冤罪で処刑されたら死に戻り、前世の記憶が戻った悪役令嬢は、元の世界に帰る方法を探す為に婚約破棄と追放を受け入れたら、伯爵子息様に拾われました

ゆうき

文字の大きさ
14 / 60

第十四話 突然のご招待

しおりを挟む
 バーンズ家って、伯爵の爵位を持つ家のことだよね? 確か、サジェスの町から少し離れた所を領地としているはずだ。

 あたしが生まれたスチュワート家とは、ほぼ接点が無い家だから、どういう家なのか知らないんだよね。

 ……まあ、記憶が戻る前のあたしは、パーティーの時はいつもワガママを言って、挨拶周りをかなり適当にやってたからっていうのもあるけど。

「はじめまして、ミシェルと申します。バーンズ家の方々が、私になにかご用ですか?」
「はい。我らの主がミシェル様との面会を希望しておりまして」
「話って……ワタクシ、なにか失礼なことをしてしまったのでしょうか?」
「そういう……わけではない。ミシェルは、何も心配せずに……彼らについていくといい。大丈夫、彼らの安全は……俺が保証する」

 少し警戒して、社交界に出ていた時の口調で話すあたしの緊張を和らげる為か、イヴァンさんはごつごつした大きな手で、あたしの頭を撫でる。

 誰かに撫でられた記憶が無いあたしでも、撫でることに慣れていないのがわかるくらい、イヴァンさんの撫で方は乱暴だけど、なぜかこうされると、不思議と安心できる。

「なにせ……俺が店を開く前にいた場所……だからな」
「えっ!? そ、そうなんですカー!?」
「……なんで、そんなに棒読みなんだ……」

 安心できたあたしに、衝撃の事実が言い渡される……なんて、そんなわけないよ! 普通に知ってたよ! イヴァンさんが大丈夫だって言った時点で、自分が以前いたところだから大丈夫って言い切れるんだって思っちゃったくらいだよ!
 これで、アラン様はバーンズ家の人だってことは、ほぼ間違いなさそうだね。

「き、気のせいですよ。とにかく、彼らについていけばいいんですね?」
「そうだ」
「わかりました」
「突然の訪問で快諾していただき、感謝を申し上げます。こちらに馬車を用意しております」
「はい、ありがとうございます」

 あたしは簡単に身だしなみを整えてから、彼らと共に馬車に乗りこむ。

 なんだか、馬車に乗るのが凄く久しぶりな気がする。まだ家を出てから、三ヶ月しか経っていないはずなんだけどね。

「……それにしても、あたしに用ってなんだろう?」

 十中八九、アラン様が絡んでいることなのはわかるんだけど……呼び出されるようなことをしたつもりは……いや、待って。もしかして、昨日の一件が関係しているとか?

 例えば、通っているお店で騒ぎを起こしたから賠償金を寄こせとか、わざわざ助けたから賠償金を寄こせとか、お礼とか望んでないのにしようとしたから賠償金を寄こせとか!

 ……う、うーん。勝手に盛り上がっちゃったけど、アラン様がそんなことを要求する人には見えない。
 そもそも、平民になったあたしから、貴族の人がお金を要求するとも思えない。

 とにかく、実際にアラン様と会ってみないとわからないよね。そもそも、アラン様じゃない可能性も、ほんのちょっぴりあるしね。

「…………はふぅ」

 マズイ、徹夜明けなのと馬車のリズムがなんとも心地よくて、凄く眠くなってきた。
 これから貴族の人と会うというのに、我ながら図太いと思いつつも、睡魔を静めることは難しそうだった。

「さすがに寝るのはマズい……こうなったら」

 あたしは自分の掌に、指の爪を強く食い込ませる。その痛みで、なんとか眠気を飛ばしてしまう作戦だ。

 あんまりやり過ぎると、血が出て変な心配をかけちゃうけど、弱すぎても効果が無い。絶妙な加減で痛みを与えなくちゃ。

「ミシェル様、間もなく屋敷に到着致します」
「………………あ、はい!」

 掌が爪痕だらけになったにもかかわらず、ほとんど寝落ちする寸前まで追い詰められたけど、何とか無事に着いたみたいだ。
 助かったぁ……さすがに歩いたり喋ったりしていれば、寝落ちはしないで済むよね?

