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明るく愉快な人気者?
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「すみれちゃーん!お帰りなさい」
ナーサリーに入って来たすみれを、小雪はギュッと抱きしめる。
「どうだった?京都は。楽しかった?」
「うん!たくさんたのしいことあったの」
「そう、良かったね。今日は色々お話聞かせてね」
小雪は立ち上がって、瑠璃にも声をかける。
「体調は大丈夫でしたか?」
「ええ、大丈夫。帰ってから2日間お休みしてたから、すっかり疲れも取れたし。あ、小雪先生、これお土産です」
「え?ありがとうございます!そんな、お気遣い頂いてすみません」
「いえ。では、今日からまたよろしくお願いします」
「はい。今日も安全にお預かりしますね」
そしてすみれと一緒に、行ってらっしゃいと笑顔で瑠璃を見送った。
◇
「それでね、これがしんかんせん。びゅーんて、とてもはやいの。それに、アイスクリームもたべたの!」
すみれはクレヨンでお絵描きをしながら、興奮冷めやらぬように小雪に話してくれる。
「新幹線、上手に描けてるね!アイスクリームもおいしかった?」
「うん!すごーくおいしかった。それでね、ホテルのおへやもひろくてね…」
スケッチブックのページをめくりながら、すみれは次々と絵を描いていく。
「あら、これは誰かしら?」
「きよじいじ!それと、ひいおばあさまと、れいかおねえさん」
「へえー、すみれちゃん、色んな人に会えたのね。みんなニッコリしていて優しそうなお顔ね」
「うん!みんな、とてもやさしいの」
そう、と小雪は微笑みながら見守る。
「すみれちゃんのお話を聞いてると、なんだか私まで嬉しくなっちゃう。楽しい旅行で良かったね」
うん!と笑顔で小雪を見上げた後、すみれが、あ!と入り口のガラスの扉を指差した。
「かなおねえさん!」
小雪も振り向くと、美容室で働く叶恵がこちらに手を振っているのが見えた。
他のお子様がいないか奥を覗き込んでから、だいじょうぶ?と口を動かして小雪に尋ねる。
小雪が頷くと、叶恵は嬉しそうに部屋に入って来た。
「すみれちゃーん!」
「かなおねえさん!」
すみれは、両手を広げた叶恵に駆け寄ってギューッと抱きつく。
「元気だった?しばらく会えなくて寂しかったのよー」
叶恵はすみれの顔に頬ずりして抱きしめる。
こんなふうに叶恵は、他のお子様がいない時は、すみれに会いにナーサリーに立ち寄る事がよくあった。
「京都はどうだった?楽しかった?」
「うん!かなおねえさんのおみやげも、かあさまとえらんだの」
「えー、本当?嬉しいな」
「はやせさんにわたすって、とうさまが」
「うふふ、そっか。しっかりしてるね、すみれちゃん。お土産、楽しみにしてるね」
じゃあねーと、すみれと小雪に手を振って、叶恵は仕事に戻って行った。
またお絵描きを始めたすみれの横で、小雪はちょっと首をかしげて考える。
(さっきすみれちゃん、はやせさんって言ったわよね?はやせさん…おとといヘラヘラ星人さんが、総支配人の秘書の名前をはやせさんって言ってたけど、同じ人なのかしら。叶恵さんのお土産をはやせさんに渡すってどういう事?)
するとまたすみれが、あっ!と入り口に目を向ける。
叶恵が戻って来たのかと思ったがそうではなく、そこに立っていたのは山下だった。
ニコニコとすみれに手を振った後、そっと扉を開けて小雪に声をかける。
「今、大丈夫?」
「あ、はい。すみれちゃんだけなので」
山下は部屋に入ってくると、靴を脱いで絨毯に上がる。
「すみれちゃん、お兄ちゃんを覚えてるかな?りょうお兄ちゃんだよー」
すみれはちょっと恥ずかしそうに、こくんと頷く。
「わー、嬉しいな。お絵描きしてるの?新幹線かな、上手だねー。これは誰?」
「…きよじいじ」
小声ですみれが答える。
「え、おじいさん?あ!ひょっとして、清河さんかな?すごい!似てるね」
へえーと感心したようにすみれのスケッチブックを覗き込んでから、あ、ごめんね、邪魔しちゃったねと笑いかける。
そして山下は、小雪に向き合った。
「足の具合はどう?今日も休んでると思ったのに、瑠璃ちゃんが出勤して来たから、もしやと思って見に来たんだ」
「あ、はい。昨日ゆっくり休んだので、もう普通に歩けるようになりました」
「そう?ちょっと見せて」
山下は、小雪が伸ばした右足にそっと手を添えて確かめる。
「うん、腫れも引いてるね。でもまだ無理はしないように。走ったりしゃがんだりしちゃだめだよ」
はい、と小雪が頷くと、じっと様子をうかがっていたすみれが遠慮がちに聞いてくる。
「りょうおにいさん、おいしゃさまなの?」
「ん?あはは!違うよ、すみれちゃん。りょうお兄ちゃんはね、明るく愉快なみんなの人気者なんだよ」
すみれと小雪は、シーン…と静まり返る。
んんっ!と咳払いすると、山下はバツが悪そうに立ち上がった。
「じゃあ、またね。お大事に」
そしてトボトボと部屋を出て行った。
すみれと小雪は、気を取り直してお絵描きに戻る。
すると、ふと手を止めてすみれが呟いた。
「あかるくゆかいなにんきもの…」
「す、すみれちゃん?そこはあんまり気にしなくてもいいのよ?」
小雪が思わず真顔ですみれに言う。
