【完結】女嫌いの公爵様は、お飾りの妻を最初から溺愛している

miniko

文字の大きさ
23 / 26

23 扉が開く時(ダニエル視点)

しおりを挟む
契約を解除してからは、夢のような日々を過ごしている。
好きなだけトリシアに愛を囁き、抱き締める事が出来るのだ。

だが、大きな問題も残っていて・・・。


「そろそろ、夫婦の寝室を使わないか?」

勇気を出してそう言うと、トリシアの頬が一瞬で真っ赤になった。
使用人達も、固唾を飲んで見守っている。

私の部屋とトリシアの部屋の間には、公爵夫妻の寝室がある。
しかし、契約結婚だった私達は、勿論その部屋を使った事は無い。
トリシアの部屋側の扉に鍵を掛けて、封鎖してあるのだ。

結婚式後の初夜をスルーしてしまった私達は、同じ部屋で寝る切っ掛けを失っていた。
このままでは、一生清い関係のままである。
契約結婚だった頃は、それでも仕方ないと覚悟していたのだが、気持ちが通じたのであれば、触れたいと思うのは当然だろう。

「直ぐで無くても構わない。
トリシアの心の準備が整うまで待つから、ゆっくり検討して欲しい」

「はい」

消え入りそうな声でそう答えたトリシアを見て、まだ早かったかと少し申し訳無い気持ちになった。



それから10日程経った、ある日。

「奥様が、明日からは旦那様と同じお部屋でお休みになるそうです」

就寝する直前、マリベルが笑みを隠せない様子で、ニヨニヨと報告しに来た。


翌日のトリシアは挙動不審で、私と目が合っただけで、ポッと頬を染めて、オロオロと視線を彷徨わせる。
非常に可愛らしい。
もしもトリシアが怖がったら、暫くの間は、抱き締めて眠るだけで我慢しようか。
無理はさせたくない。
ある意味、今まで以上の禁欲生活になるが、それも仕方あるまい。
そう決意したのだが・・・・・・。

夜になって夫婦の寝室に入れば、セクシーな薄い夜着に身を包んだトリシアが、恥じらいながらベッドの縁にちょこんと座っている。

隣に座ると、涙目で見上げて来た。

えっ?可愛過ぎない?
上目遣い+涙目の破壊力が半端無い。
これ、野放しにしたらヤバくないか?
いっその事、何処かに閉じ込め・・・・・・

危なっっ!!
もう少しで危険な願望に支配される所だった。


そして、彼女の可愛らしい唇が開いて飛び出した言葉は、更に凄まじい破壊力だった。

「・・・か、可愛がって、くださいませ」

誰だよ、こんなけしからん台詞をトリシアに教えたのは。
マリベルか?
よし、特別報酬を出そう。

「そんな可愛い事言われると、手加減出来なくなりそうだ」

この時点で、『添い寝で我慢』の選択肢は完全に消失した。

いや、マジで。
この状況で、ぶっ飛びそうになる理性を、ギリギリで保った私を、誰か褒めて欲しい。


軽く肩に触れただけで、ビクッと震えるトリシアの顔を覗き込む。

「緊張しているね。大丈夫?」

余裕があるフリをしてそう聞くと、トリシアが小さく頷いた。

「少し・・・怖いけど」

「私もだよ。
今迄の人生で一番緊張しているし、君を怖がらせる事が、怖い」

「ふふっ」と、小さく笑ったトリシアの髪をそっと撫でると、栗色の瞳が微かに揺れた。

「トリシア、愛してるよ」

薄紅色の艶やかな唇が「私も」と、吐息混じりに囁く。
その唇に誘われるように、結婚式以来の口付けをした。





───翌朝、目が覚めると、隣に人肌の温もりを感じて安堵した。

(良かった。夢じゃなかった)

ゆっくりとそちらに顔を向けると、隣でスヤスヤと寝息を立てる天使の顔が目に入る。
露出した肩が艶かしくて、昨夜の彼女を思い出してしまいそうになり、そっと毛布を掛けた。

(朝から刺激が強すぎる)

暫く寝顔を愛でていた。
この天使が私の妻なのだと思うと、口元が自然と緩む。
その存在を確かめたくなって、思わず頬に触れると、微かに顔を顰めた天使が、ゆっくりと瞼を開いた。

「おはよう、トリシア」

視線が絡まると、驚いた様に目を見張り、ややあって状況を理解したらしい。
見る見る真っ赤になった彼女は、ガバッと頭まで毛布に潜ってしまった。

(残念。逃げられた。
もう少しだけ、大人しく寝顔を見ていれば良かったな)