「足元にお気をつけてお降りください」
「ありがとうございます」

 御者の手を借りて馬車を降り、出迎えをしてくれた使用人に連れられて、バーンズ家の屋敷の中に入る。

 よその貴族の屋敷に来ることって、あんまり経験が無いから、余計に緊張しちゃう。こんなことなら、面倒がらずに、もっと沢山の貴族の人と交流を持つべきだったかも………。

「ミシェル様、こちらのお部屋で主がお待ちです」
「はい」
「失礼します。ミシェル様をお連れいたしました」
「お通ししてくれ」
「かしこまりました」

 部屋の中に案内されると、そこは応接室だった。細かい内装は違ってるけど、おおまかな内装はスチュワート家とあまり変わらない。
 そして……その部屋で待っていた人の姿は、やはりとても見覚えのある人だった。

「ごきげんよう、ミシェル」
「ごきげんよう、アラン様」
「……驚かないんだな。店の常連である俺の正体が、貴族だったというのに」
「まあ……なんて言いますか……なんとなくわかってましたから」

 元々品のある人ではあったけど、それ以上にイヴァンさんとリシューさんの言動がわかりやすかったからなぁ。あれで察せないのは、少し無理があるよ。

「こんな立派なお屋敷にご招待してくださったのは光栄ですが、突然で驚いてしまいました」
「色々理由があってな。その話をする前に……君に聞きたいことがある」

 あたしに聞きたいこと? なんだろう、アラン様に聞かれるようなことが、皆目見当もつかない。

「君の名前は?」
「……? ミシェルですけど」
「違う。ファミリーネームを聞いている」
「…………」

 ファミリーネームと聞かれて、思わず言葉を詰まらせてしまった。

 この世界のファミリーネームは、主に王族や貴族の人しか持たない。つまり、平民の人はあたしがミシェルと名乗っているように、ファーストネームだけしかない。
 だから、あたしを貴族と知らないでそれを聞くというのは、かなりおかしなことだ。

 仮に聞く理由があるとすれば……あたしの正体が、ミシェル・スチュワートだとわかったうえで、確認を取りたいとかだろうか?
 でも、どうして気づかれたの? 見た目でわからないようにしてたのに!

「い、いやですねアラン様ってば。あたしは平民なのですから、ファミリーネームはありませんよ」
「そうか……そう言い張るなら、証拠を見せてもらう」

 そう言いながら、アラン様はパチンっと指を鳴らす。すると、あたしの足元に魔法陣が現れた。

「あ、アラン様!?」
「害は無いから、心配するな」

 驚いている間に、魔法陣は既にその場から消えていた。
 どこか痛いとかないけど、魔法で何かされたのは事実だろう。

「そこに鏡がある。それで自分の姿を見てみるといい」
「……?」

 言われた通りに鏡で自分の姿を見ると、そこにはとても見慣れた自分の姿が映されていた。
 そう……変身魔法で変えた自分ではなく、ミシェルとしての、本来の姿が。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

婚約破棄で、おひとり様になれるはずだったのに!?

パリパリかぷちーの
恋愛
主人公ルシアン・ヴァイオレットは、「悪役令嬢」として振る舞う孤独愛好家の公爵令嬢。念願だった第一王子アランとの婚約破棄を言い渡されると、内心では歓喜し、大都会の喧騒から逃れて森の奥の廃墟同然の別荘へと引きこもる。ルシアンの目的は、誰にも邪魔されない至高の静寂ライフを満喫することだった。 しかし、彼女の理想郷にはすでに先客がいた。それは、無口で無愛想だがハイスペックな謎の男、キース。実は彼は、王国の裏社会を統べる『影の英雄』と呼ばれる辺境伯であり、ルシアンの孤高の姿に心奪われた重度の隠れファンだった。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

処理中です...