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19 新婚生活
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無事に結婚した私達は、エルウッド子爵邸を買い戻して二人で住んでいる。
マクダウェル侯爵が不法侵入した家だと思うと、ちょっと気持ち悪いけど、それ以上に私に取っては両親の思い出が沢山詰まった場所だから。
当初の予定通り、アルバートはエルウッド子爵家の婿に入り、子爵位を継いで貰った。
港町での任期を終えたアルバートは、今は王宮で騎士として働きながら、信頼出来る領主代行の手を借りて領地経営を行なっている。
勿論、私も出来る事は手伝っている。
元々エルウッド子爵領は地味ながら堅実な経営を行なっており、領民達の生活も安定している。
新しく賜った領地も肥沃な大地を有しており、欲をかかなければ経営し易い良い領地だ。
マクダウェル侯爵領だった頃は税率が高かったらしく、ウチの領地になってからは税率を平均値に戻したので領民達も喜んでくれている。
夕暮れ時。馬車が邸の敷地内に入ってくる音に気付いた私は、アルバートを迎える為に玄関ホールへと急いだ。
「ただいま、コーデリア」
私に駆け寄ったアルバートは、ハグをする代わりに大きな花束を差し出した。
「おかえりなさい。この花束は?」
今日は何か特別な日だっただろうか?
記憶の引き出しを探りながら首を傾げる私に、アルバートは不満そうな眼差しを向けた。
「今日は僕達が結婚して一ヶ月目の記念日だろう?
コーデリアが好きそうなケーキも買ってきたんだ」
彼は、花束を持っているのとは逆の手をヒョイと持ち上げ、ケーキの箱を差し出した。
「一ヶ月……って、一般的にお祝いする物なのかしら?」
「一般的にどうなのかなんて知らないけど、良いんだよ。
他所は他所、ウチはウチだろう?
コーデリアとやっと結婚出来て一ヶ月の記念日を、僕が祝いたいと思ったんだから、それで良いじゃないか」
困惑して益々首を傾げる私に、アルバートは少し拗ねた様にそう言った。
「そうね、ありがとうアルバート。ケーキも花束も凄く嬉しい!
でも…、私はプレゼントを用意してなかったわ。ごめんなさいね」
「プレゼントなんか要らないよ。
君がそばにいて、幸せそうに笑ってくれるだけで、僕も幸せなんだから」
私の数少ない友人達の愚痴によれば、記念日を忘れてしまう夫というのが、世の中には結構いるらしい。
中には奥様の誕生日をすっかり忘れ、その当日に愛人の所へいそいそと出掛けてしまうクズ夫もいるのだと聞く。
それと比べれば、過剰に記念日を設定して祝ってくれる夫の方が良いに決まっている。
だけど、まだまだ人生は長いのに、最初からこんなに飛ばしてて大丈夫なのかしらね?
熟年夫婦になる頃には、お祝いをするのも面倒になって、アルバートも記念日を忘れてしまったり───。
……いや、無いな。
私はふと頭に浮かんだ自分の懸念を、速攻で打ち消した。
彼は、魔女の呪いを想いの力だけで解呪して、私を思い出してくれた人だ。
記念日を忘れる事なんて、きっと無い。
「どうしたの?ニコニコして。
今日は何か楽しい事でもあった?」
無意識の内に微笑んでいたらしい私の頬を指先でつついて、アルバートが問い掛ける。
「ふふっ。何でもない。
ただ、幸せだなぁって思って」
私の言葉を聞いて目を丸くした彼は、とても嬉しそうに笑った。
新婚生活に浮かれていた私達は、気付いていなかったのだ。
私達の周りを彷徨いている、不穏な影に。
マクダウェル侯爵が不法侵入した家だと思うと、ちょっと気持ち悪いけど、それ以上に私に取っては両親の思い出が沢山詰まった場所だから。
当初の予定通り、アルバートはエルウッド子爵家の婿に入り、子爵位を継いで貰った。
港町での任期を終えたアルバートは、今は王宮で騎士として働きながら、信頼出来る領主代行の手を借りて領地経営を行なっている。
勿論、私も出来る事は手伝っている。
元々エルウッド子爵領は地味ながら堅実な経営を行なっており、領民達の生活も安定している。
新しく賜った領地も肥沃な大地を有しており、欲をかかなければ経営し易い良い領地だ。
マクダウェル侯爵領だった頃は税率が高かったらしく、ウチの領地になってからは税率を平均値に戻したので領民達も喜んでくれている。
夕暮れ時。馬車が邸の敷地内に入ってくる音に気付いた私は、アルバートを迎える為に玄関ホールへと急いだ。
「ただいま、コーデリア」
私に駆け寄ったアルバートは、ハグをする代わりに大きな花束を差し出した。
「おかえりなさい。この花束は?」
今日は何か特別な日だっただろうか?
記憶の引き出しを探りながら首を傾げる私に、アルバートは不満そうな眼差しを向けた。
「今日は僕達が結婚して一ヶ月目の記念日だろう?
コーデリアが好きそうなケーキも買ってきたんだ」
彼は、花束を持っているのとは逆の手をヒョイと持ち上げ、ケーキの箱を差し出した。
「一ヶ月……って、一般的にお祝いする物なのかしら?」
「一般的にどうなのかなんて知らないけど、良いんだよ。
他所は他所、ウチはウチだろう?
コーデリアとやっと結婚出来て一ヶ月の記念日を、僕が祝いたいと思ったんだから、それで良いじゃないか」
困惑して益々首を傾げる私に、アルバートは少し拗ねた様にそう言った。
「そうね、ありがとうアルバート。ケーキも花束も凄く嬉しい!
でも…、私はプレゼントを用意してなかったわ。ごめんなさいね」
「プレゼントなんか要らないよ。
君がそばにいて、幸せそうに笑ってくれるだけで、僕も幸せなんだから」
私の数少ない友人達の愚痴によれば、記念日を忘れてしまう夫というのが、世の中には結構いるらしい。
中には奥様の誕生日をすっかり忘れ、その当日に愛人の所へいそいそと出掛けてしまうクズ夫もいるのだと聞く。
それと比べれば、過剰に記念日を設定して祝ってくれる夫の方が良いに決まっている。
だけど、まだまだ人生は長いのに、最初からこんなに飛ばしてて大丈夫なのかしらね?
熟年夫婦になる頃には、お祝いをするのも面倒になって、アルバートも記念日を忘れてしまったり───。
……いや、無いな。
私はふと頭に浮かんだ自分の懸念を、速攻で打ち消した。
彼は、魔女の呪いを想いの力だけで解呪して、私を思い出してくれた人だ。
記念日を忘れる事なんて、きっと無い。
「どうしたの?ニコニコして。
今日は何か楽しい事でもあった?」
無意識の内に微笑んでいたらしい私の頬を指先でつついて、アルバートが問い掛ける。
「ふふっ。何でもない。
ただ、幸せだなぁって思って」
私の言葉を聞いて目を丸くした彼は、とても嬉しそうに笑った。
新婚生活に浮かれていた私達は、気付いていなかったのだ。
私達の周りを彷徨いている、不穏な影に。
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