17 / 23
17 またまた真っ暗森
しおりを挟む
私はアルバートに真っ暗森の魔女さんに聞いたペンダントの話をした。
そして今、私達は、黒猫亭の休憩室のソファーにテーブルを挟んで向かい合って座っている。
そのテーブルの上には、例のペンダント。
「じゃあ、やってみるわね」
「ああ」
神妙な顔で頷くアルバート。
私はペンダントを手の平に乗せると、なけなしの魔力を放出した。
その瞬間ペンダントが淡く光り、やがてその光が広がって、私の体を包み込んだ。
(発動した!?何が起こるの?)
だが、その光はあっという間に消えてしまう。
「ん?何も起きない?」
アルバートは首を傾げるが、私は自分の体の変化に驚愕していた。
「もしかして、私───」
いつもの様に黒ウサギを追いかけて、青い屋根の小さな家の玄関前に立つと、勢い良く扉が開く。
「また来たか、小娘っ!」
面倒臭そうに吐き捨てた魔女さんは、私の異変に気付いたのか、スッと目を細めた。
「おや、封印が解けたようだね」
「やっぱり?
もしかして私、今かなりの魔力を持ってますよね!?」
「まあ、そこそこ位だね。
多分、アンタの親は、アンタが他人に利用される事を懸念して、アンタの魔力をペンダントに封印したんだろう。
アンタが大人になって、自分の身を守れるようになってから、封印を解くつもりで」
封印後に私の中に残った微量の魔力と満月に力を借りた魔力を足してペンダントに流すと、ギリギリ封印が解けるような仕組みになっていたのだ。
「で?今日は何しに来たんだい?」
溜息混じりの質問に、私は勢い良く頭を下げた。
「私に魔術を教えて下さいっっ!!」
「断るっっ!!」
食い気味に断られた。
「なんでアタシがそんな面倒事を引き受けなきゃならないんだいっっ!?
そんなの王宮魔術師にでも頼みな。
最近は魔術師不足なんだから、そんだけ魔力を持ってりゃ弟子として歓迎されるよ」
「だって、魔力持ちは搾取されるって言ってたの、魔女さんじゃないですか」
「ぐ……っ!」
魔女さんは、小さく呻いた。
余計な事を言ってしまったと気付いたらしい。
「勿論、タダでとは言いませんよ。
今日もアクセサリーを持って来ました」
「…………」
魔女さんは腕を組んだまま無反応。
「それとー……、魔女さん、ミートパイはお好きですか?
丁度もう直ぐお昼の時間じゃないですか。
なんでもお見通しの魔女さんは、もうご存知かも知れないですけど、私今食堂でアルバイトをしていまして。
ミートパイ、ウチのお店の人気メニューなんですよ。
サックサクのパイ生地と、ジューシーなお肉のハーモニーは最高ですよー。
食べなきゃ損ですよー」
私の誘い文句に魔女さんはゴクリと唾を呑み込んだ。
───よし、もう一息!
「コールスローサラダと、デザートのパンプキンプディング!
フルーツだってありますよ?」
私が二人分の昼食が入ったバスケットを差し出した途端、魔女さんのお腹がグゥッと大きく鳴った。
「しっ、仕方ないねっっ!
先ずは昼食を食べてからだよっ」
少し顔を赤らめた魔女さんは、フイッとそっぽを向きながら言った。
私は魔術師になりたい訳では無いので、教えて貰う魔術は必要最小限だ。
自分の魔力を周囲に隠す為の魔力のコントロール方法と、いざと言う時の防御の魔術。
本当は治癒魔術も出来る様になったら、アルバートが仕事で怪我をしても治してあげられるかも……
とか、思っていたのだが、魔女さんによると、私の魔力量は元に比べれば大幅に増えたとはいえ、王宮魔術師になれるかどうかギリギリくらいの量らしく、治癒魔術は使えないとの事。
私はその日から、黒猫亭の定休日には真っ暗森に通い、半年間掛けて魔女さんに習いながら魔術を習得した。
そして今、私達は、黒猫亭の休憩室のソファーにテーブルを挟んで向かい合って座っている。
そのテーブルの上には、例のペンダント。
「じゃあ、やってみるわね」
「ああ」
神妙な顔で頷くアルバート。
私はペンダントを手の平に乗せると、なけなしの魔力を放出した。
その瞬間ペンダントが淡く光り、やがてその光が広がって、私の体を包み込んだ。
(発動した!?何が起こるの?)
だが、その光はあっという間に消えてしまう。
「ん?何も起きない?」
アルバートは首を傾げるが、私は自分の体の変化に驚愕していた。
「もしかして、私───」
いつもの様に黒ウサギを追いかけて、青い屋根の小さな家の玄関前に立つと、勢い良く扉が開く。
「また来たか、小娘っ!」
面倒臭そうに吐き捨てた魔女さんは、私の異変に気付いたのか、スッと目を細めた。
「おや、封印が解けたようだね」
「やっぱり?
