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第3章 仲間ではいられない(3日目)
3ー10 時間
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身構えて振り向き目を丸くして歩み寄る。
「うわあ」
横三列、縦に四段。計16台のモニタが壁にはめ込まれていた。
(監視カメラか)
館内のあちらこちらを映した映像が音もなく切り替わっていく。
広間を横切るのはイジャイとヴィノードか。あの様子はイジャイが好きなラッパーの真似のようだ。
廊下で踊るのはニルマラ。この状況下でも伸び伸びと美しく躍動する。ダンス好きとは聞いていたが小さなモニターでもわかるほど上手いとは知らなかった。
部屋ではナイナとミナとコマラが熱を入れて議論している。
(って女子のスペースを見るのは失礼だ)
顔を背け別のカメラを見る。シャワーの点検を終えたのかラジューがリズミカルに男子棟の階段を降りる。彼の顔をきちんと見ていないことにようやく気が付いた。自分たちと同じくらいの年だろうか。それで学校へ通う生徒の世話をするのはどういう気持ちだろう。
壁を前に座るのはアッバースとルチアーノだ。
荒っぽいところもあるアッバースが殴りかかったりしないか心配で見ていたが、穏やかに話しているようでそっと微笑む。
モニターの下にはコンソールがあり多くのボタンが並んでいる。
16個綺麗に並んだ縦長ボタンの一番右下を押してみる。
何度か押すと予想通り右下モニターの音声が流れてきた。
『ルチ許せない!』
『でもいい人なんだよ』
『スティーブンをいじめただろ。いじめは駄目だってルクミニー先生が、』
『だからって投票は止めろよ』
『お前にするよりいいじゃんか』
マリアにヤトヴィックとあとは誰だろう。広間に続く棚の所だ。
カメラが切り替わりまたアッバースとルチアーノが映し出された。今度は彼らの顔が見える。抑えているがアッバースは怒っているしうつむき気味でもルチアーノの表情の重さはわかる。
彼らを映すモニターと同じ場所にある音量ボタンに二度手を伸ばして止めた。
これでは盗み聞きだ。伝えたいと思えば彼らから話してくれるだろう。
潰された窓の下に両開きの扉付き物入れがあった。
「!」
一転スティーブンの目が輝く。
中にはハサミやペンも含む日用品が所狭しと並んでいた。持っていったら皆で使える! と次々引っ張り出す。途中シヴァ神の絵が描かれたジュートバッグを見つけたので数えながら中に入れる。ノートもメモ帳もカッターナイフも5点ずつ揃えた。
チュートリアルによれば誰が誰に投票したのかは人狼を暴くのに重要な手がかりとなるが、投票後に番号だけ並ぶのではほとんど覚えられなかった。
これで記録が出来る!
隠し部屋について知らせても切り札が使い続けられるのかは書いていなかった。
大事な倉庫になりそうだからここの使用権はキープしたい。
まずは誰にも知らせず広間の棚にでも放り込んでこんなものがあったと見つけてみせようか。
モニター群の上の時計は十七時四十三分を指していた。
そろそろ戻ろう。会議についてはナラヤンとアッバースと相談した計画がある。書くものがあればより綿密に詰められる。
ルチアーノには……命の危険があるこの状況では冷静に考えられない、学校に戻ったら話がしたい。それまでも気付くことがあったら教えてほしいーそう伝えよう。
正方形のジュートバッグを左肩にドアノブを引くが開かない。鍵がかかっている。寝室と同じで内側にはキープレートはない。ならばキーを使わず開くはずと二、三度繰り返し、最後意識せずドアを蹴って、
プチリ。
意識が消失した。
気がつくと緑色のカーペット上を這っていた。ほおと腕がカーペットに擦られて痛い。重い頭を手のひらで支えて上を向く。
16のモニター全てが、
『Warning! Warning! Out of rules!』
黄色い画面、黒い文字の点滅を繰り返す。
「閉じ込められました! 開けてください!」
モニター群よりも上に向かって叫ぶ。部屋の四隅に隠しもしない黒いカメラが突出しているのは確認済みだ。
1分ほど続いた警告の点滅が消えた。
普通に館内を映し出すモニターを見ながらスティーブンは気づいた。
(罠か?)
PCに現れた切り札の文言は、
「三日目の十七時以降、隠し部屋に入る権利」
で隠し部屋を「使う」権利でも「出入りする」資格でもない。
(やられた!)
あれほど罠に気を付けろ、彼らの文章は注意深く読めと言って回って、
(ルチアーノ。君の言う通りだ)
『どの面してー』
ドン!
悔しさに床を手で叩きスティーブンは思う。
このまま10時になっても部屋から出られなければ、
(僕は会議の前に殺される!)
