。
光は真剣な顔で小夜に向き合った。
「小夜が幸せなら俺は身を引く。けどそうじゃないなら、少しでも小夜を泣かせたりしたら、その時は……」
光はギラッと目の色を変える。
「あいつから奪ってやる」
強い眼差しに圧倒されて、小夜はなにも言い返せない。
「あいつにそう言っといて。じゃあ」
光が立ち去っても、小夜は呆然と立ち尽くしていた。
◇
気がかりはありつつも、小夜は仕事では淡々と光に接する。
そしていよいよ、小夜の誕生日がやって来た。
「小夜、二十四歳おめでとう!」
出勤すると、店長が真っ先にそう声をかけてくれる。
「はい、プレゼント。小夜、入荷した時にこれいいなって言ってたでしょ?」
手渡されたのは、店頭でも販売しているテーブルランプ。
グランドピアノの陶器の上のシェードは、明かりをつけると細かい音符が浮かび上がるデザインだった。
「わあ、ありがとうございます! 店長」
「喜んでもらえてよかったわ。社員割引も効いたし、売り上げにも貢献できて一石二鳥よ。小夜、いつもありがとう。これからもよろしくね」
「こちらこそ。よろしくお願いします」
他の同僚も、お菓子やプチギフトを渡してお祝いしてくれる。
小夜は皆に笑顔でお礼を言った。
「小夜、おめでとう」
最後に光が小夜にCDをプレゼントする。
「俺のお気に入りのピアニストが演奏してるジャズのCDなんだ」
「そうなのね。ありがとう、光くん。早速うちで聴かせてもらうね」
「ああ」
久しぶりに普通の会話を交わした。
両手いっぱいにプレゼントを抱えて笑みを浮かべる小夜を、光はじっと見つめる。
「……夜はあいつと会うのか?」
「え? あ、うん」
「そうか」
それだけ言うと、光はスッと小夜の横をすり抜けてカウンターに入っていった。
想は新曲を作り始め、しばらくはスタジオに缶詰めになると言っていたが、小夜の誕生日は必ず一緒に過ごすと言ってくれた。
『三月十九日だな。絶対に忘れない。ミュージックの日だ』
「え? あ! そうなんだ」
言われて初めて気づいた。
『音楽の神様が引き会わせてくれたのかもな。俺の運命の人に』
電話越しに真剣にそう言われて、小夜は真っ赤になる。
『もしもし、小夜?』
「は、はい。なんでしょう」
『照れてるだろ』
「…………別に」
『ははっ、わかりやすいな』
むーっと頬を膨らませるが、それもきっと想にはお見通しなのだろう。
『誕生日に会えるのを楽しみにしてる。俺のミューズ(音楽の女神)』
もはや小夜はなにも言葉が出てこない。
想がクスッと笑みをもらす声がした。
『愛してるよ、小夜』
「もう、それ以上言わないで」
『なんでだよ?』
「だって、言われ慣れてなくて……」
『それなら、慣れるまで言い続ける』
「だ、大丈夫! たった今、慣れたから」
想はますますおかしそうに笑う。
『ははっ。じゃあな、小夜。誕生日に俺にたっぷり愛される覚悟しといて』
もはや小夜は仰け反って絶句する。
『やっぱり慣れてないな。俺の小夜、愛し……』
「は、はい! わかりましたとも」
『くくっ、それはよかった。じゃあな、小夜』
「うん。またね、想。お仕事がんばって」
『ありがとう、小夜も』
電話を切ると、小夜はぐったりとベッドにうつ伏せになる。
「はあ、もう身がもたない。幸せすぎて怖いくらい」
こんな日々がずっと続いてくれるのだろうか。
そうだといい。
小夜は心からそう願った。
◇
「小夜。お前の相手って、シンガーソングライターの想か?」
三月に入ってすぐ、いきなり職場で光にそう切り出され、小夜は思わず固まった。
「やっぱりか。バレンタインコンサートで見かけてから、ずっと誰かに似てるって気になってた」
バレンタインコンサートで?
想もあの時、バーにいたということなのだろうか。
いや、それよりも今は。
「待って、お願い光くん。誰にも言わないで」
小夜は辺りを気にしながら小声で詰め寄った。
「お願いだからこのことは内緒にしてて。お願いします」
必死で手を合わせてそう言うと、光は大きくため息をつく。
「小夜にこんなこと言わせるなんて……。それで小夜は幸せなのか? 人に言えないような相手と、こそこそつき合って。外でデートもできないだろ? 堂々と宣言しないあいつが許せない」
「違うの、光くん。秘密にしててって言ったのは私の方で……」
「言わせたのはあいつだろ!」
鋭い声で言われて、小夜は思わず言葉を呑み込む。
光は真剣な顔で小夜に向き合った。
「小夜が幸せなら俺は身を引く。けどそうじゃないなら、少しでも小夜を泣かせたりしたら、その時は……」
光はギラッと目の色を変える。
「あいつから奪ってやる」
強い眼差しに圧倒されて、小夜はなにも言い返せない。
「あいつにそう言っといて。じゃあ」
光が立ち去っても、小夜は呆然と立ち尽くしていた。
◇
気がかりはありつつも、小夜は仕事では淡々と光に接する。
そしていよいよ、小夜の誕生日がやって来た。
「小夜、二十四歳おめでとう!」
出勤すると、店長が真っ先にそう声をかけてくれる。
「はい、プレゼント。小夜、入荷した時にこれいいなって言ってたでしょ?」
手渡されたのは、店頭でも販売しているテーブルランプ。
グランドピアノの陶器の上のシェードは、明かりをつけると細かい音符が浮かび上がるデザインだった。
「わあ、ありがとうございます! 店長」
「喜んでもらえてよかったわ。社員割引も効いたし、売り上げにも貢献できて一石二鳥よ。小夜、いつもありがとう。これからもよろしくね」
「こちらこそ。よろしくお願いします」
他の同僚も、お菓子やプチギフトを渡してお祝いしてくれる。
小夜は皆に笑顔でお礼を言った。
「小夜、おめでとう」
最後に光が小夜にCDをプレゼントする。
「俺のお気に入りのピアニストが演奏してるジャズのCDなんだ」
「そうなのね。ありがとう、光くん。早速うちで聴かせてもらうね」
「ああ」
久しぶりに普通の会話を交わした。
両手いっぱいにプレゼントを抱えて笑みを浮かべる小夜を、光はじっと見つめる。
「……夜はあいつと会うのか?」
「え? あ、うん」
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