年下幼馴染アルファの執着〜なかったことにはさせない〜

ひなた翠

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エピローグ

幸せな家族

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 僕たちは結婚して、早五年の歳月がすぎた。

 ヒートが来て、番になったあの日――どうやら僕たちに天使が舞い降りていたようだ。年明け早々、体調不良が続き、抑制剤もきれそうだったから病院に行ったら、妊娠が発覚した。

 これから大学生にある海斗に、妊娠したなんて言い出せなくて、悩んでいるうちにヒートがこない僕に海斗のほうから気づかれてしまった。

 動揺して、今回はおろすべきかもしれないと思ったのは僕だけで、海斗は大喜びしてくれた。不安に思う僕とは裏腹で、「え? 最初から『俺の子を産んでよ、はーちゃん』って言ってたじゃん」と澄ました顔で言われてしまった。

 ゴムをつけないでセックスしてた時点で、気づいてると思ってたのにと、海斗には呆れられてしまった。
 両親に報告したときも怒られる覚悟でいたのに、両親は笑顔で喜んでいた。

「遥が社会人なんだし、産休と育休をとって産めばいいじゃない」

 海斗の両親も、同じだった。
 海斗と一緒に報告に行ったときも、笑顔で受け入れてもらえた。

「もっと早くにできちゃった婚すると思ってたのに、海斗……けっこう我慢したんだね」と海斗の母が笑って話してくれた。海斗の母の予想としては、僕が一人暮らしをするとなったときに、行かせまいと無理やり抱いて身籠らせるんじゃないかと思っていたらしい。

「はーちゃんが嫌がることは絶対にしない!」と断言していた海斗の姿が、今も鮮明に記憶に残っている。

 海斗が大学一年の夏に、可愛い娘が生まれた。
 海斗に似て、栗茶色の髪をしている。瞳は、僕に似て灰がかった茶色。海斗と僕の、大切な娘だ。名前は、陽菜。明るく、温かい子に育ってほしいと願って名付けた。

 海斗は、大学に通いながら育児を手伝ってくれた。

 授業が終われば、すぐに帰ってきてくれた。娘をあやして、おむつを替えて、ミルクをあげていた。夜泣きにも付き合ってくれて、僕の育休が終わると同時に海斗がワンオペで面倒を見てくれた。

 大学の授業があるときは、僕の母と海斗の母が交代で預かってくれてすごく助かった。

 海斗は大学を卒業して、僕と同じ会社に就職した。家でも職場でも、ずっと海斗と一緒にいられるのは嬉しかった。

 海斗と結婚して、娘が生まれて、毎日が充実していた――。

「パパ、ママの具合が悪そう……」

 休日の朝、なかなか起きてこない両親に我慢ができずに娘が寝室に入ってきた。僕の顔を覗きむと、頭を撫でながら心配そうに見つめてくる。

「ごめんね」
 僕がベッドから手を出して、陽菜の手を握りしめる。

 身体が気怠くてベッドから、起き上がれない。朝から娘に心配をかけて、申し訳なかった。
 僕を後ろから抱きしめて眠っていた海斗の腕がぴくっと動くと、身体を起こして陽菜を見つめた。

 上半身裸の海斗の姿を見て、僕は顔が真っ赤になる。

(娘の前で……昨日の寝たときのまま……!)

「おはよう、陽菜。早起きだね」
「パパたちが遅起きなの」
「それは……ごめんね」

 娘の鋭い指摘に、海斗が苦笑をする。

「ママの顔色が悪いよ」
「ママはいま、お腹にお赤ちゃんがいるから。ゆっくり休ませてあげて。今日はパパが、朝ごはんをつくるよ」

 海斗が言って、ベッドから出ていく。床に落ちた寝巻き用のシャツを頭から被ると陽菜の手を取って、一緒に立ち上がる。

「海斗、ごめん」

 僕が謝ると、海斗が振り返った。優しく微笑んで、ベッドに戻ってくる。僕の額にキスを落として、髪を撫でた。

「はーちゃんは寝てて。大事な時期なんだから。それに昨日は無理させちゃったし……」

 海斗の語尾が曖昧に消えていく。頬を少し赤く染め、申し訳なさそうにしていた。僕も海斗の表情につられて、顔が赤くなった。

(いや、まあ……うん、そうなんけど)

「ママ、またね」

 陽菜が元気に手を振った。海斗が陽菜の手を取って、寝室を出ていく。ドアの向こう側で、二人の笑い声と料理する音を聞きながら、僕はベッドに頭を預けて左手を見つめた。

 海斗とお揃いの結婚指輪がきらりと光った。

(幸せだなあ)

