【完結】微笑みを絶やさない王太子殿下の意外な心の声

miniko

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4 近付く心の距離(最終話)

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控室に戻って、ソファーに倒れ込む様に座った。
セドリック殿下の前で、行儀が悪い真似をしてしまったが、今日だけはどうか許して欲しい。

王宮の侍女が入れてくれた、素晴らしく香り高い紅茶を口にすると、少しだけ心が落ち着いてきた。

「今日は珍しく動揺が顔に出ていたみたいだけど、何かあったの?」

(頬を染めたり、少し涙目になったりするアンジェはとても愛らしいけれど、何故、普段は隠せている感情が表に出て来たのだろう?
何か、彼女を激しく動揺させる出来事でもあったのだろうか?)

殿下の表情からも、心の声からも、私を本当に心配してくれているのが伝わって来て、なんだか申し訳ない気持ちになる。

私はポケットから、例のペンダントを取り出した。

「もしかして、殿下は、この魔道具をご存知ですか?」

(それは、心の声を聞く・・・・・・!
もしかして、私の心の声を聞いたのか!?)

ああ、やっぱりコレはそういう魔道具だったのね。

「・・・・・・アンジェ、その魔道具は、何処で手に入れたのかな?」

珍しく王子様スマイルが引き攣っているし、心なしかお顔が青褪めている。
長年一緒にいるのに、こんなにも動揺している殿下を見たのは初めてだった。

「マティウス様が、私と殿下の絆を深める事が出来る魔道具だからと仰ったので・・・。
申し訳ありません、殿下のお心を勝手に覗く様な真似をして・・・」

(そうか・・・マティウスに嵌められたのだから、アンジェが気に病む事は無いよ)

「あ"あ"っっ!
アンジェの事が好き過ぎてストーカーになりかけている事が、選りに選って本人にバレてしまったではないか!
もうお終いだ・・・・・・。
嫌われたに違い無い。
マティウスぶっ殺す!!」

「・・・殿下、動揺し過ぎです。
口に出すべき言葉と、内に秘めて置くべき言葉が逆になっていますよ。
落ち着いてください。
それから、お気持ちは分かりますが、殺人は犯さないでくださいませ」

まあ、口から出た声も心の声も、両方とも今の私には聞こえているんですけどね。

そして、ストーカーになりかけていると言うのは、今初めて知りましたよ。
衝撃の新事実。
具体的にはどんなストーキング行為をしていたのか、是非教えて頂きたい。
それによっては、今後の付き合い方を考えねばならない。
だが、知るのが怖い気もする。
何故、私はこんな馬鹿馬鹿しい事に頭を悩ませているのか。

(・・・・・・)

あら、いつの間にか静かになってる。
頭が真っ白になったのかな?

「あのー、そんなに心配なさらないで下さい。
嫌ってはいませんから。
人間誰しも二面性はある物だと思いますし」

そう言って慰めると、項垂れていた殿下はガバッと顔を上げた。

(あぁ、アンジェはなんて慈悲深いんだ。
やっぱり彼女は天使に違いないっ!!)

人間です。


「取り敢えず、その魔道具をこちらに渡して貰えるかな?」

「どうぞ」

差し出された殿下の手に、ペンダントを素直に渡す。
殿下は小さな蓋の様な部分を器用に開けて、中からご自身と同じ色の髪の毛を一本取り出すと、ゴミ箱にポイっと投げ捨てた。

成る程、心の声を聞く対象の髪の毛を、そこに入れるのか。
だからマティウス様は、蓋を開けるなって仰ったのね。

「ごめんね。
心の声じゃなく、自分の口で改めて伝えたくて」

そう仰った殿下の顔からは、いつもの微笑みが消えた。
私を真っ直ぐに見詰める瞳の強さに、思わず息を飲む。

「婚約の顔合わせで君と初めて会った時、とても可愛い人だと思った。
政略結婚は覚悟していたが、君の様な人が婚約者に決まってホッとしたんだ。
それから、王太子妃教育を必死に頑張る君を近くで見ている内に、どんどん君を愛しく感じる様になった。
始まりは政略だったけれど、今では私は君を深く愛しているし、いつか君にも愛して欲しいと願っている」

膝の上で強く握り締められた彼の手は微かに震えていて、彼の真剣さと緊張感が伝わって来た。

ちょっと愛が重くて、ちょっと変態で、ちょっと(?)腹黒なセドリック殿下。
そんな彼の本性を知っても、不思議と彼の事を嫌だとは思わなかった。
寧ろ、驚いたり、若干引いたり、怯えたりしながらも、今迄知らなかった彼の一面を知る事が出来て、嬉しいと感じる自分がいたのだ。