「うわあ」
横三列、縦に四段。計16台のモニタが壁にはめ込まれていた。
(監視カメラか)
館内のあちらこちらを映した映像が音もなく切り替わっていく。
広間を横切るのはイジャイとヴィノードか。あの様子はイジャイが好きなラッパーの真似のようだ。
廊下で踊るのはニルマラ。この状況下でも伸び伸びと美しく躍動する。ダンス好きとは聞いていたが小さなモニターでもわかるほど上手いとは知らなかった。
部屋ではナイナとミナとコマラが熱を入れて議論している。
(って女子のスペースを見るのは失礼だ)
顔を背け別のカメラを見る。シャワーの点検を終えたのかラジューがリズミカルに男子棟の階段を降りる。彼の顔をきちんと見ていないことにようやく気が付いた。自分たちと同じくらいの年だろうか。それで学校へ通う生徒の世話をするのはどういう気持ちだろう。
壁を前に座るのはアッバースとルチアーノだ。
荒っぽいところもあるアッバースが殴りかかったりしないか心配で見ていたが、穏やかに話しているようでそっと微笑む。
モニターの下にはコンソールがあり多くのボタンが並んでいる。
16個綺麗に並んだ縦長ボタンの一番右下を押してみる。
何度か押すと予想通り右下モニターの音声が流れてきた。
『ルチ許せない!』
『でもいい人なんだよ』
『スティーブンをいじめただろ。いじめは駄目だってルクミニー先生が、』
『だからって投票は止めろよ』
『お前にするよりいいじゃんか』
マリアにヤトヴィックとあとは誰だろう。広間に続く棚の所だ。
カメラが切り替わりまたアッバースとルチアーノが映し出された。今度は彼らの顔が見える。抑えているがアッバースは怒っているしうつむき気味でもルチアーノの表情の重さはわかる。
彼らを映すモニターと同じ場所にある音量ボタンに二度手を伸ばして止めた。
これでは盗み聞きだ。伝えたいと思えば彼らから話してくれるだろう。
潰された窓の下に両開きの扉付き物入れがあった。
「!」
一転スティーブンの目が輝く。
中にはハサミやペンも含む日用品が所狭しと並んでいた。持っていったら皆で使える! と次々引っ張り出す。途中シヴァ神の絵が描かれたジュートバッグを見つけたので数えながら中に入れる。ノートもメモ帳もカッターナイフも5点ずつ揃えた。
チュートリアルによれば誰が誰に投票したのかは人狼を暴くのに重要な手がかりとなるが、投票後に番号だけ並ぶのではほとんど覚えられなかった。
これで記録が出来る!
隠し部屋について知らせても切り札が使い続けられるのかは書いていなかった。
大事な倉庫になりそうだからここの使用権はキープしたい。
まずは誰にも知らせず広間の棚にでも放り込んでこんなものがあったと見つけてみせようか。
モニター群の上の時計は十七時四十三分を指していた。
そろそろ戻ろう。会議についてはナラヤンとアッバースと相談した計画がある。書くものがあればより綿密に詰められる。
ルチアーノには……命の危険があるこの状況では冷静に考えられない、学校に戻ったら話がしたい。それまでも気付くことがあったら教えてほしいーそう伝えよう。
正方形のジュートバッグを左肩にドアノブを引くが開かない。鍵がかかっている。寝室と同じで内側にはキープレートはない。ならばキーを使わず開くはずと二、三度繰り返し、最後意識せずドアを蹴って、
プチリ。
意識が消失した。
気がつくと緑色のカーペット上を這っていた。ほおと腕がカーペットに擦られて痛い。重い頭を手のひらで支えて上を向く。
16のモニター全てが、
『Warning! Warning! Out of rules!』
黄色い画面、黒い文字の点滅を繰り返す。
「閉じ込められました! 開けてください!」
モニター群よりも上に向かって叫ぶ。部屋の四隅に隠しもしない黒いカメラが突出しているのは確認済みだ。
1分ほど続いた警告の点滅が消えた。
普通に館内を映し出すモニターを見ながらスティーブンは気づいた。
(罠か?)
PCに現れた切り札の文言は、
「三日目の十七時以降、隠し部屋に入る権利」
で隠し部屋を「使う」権利でも「出入りする」資格でもない。
(やられた!)
あれほど罠に気を付けろ、彼らの文章は注意深く読めと言って回って、
(ルチアーノ。君の言う通りだ)
『どの面してー』
ドン!
悔しさに床を手で叩きスティーブンは思う。
このまま10時になっても部屋から出られなければ、
(僕は会議の前に殺される!)
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