 二人とも社会人になり、二人目を作ろうかと話題が出てすぐに二人目の妊娠が発覚した。次のヒートからは避妊するのをやめようと決めた矢先だった。

 しばらくすると海斗が寝室に戻ってきた。優しい足音が近づいてきて、ベッドの横に立つ。横になっている僕の頭を優しく撫でた。

「はーちゃん、ご飯できたけど食べられそう?」

 海斗が心配そうに、僕を見つめている。陽菜を妊娠したとき、つわりがひどくで一時期、何も食べられなかった過去があるだけに、海斗は不安なのだろう。

「うん……ありがとう。さっきからすごくいい匂いがして、お腹が減ってたところだよ」
 僕が答えると、海斗が嬉しそうに笑った。

 今回は吐き気よりも、眠気と怠さがひどい。今朝の怠さは、つわりというよりは、海斗に激しく求めれたから――なんだけど。

「愛してる、はーちゃん」
 海斗が囁いた。顔を近づけてきて、唇が重ねられる。優しくて、柔らかいキスだ。

 海斗の舌が、優しく僕の唇をなぞっていく。

 口を開けると、海斗の舌が侵入してきた。優しく、丁寧に、僕の舌と絡み合っていく。急かすことなく、ゆっくりと時間をかけて、お互いの存在を確かめ合う。

「パパ! お腹減ったぁ」
 ダイニングから娘の声がして、僕たちは慌てて唇を離す。

「僕も、海斗を愛してる」
 僕が囁くと、海斗が僕を抱き起こしてくれた。そのまま横抱きをされる。

「ちょっと……服っ! 着ないと」
「ああ、そうだった」

 海斗が苦笑した。全身、キスマークだらけの肌が露になると、「はーちゃん、綺麗」と嬉しそうに海斗が笑う。

「陽奈が早く寝たからって、しつこくしてくるの……よくないよ、海斗」
「はーちゃん、前みたいに強請ってくれないから」
「んんっ、それは親になったから!」

 僕は床に落ちている寝巻きを身に纏いながら、頬を赤らめる。

 実は、かかりつけ医の先生と相談して一番軽い抑制剤を飲むようにしている。今は妊婦でも大丈夫なものを処方してもらっていた。

 子どもがいるのに、意識を飛ばして海斗に求めてしまうのはよくないと思い、海斗に求められそうだなという日は、悟られないように飲んでいた。

 医師いわく、運命の番同士だったり、身体の相性が良かったりすると意識が飛んで、貪欲に相手を求めてしまう場合もあると言われた。

 最初に出会って強く惹かれ合うという経験は僕たちにはなかったから、運命の番かどうかはわからないけど――身体の相性はいいのだろうと思う。

 海斗は昔みたいに、僕の意識が飛んで甘えられたいと思うらしく、最近はねちっこくてしつこい。
 そのせいで朝寝坊して、娘に起こされてしまったが――。

「もう、はーちゃんのお強請りは見られない?」
「――っ、そういうのは……」
「パパ! お腹、減ったってば」

 陽菜の声に、僕は「ほら」と海斗の背中を押した。

「愛娘が呼んでいるよ。朝食を食べよう」
 僕は海斗の手を掴んで、寝室を後にする。

(僕のお強請りは、子どもたちが大きくなってからかな)

 海斗が望むなら、両親に預けて一日くらいは――そう思いながら、ダイニングへと足を向けた。食卓に並ぶ海斗の料理を見つめ、温かい家族の雰囲気に心も身体も満たされていく。

 海斗と番になれて、良かった。
 これから先も、ずっと海斗と子どもたちと一緒に過ごしていきたい――。


終わり





最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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感想 1

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みんなの感想(1件)

スイレン829
2025.12.29 スイレン829

初めまして。
連載当初から毎日楽しみに
朝昼晩、更新をチェックしてました。
完結おめでとうございます。
序盤の遥が海ちゃんを避け続けるところが本当に切なくて、
はやく幸せになってほしい〜!とずっと待ってました!
海ちゃんもかっこよくて、ずっと一途なところが大好きです。
もしまた番外編等アップされたらこの上ない喜びです。飛んできます!
素敵な作品をありがとうございました。

2025.12.29 ひなた翠

初めまして!感想、ありがとうございます!
嬉しいお言葉をありがとうございます。

遥の臆病なところを見越して、海ちゃんが一途に追いかけ続けるところ、いいですよね!私も大好きです。
エピローグでさらっと書いた妊娠発覚編を詳しく描きたいなあ〜なんて思っていたところなので、感想をいただけて「書くぞ」という勇気をいただけました♪
ありがとうございます。
アップした際には、また読みにきていただけると嬉しいです。

解除

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