だって、私は知っている。
彼が、誰よりもこの国の民を愛し、この国の未来を真剣に考えて、日々研鑽を積んでいる事を。
次期国王としての殿下を尊敬しているし、男性としても素敵だと思っている。
そして、その彼の隣に立てる事を、誇りに思っているのだ。
だからこそ、辛い王太子妃教育だって、耐える事が出来た。


「私も、セドリック殿下が婚約者で、良かったと思っています」

「アンジェ・・・、ありがとう」

ほんのりと薄紅色に頬を染めて、子供の頃の様な無邪気な笑顔を見せた殿下に、私の胸がトクンと小さく音を立てた。





あの夜会の日から、私達の関係は今迄以上に親密になった気がする。
殿下は分かりやすく私に好意を示す様になり、私は戸惑いながらも、それを嬉しく思っているのだ。

『二人の絆を深める』
悔しいけれど、マティウス様の言っていた通りになってしまった。
私達は、彼に感謝するべきなのだろうか?
そんな風に思い始めていたのだが・・・・・・


「ところで、殿下は心の声を聞くペンダントをご使用になった事があるのですか?」

ある日、二人でお茶を飲んでいる時に、ふと気になって質問すると、殿下がピシリと動きを止めた。

「うー、あ~・・・、え~っと、それはだな・・・・・・」

急にしどろもどろになって、視線を彷徨わせる様子を見て、ジワジワと嫌な予感が湧いてくる。

「・・・・・・どなたに、使ったのです?」

「本当にごめんね、アンジェ。
マティウスに唆されて、つい・・・」

気まずそうに頭を下げる殿下に、疑惑が確信に変わる。
問題は何を聞かれたのか・・・・・・。
引き攣った笑みを浮かべながら、私は殿下に問う。

「その時、私は何を?」

「メルロー嬢に『小鳥サイズの脳味噌』とか、『視野が小さ過ぎるから眼科をお勧めする』とか・・・・・・あと、アンジェが『筋肉フェチ』だとか。
大丈夫。
君は心の声も、とっても可愛かったよ」

殿下の話を聞くうちに、どんどん熱くなる頬を、両手で隠して俯いた。

嫌あ"あ"あ"ぁぁーーっっ!!
マジかっ!
全っ然、全く大丈夫じゃ無いわよ!
可愛い!?どこが!?

無理無理無理無理、恥ずか死ぬ!


私はこの時、マティウス様だけは一生許さないと心に決めたのだった。



【終】

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感想 17

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みんなの感想(17件)

よまま
2023.04.11 よまま

続編も面白かったです

ニマニマしながら読みました😁

2023.04.11 miniko

こちらにも感想頂きありがとうございます💕

本編、続編共に楽しんで下さったみたいで光栄です!
ニマニマして貰えて良かった😆👍

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桐生桜月姫
2022.08.21 桐生桜月姫

本編から来ました!!
とっても面白かったです。
心の内が聞こえる設定楽しいですね♪
すれ違い解決が爽快で最高でした!!

2022.08.21 miniko

続編の方にもご感想頂き、有難うございます✨
面白かったと言って頂けて光栄です!
心の声が聞こえる魔道具は、お話を考える上で、とても便利なアイテムでした😊
またいつか続編を考えるかもしれません。

解除
迷子のみゆ
2022.08.03 迷子のみゆ

ここのところヒット作に恵まれず、アルファポリスにきても、つまらない(⁎⁍̴̆Ɛ⁍̴̆⁎)でしたが、先生の作品は、今年最高です!
心の声の設定、、、期待できない⤵︎なんて思いましたが、全然違う!!
本編も良かったけれど、こちらの方が好きです!
つい感想に書き込みしてしまう程です!
ぜひ、続々編お願いします(≧∇≦)
生贄は、、、アイツです、、、(^_-)

2022.08.03 miniko

感想有難うございます!
今年最高ですか!?
褒め殺されそう(//∇//)キャッ♡
自分の笑いのセンスに自信が無かったので、今迄コメディ作品はあんまり書いてなかったのですが、また書いてみたいと思います。
続々編のリクエストも有難うございます(*゚▽゚)ノ
アイツ・・・ですね(^-^)b
先ずは魔道具を回収・・・あ、王太子が持ったままか。
いつになるか分かりませんが、王太子の逆襲編、書いた時にはまた読みに来てくださいね!

解除

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