【完結】理想の人に恋をするとは限らない

miniko

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13 新しい関係

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「クリスティナは、隣国の王太子殿下の元へ嫁ぐ事が決まったみたいだよ」

学園へ向かう馬車の中で、ミゲルが最新のニュースを伝えてくれた。

「クリスティナ様は、それで良かったのかしら?」

「どうかな?
本人に聞いた訳じゃないからね。
でも、彼は優秀で誠実な人物だって評判だよ。
噂によると、クリスティナの事が前から好きだったみたいで、熱烈に口説いたらしいし・・・。
クリスティナは、ああ見えて意外と乙女チックだから、そういうの喜びそうな気がする。
まあ、ウチの馬鹿王太子と結婚するよりは、幸せになれるんじゃないかな?」

「そうだと良いわね」

隣国の王太子殿下に嫁ぐのなら、こちらで受けていた王太子妃教育も、役立つ事があるかもしれないし。

・・・・・・でも、ミゲルは淋しくないのかしら?

彼の顔をチラリと覗くと、私の考えていた事が分かったみたいで、苦笑されてしまう。

「違うって言ったでしょ?」

「うん。ごめん」

分かってはいるのだが、長年染み付いた思考の癖が抜けきれない。
彼は私の頭を優しく撫でた。


あれからミゲルは、通学時の送り迎えを毎日してくれるようになった。
お昼休みも一緒に過ごしたがるようになって、常に私にベッタリだ。
想いを伝え合ってから、急激に甘くなる態度について行けない。
長年一緒に居たのに、こんな一面もあったなんて、予想外だった。

恋人扱いされるのが嬉しくない訳ではないが、胸の奥が擽ったくて、何とも落ち着かない。


「じゃあナディア、またお昼休みに」

教室までエスコートしてくれたミゲルは、私の頬に素早くキスをした。

人前で、なんて事をしてくれるのか!
私は顔に熱が上がるのを抑えられず、ミゲルを軽く睨んだ。
彼は悪戯っぽい笑みを浮かべ、肩をすくめると、自分の教室へと去って行った。

それを見ていたマリソルが、ニヤニヤしながら近付いて来る。

「全く・・・。
朝っぱらから、公衆の面前で何してくれてるのよ」

こんな風に揶揄われるのにも、少しは慣れて来た。

「申し訳ないデス」

「まあ、幸せそうで何よりだわ。
政略の婚約者と相思相愛になれるなんて、なかなか無いもの。
良かったわね、ナディア」

「ふふっ。ありがとう」

どうやらマリソルは、ずっと私の気持ちに気付いていて、心配してくれていたらしい。


「さぁ、一限目は実習室だから、移動しましょう」

マリソルに促されて、教科書や筆記用具を抱えて廊下へ出る。


「ナディア嬢」

三年生の教室の近くを通りかかった時、声を掛けて来たのはリカルド様だった。

「リカルド様、お久し振りです」

「元気そうだね。
ファンクラブ、辞めたんだって?」

ミゲルが嫌がりそうなので、ファンクラブは退会した。
どちらにしても、リカルド様はクリスティナ様と同じで、もうすぐご卒業なのだけれど。

「ええ。色々お世話になりました」

「婚約者殿と、上手く行ったんだね。
ようやく素直になったんだ?
おめでとう」

リカルド様の微笑みは、いつも通り優しくて、何故か少し寂しそうにも見えた。

「あ、やっぱり、私の気持ちに気付いてらしたのですか?」

「うん。君達二人とも分かりやすいから。
なかなかくっ付かないから、ハラハラしながら見てた」

リカルド様にファンが多いのは、きっと外見が格好良いからだけじゃ無いんだろうな。
一見チャラそうに見えて、よく周りを見ているし、色々と気遣っている人なのだろう。

「ご心配をお掛けして、済みませんでした」

「幸せにね」

ヒラヒラと手を振るリカルド様に別れを告げて、マリソルとその場を離れた。




ーーーあれから六年の時が過ぎた。

コスモスに囲まれたガゼボでお茶を飲む私の隣には、ミゲルにそっくりの天使の様な女の子が、フカフカのクッションに埋もれてすやすやと寝息を立てる。

「ははうえ!」

私の膝に飛び込んで来た、私に似た小さな男の子に苦笑する。
その後ろから、ミゲルもやって来た。

「しーっ。今眠った所なのですよ」

男の子は慌てた様子で、自分の口を両手で押さえると、コクコク頷いた。
ベンチでぐっすり眠る妹の顔を覗き込むと、その柔らかな頬を人差し指でそっとつつく。

私とミゲルは視線を交わして微笑みあった。
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