【完結】愛していないと王子が言った

miniko

文字の大きさ
10 / 13

10 彼女の涙(アルベルト視点)

しおりを挟む
王女をその場に残したまま、僕は慌ててリリを追いかけた。

何故逃げるの?
僕は、きちんと断ったのに。
何が君を傷つけたの?

ずっと様子がおかしかったリリを思い出して、焦燥感が募る。

彼女を途中で見失ってしまって、あちこち探し回った。
ふと、図書室の扉から微かに声が聞こえた気がして、足を止めた。


「・・・・・・だから、もう分からない。
何が本当なの?
彼の側にいるのが、もう怖いの」

「リリ、もう頑張らなくて良いから」

「だけど、家族に迷惑が・・・・・・!」

「大丈夫。大丈夫だよ」

そこに居たのは、リリアナとフェリクスだった。
途中から聞いたので、話の内容はよく理解出来なかったが、そんな事よりも・・・・・・


ーーーリリアナが、泣いている。


あの男の指が、彼女の頬を伝う涙をそっと拭った。

それは僕にとって、とても衝撃的な光景だった。

彼女は僕の前では泣いた事がない。

いつも花のように微笑む彼女を愛していたけれど、もっと色々な表情を見たいとも思っていた。

もしも彼女が人前で泣く事があるなら、弱みを見せる事があるなら、それは僕の前であって欲しかった。

決して他の男の前なんかじゃなく・・・。


しかもアイツは、彼女の涙を当たり前のように、まるで、いつもそうしているかの様に拭ったのだ。

そして彼女はアイツの胸に、顔をうずめた。


胸の奥底が黒く蝕まれていくような感覚に陥る。
息の仕方もわからない。

もしも今、彼女の前に姿を表せば、きっと彼女を深く傷付ける言葉を吐いてしまうだろう。

感情をコントロールする自信が無かった僕は、強く瞼を閉じて踵を返した。



その日を最後に彼女は、僕の前から姿を消した。
ーーーアイツと共に。

そして王家には、ロイエンタール公爵家から、婚約解消の意が伝えられた。



「絶っっ対に、嫌です。
何があっても、婚約は解消しません。
リリアナでなければ、僕は一生結婚しませんから」

謁見の間で、陛下は必死に僕を説得しようとしている。
しかし、僕の気持ちは絶対に変わらない。

「王族なのだから、そう言う訳にも行かんだろうが。我儘を言うな。
ミランダ王女なんか、どうだ?
お前の事をかなり気に入っている様子じゃないか」

「はっっ!冗談じゃない!
人の迷惑も顧みずに擦り寄ってくる様な女ですよ。
絶対にお断りです」

「ちょっと言い過ぎじゃないか?」

「いいえ。嫌な物は嫌です。
大体、陛下があの女のお守りを僕に押し付けたせいで、余計に拗れたんですよ!
取り敢えず、リリアナを探し出して、必ず説得して見せますから。
もう少し時間が必要なんです。
婚約解消を引き延ばして下さい」

何故こんなにリリアナに焦がれるのだろう。
この執着は愛なのか?
しかし、愛ではないと言われても、では他になんと呼べばいいのか、僕にはわからない。
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

【完結】どうかその想いが実りますように

おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。 学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。 いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。 貴方のその想いが実りますように…… もう私には願う事しかできないから。 ※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗 お読みいただく際ご注意くださいませ。 ※完結保証。全10話+番外編1話です。 ※番外編2話追加しました。 ※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。

【完結】愛されていた。手遅れな程に・・・

月白ヤトヒコ
恋愛
婚約してから長年彼女に酷い態度を取り続けていた。 けれどある日、婚約者の魅力に気付いてから、俺は心を入れ替えた。 謝罪をし、婚約者への態度を改めると誓った。そんな俺に婚約者は怒るでもなく、 「ああ……こんな日が来るだなんてっ……」 謝罪を受け入れた後、涙を浮かべて喜んでくれた。 それからは婚約者を溺愛し、順調に交際を重ね―――― 昨日、式を挙げた。 なのに・・・妻は昨夜。夫婦の寝室に来なかった。 初夜をすっぽかした妻の許へ向かうと、 「王太子殿下と寝所を共にするだなんておぞましい」 という声が聞こえた。 やはり、妻は婚約者時代のことを許してはいなかったのだと思ったが・・・ 「殿下のことを愛していますわ」と言った口で、「殿下と夫婦になるのは無理です」と言う。 なぜだと問い質す俺に、彼女は笑顔で答えてとどめを刺した。 愛されていた。手遅れな程に・・・という、後悔する王太子の話。 シリアス……に見せ掛けて、後半は多分コメディー。 設定はふわっと。

【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!

山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」 夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

悪役令嬢として、愛し合う二人の邪魔をしてきた報いは受けましょう──ですが、少々しつこすぎやしませんか。

ふまさ
恋愛
「──いい加減、ぼくにつきまとうのはやめろ!」  ぱんっ。  愛する人にはじめて頬を打たれたマイナの心臓が、どくん、と大きく跳ねた。  甘やかされて育ってきたマイナにとって、それはとてつもない衝撃だったのだろう。そのショックからか。前世のものであろう記憶が、マイナの頭の中を一気にぐるぐると駆け巡った。  ──え?  打たれた衝撃で横を向いていた顔を、真正面に向ける。王立学園の廊下には大勢の生徒が集まり、その中心には、三つの人影があった。一人は、マイナ。目の前には、この国の第一王子──ローランドがいて、その隣では、ローランドの愛する婚約者、伯爵令嬢のリリアンが怒りで目を吊り上げていた。

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

花嫁に「君を愛することはできない」と伝えた結果

藍田ひびき
恋愛
「アンジェリカ、君を愛することはできない」 結婚式の後、侯爵家の騎士のレナード・フォーブズは妻へそう告げた。彼は主君の娘、キャロライン・リンスコット侯爵令嬢を愛していたのだ。 アンジェリカの言葉には耳を貸さず、キャロラインへの『真実の愛』を貫こうとするレナードだったが――。 ※ 他サイトにも投稿しています。

【完結】騙された侯爵令嬢は、政略結婚でも愛し愛されたかったのです

山葵
恋愛
政略結婚で結ばれた私達だったが、いつか愛し合う事が出来ると信じていた。 それなのに、彼には、ずっと好きな人が居たのだ。 私にはプレゼントさえ下さらなかったのに、その方には自分の瞳の宝石を贈っていたなんて…。

処理中です...