モコモコした毛布の塊になってしまったトリシアの頭(らしき部分)を撫でながら、幸せを噛み締める。

「身体は大丈夫?」

するとモコモコの塊が、無言でコクコクと頷いた。

「ねぇトリシア、君の可愛い顔を見せてくれないか?」

今度はブンブンと首を横に振る。

(ダメかぁ。仕方ないなぁ)

苦笑しながら、毛布に包まったままの彼女を、ギュッと抱き締めた。
「ひゃあっ」と小さな悲鳴があがる。



結婚式の後は、軽く触れただけの口付けに照れて、確か、一週間程様子がおかしくなった。
今回は、それ以上も覚悟しなければならないな。

まあ、いいか。
そんな所も可愛いから。





─────────────────

《おまけ》

ダ「あの台詞を教えたのはマリベルか?」

マ「そうですよ。だって、下手したら、慣れるまで手を繋いで寝ようとか言い出しそうだったので」

ダ「な、何故分かった!?」

マ「何年坊ちゃんに仕えていると思ってるんですか?」

ダ「・・・坊ちゃんって呼ぶな」

マ「大体、結婚式以来、唇へのキスをしてなかったなんて、そんな情けない男に育てた覚えはありません!
魔法使いでも目指してたんですか!?」

ダ「・・・・・・」←何も言えない
しおりを挟む
感想 72

あなたにおすすめの小説

愛されないはずの契約花嫁は、なぜか今宵も溺愛されています!

香取鞠里
恋愛
マリアは子爵家の長女。 ある日、父親から 「すまないが、二人のどちらかにウインド公爵家に嫁いでもらう必要がある」 と告げられる。 伯爵家でありながら家は貧しく、父親が事業に失敗してしまった。 その借金返済をウインド公爵家に伯爵家の借金返済を肩代わりしてもらったことから、 伯爵家の姉妹のうちどちらかを公爵家の一人息子、ライアンの嫁にほしいと要求されたのだそうだ。 親に溺愛されるワガママな妹、デイジーが心底嫌がったことから、姉のマリアは必然的に自分が嫁ぐことに決まってしまう。 ライアンは、冷酷と噂されている。 さらには、借金返済の肩代わりをしてもらったことから決まった契約結婚だ。 決して愛されることはないと思っていたのに、なぜか溺愛されて──!? そして、ライアンのマリアへの待遇が羨ましくなった妹のデイジーがライアンに突如アプローチをはじめて──!?

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果

柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。 彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。 しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。 「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」 逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。 あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。 しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。 気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……? 虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。 ※小説家になろうに重複投稿しています。

旦那様に「君を愛する気はない」と言い放たれたので、「逃げるのですね?」と言い返したら甘い溺愛が始まりました。

海咲雪
恋愛
結婚式当日、私レシール・リディーアとその夫となるセルト・クルーシアは初めて顔を合わせた。 「君を愛する気はない」 そう旦那様に言い放たれても涙もこぼれなければ、悲しくもなかった。 だからハッキリと私は述べた。たった一文を。 「逃げるのですね?」 誰がどう見ても不敬だが、今は夫と二人きり。 「レシールと向き合って私に何の得がある?」 「可愛い妻がなびくかもしれませんわよ?」 「レシール・リディーア、覚悟していろ」 それは甘い溺愛生活の始まりの言葉。 [登場人物] レシール・リディーア・・・リディーア公爵家長女。  × セルト・クルーシア・・・クルーシア公爵家長男。

【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。

千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。 だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。 いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……? と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。

契約結婚の相手が優しすぎて困ります

みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

冷徹公爵閣下は、書庫の片隅で私に求婚なさった ~理由不明の政略結婚のはずが、なぜか溺愛されています~

白桃
恋愛
「お前を私の妻にする」――王宮書庫で働く地味な子爵令嬢エレノアは、ある日突然、<氷龍公爵>と恐れられる冷徹なヴァレリウス公爵から理由も告げられず求婚された。政略結婚だと割り切り、孤独と不安を抱えて嫁いだ先は、まるで氷の城のような公爵邸。しかし、彼女が唯一安らぎを見出したのは、埃まみれの広大な書庫だった。ひたすら書物と向き合う彼女の姿が、感情がないはずの公爵の心を少しずつ溶かし始め…? 全7話です。

処理中です...