すみれはまたクレヨンで絵を描き始めると、できた!と小雪に見せる。
そこには、大きな口を開けてニッコリ笑う、山下にそっくりな顔が描かれていた。
ナーサリーに入って来たすみれを、小雪はギュッと抱きしめる。
「どうだった?京都は。楽しかった?」
「うん!たくさんたのしいことあったの」
「そう、良かったね。今日は色々お話聞かせてね」
小雪は立ち上がって、瑠璃にも声をかける。
「体調は大丈夫でしたか?」
「ええ、大丈夫。帰ってから2日間お休みしてたから、すっかり疲れも取れたし。あ、小雪先生、これお土産です」
「え?ありがとうございます!そんな、お気遣い頂いてすみません」
「いえ。では、今日からまたよろしくお願いします」
「はい。今日も安全にお預かりしますね」
そしてすみれと一緒に、行ってらっしゃいと笑顔で瑠璃を見送った。
◇
「それでね、これがしんかんせん。びゅーんて、とてもはやいの。それに、アイスクリームもたべたの!」
すみれはクレヨンでお絵描きをしながら、興奮冷めやらぬように小雪に話してくれる。
「新幹線、上手に描けてるね!アイスクリームもおいしかった?」
「うん!すごーくおいしかった。それでね、ホテルのおへやもひろくてね…」
スケッチブックのページをめくりながら、すみれは次々と絵を描いていく。
「あら、これは誰かしら?」
「きよじいじ!それと、ひいおばあさまと、れいかおねえさん」
「へえー、すみれちゃん、色んな人に会えたのね。みんなニッコリしていて優しそうなお顔ね」
「うん!みんな、とてもやさしいの」
そう、と小雪は微笑みながら見守る。
「すみれちゃんのお話を聞いてると、なんだか私まで嬉しくなっちゃう。楽しい旅行で良かったね」
うん!と笑顔で小雪を見上げた後、すみれが、あ!と入り口のガラスの扉を指差した。
「かなおねえさん!」
小雪も振り向くと、美容室で働く叶恵がこちらに手を振っているのが見えた。
他のお子様がいないか奥を覗き込んでから、だいじょうぶ?と口を動かして小雪に尋ねる。
小雪が頷くと、叶恵は嬉しそうに部屋に入って来た。
「すみれちゃーん!」
「かなおねえさん!」
すみれは、両手を広げた叶恵に駆け寄ってギューッと抱きつく。
「元気だった?しばらく会えなくて寂しかったのよー」
叶恵はすみれの顔に頬ずりして抱きしめる。
こんなふうに叶恵は、他のお子様がいない時は、すみれに会いにナーサリーに立ち寄る事がよくあった。
「京都はどうだった?楽しかった?」
「うん!かなおねえさんのおみやげも、かあさまとえらんだの」
「えー、本当?嬉しいな」
「はやせさんにわたすって、とうさまが」
「うふふ、そっか。しっかりしてるね、すみれちゃん。お土産、楽しみにしてるね」
じゃあねーと、すみれと小雪に手を振って、叶恵は仕事に戻って行った。
またお絵描きを始めたすみれの横で、小雪はちょっと首をかしげて考える。
(さっきすみれちゃん、はやせさんって言ったわよね?はやせさん…おとといヘラヘラ星人さんが、総支配人の秘書の名前をはやせさんって言ってたけど、同じ人なのかしら。叶恵さんのお土産をはやせさんに渡すってどういう事?)
するとまたすみれが、あっ!と入り口に目を向ける。
叶恵が戻って来たのかと思ったがそうではなく、そこに立っていたのは山下だった。
ニコニコとすみれに手を振った後、そっと扉を開けて小雪に声をかける。
「今、大丈夫?」
「あ、はい。すみれちゃんだけなので」
山下は部屋に入ってくると、靴を脱いで絨毯に上がる。
「すみれちゃん、お兄ちゃんを覚えてるかな?りょうお兄ちゃんだよー」
すみれはちょっと恥ずかしそうに、こくんと頷く。
「わー、嬉しいな。お絵描きしてるの?新幹線かな、上手だねー。これは誰?」
「…きよじいじ」
小声ですみれが答える。
「え、おじいさん?あ!ひょっとして、清河さんかな?すごい!似てるね」
へえーと感心したようにすみれのスケッチブックを覗き込んでから、あ、ごめんね、邪魔しちゃったねと笑いかける。
そして山下は、小雪に向き合った。
「足の具合はどう?今日も休んでると思ったのに、瑠璃ちゃんが出勤して来たから、もしやと思って見に来たんだ」
「あ、はい。昨日ゆっくり休んだので、もう普通に歩けるようになりました」
「そう?ちょっと見せて」
山下は、小雪が伸ばした右足にそっと手を添えて確かめる。
「うん、腫れも引いてるね。でもまだ無理はしないように。走ったりしゃがんだりしちゃだめだよ」
はい、と小雪が頷くと、じっと様子をうかがっていたすみれが遠慮がちに聞いてくる。
「りょうおにいさん、おいしゃさまなの?」
「ん?あはは!違うよ、すみれちゃん。りょうお兄ちゃんはね、明るく愉快なみんなの人気者なんだよ」
すみれと小雪は、シーン…と静まり返る。
んんっ!と咳払いすると、山下はバツが悪そうに立ち上がった。
「じゃあ、またね。お大事に」
そしてトボトボと部屋を出て行った。
すみれと小雪は、気を取り直してお絵描きに戻る。
すると、ふと手を止めてすみれが呟いた。
「あかるくゆかいなにんきもの…」
「す、すみれちゃん?そこはあんまり気にしなくてもいいのよ?」
小雪が思わず真顔ですみれに言う。
すみれはまたクレヨンで絵を描き始めると、できた!と小雪に見せる。
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