もしかして私、今かなりの魔力を持ってますよね!?」
「まあ、そこそこ位だね。
多分、アンタの親は、アンタが他人に利用される事を懸念して、アンタの魔力をペンダントに封印したんだろう。
アンタが大人になって、自分の身を守れるようになってから、封印を解くつもりで」
封印後に私の中に残った微量の魔力と満月に力を借りた魔力を足してペンダントに流すと、ギリギリ封印が解けるような仕組みになっていたのだ。
「で?今日は何しに来たんだい?」
溜息混じりの質問に、私は勢い良く頭を下げた。
「私に魔術を教えて下さいっっ!!」
「断るっっ!!」
食い気味に断られた。
「なんでアタシがそんな面倒事を引き受けなきゃならないんだいっっ!?
そんなの王宮魔術師にでも頼みな。
最近は魔術師不足なんだから、そんだけ魔力を持ってりゃ弟子として歓迎されるよ」
「だって、魔力持ちは搾取されるって言ってたの、魔女さんじゃないですか」
「ぐ……っ!」
魔女さんは、小さく呻いた。
余計な事を言ってしまったと気付いたらしい。
「勿論、タダでとは言いませんよ。
今日もアクセサリーを持って来ました」
「…………」
魔女さんは腕を組んだまま無反応。
「それとー……、魔女さん、ミートパイはお好きですか?
丁度もう直ぐお昼の時間じゃないですか。
なんでもお見通しの魔女さんは、もうご存知かも知れないですけど、私今食堂でアルバイトをしていまして。
ミートパイ、ウチのお店の人気メニューなんですよ。
サックサクのパイ生地と、ジューシーなお肉のハーモニーは最高ですよー。
食べなきゃ損ですよー」
私の誘い文句に魔女さんはゴクリと唾を呑み込んだ。
───よし、もう一息!
「コールスローサラダと、デザートのパンプキンプディング!
フルーツだってありますよ?」
私が二人分の昼食が入ったバスケットを差し出した途端、魔女さんのお腹がグゥッと大きく鳴った。
「しっ、仕方ないねっっ!
先ずは昼食を食べてからだよっ」
少し顔を赤らめた魔女さんは、フイッとそっぽを向きながら言った。
私は魔術師になりたい訳では無いので、教えて貰う魔術は必要最小限だ。
自分の魔力を周囲に隠す為の魔力のコントロール方法と、いざと言う時の防御の魔術。
本当は治癒魔術も出来る様になったら、アルバートが仕事で怪我をしても治してあげられるかも……
とか、思っていたのだが、魔女さんによると、私の魔力量は元に比べれば大幅に増えたとはいえ、王宮魔術師になれるかどうかギリギリくらいの量らしく、治癒魔術は使えないとの事。
私はその日から、黒猫亭の定休日には真っ暗森に通い、半年間掛けて魔女さんに習いながら魔術を習得した。
215
あなたにおすすめの小説
記憶喪失になった婚約者から婚約破棄を提案された
夢呼
恋愛
記憶喪失になったキャロラインは、婚約者の為を思い、婚約破棄を申し出る。
それは婚約者のアーノルドに嫌われてる上に、彼には他に好きな人がいると知ったから。
ただでさえ記憶を失ってしまったというのに、お荷物にはなりたくない。彼女のそんな健気な思いを知ったアーノルドの反応は。
設定ゆるゆる全3話のショートです。
【完結】地味令嬢の願いが叶う刻
白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。
幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。
家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、
いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。
ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。
庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。
レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。
だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。
喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…
異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆
塩対応の婚約者に婚約解消を提案したらおかしなことになりました
宵闇 月
恋愛
侯爵令嬢のリリアナは塩対応ばかりの婚約者に限界がきて婚約解消を提案。
すると婚約者の様子がおかしくなって…
※ 四話完結
※ ゆるゆる設定です。
手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです
珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。
でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。
加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。
【完結】22皇太子妃として必要ありませんね。なら、もう、、。
華蓮
恋愛
皇太子妃として、3ヶ月が経ったある日、皇太子の部屋に呼ばれて行くと隣には、女の人が、座っていた。
嫌な予感がした、、、、
皇太子妃の運命は、どうなるのでしょう?
指導係、教育係編Part1
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
私の婚約者様には恋人がいるようです?
鳴哉
恋愛
自称潔い性格の子爵令嬢 と
勧められて彼女と婚約した伯爵 の話
短いのでサクッと読んでいただけると思います。
読みやすいように、5話に分けました。
毎日一話、予約投稿します。
婚約者とその幼なじみがいい雰囲気すぎることに不安を覚えていましたが、誤解が解けたあとで、その立ち位置にいたのは私でした
珠宮さくら
恋愛
クレメンティアは、婚約者とその幼なじみの雰囲気が良すぎることに不安を覚えていた。
そんな時に幼なじみから、婚約破棄したがっていると聞かされてしまい……。
※全4話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる